Vol.129 自家製ビールを気軽に作れるマシン


家を売った資金を全てつぎ込んで自家製ビール醸造機を企画開発。6年たった今、ようやく彼のビジネスは軌道に乗った。その将来性を世界中から有望視され、注目を集めるKiwiのイノベーション・カンパニー、Williams Warn Personal Brewing。それを生み出した張本人、Ian Williams氏に話を聞く。

Ian【Profile】
  Ian Williams BTech (Food), Dip Master Brewer イアン・ウィリアムス 1968年8月30日生まれ。オークランド出身。デンマーク人の夫人、9歳、6歳の男の子、それに18ヶ月の女の子の5人家族。趣味はキッズという素敵なお父さん。仕事の合間にショールームに置かれたギターを弾いて気分転換をする。

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母校Massay大学の今年の卒業式で、体験談を講演、後輩を励ました。
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ビールはパンと同じ、新鮮なほど美味しいという。
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ショールームはちょっとしたビール博物館。ビールがどうやってできるのかが良く分かる。
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ミッションベイに住む趣味のビール醸造家、Santiago Aon Ratto氏がWilliams Warn Personal Brewingで作ったビールが「Asian Beer Awards」で優勝。
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ビール作りのための原料セットも数種類販売している。

Tuiで醸造者見習い、からスタート

私はマッセイ大学で食品科学を学びました。私はもともと科学が好きで、理工系に進みたいと思っていましたから、ある日、私が通っていた高校、St. Kenterganにマッセイ大学の食品科学の教授が来てFood Technologyを紹介したとき、これだ、と決めました。人間、食べる、ということは必須、絶対になくならないことじゃないですか、だから、その学科は将来有望だと思ったのです。1990年に卒業。パーマストンノースの近くにあるビール会社Tuiでビール醸造者見習いとして働き始めました。就職を探しているとき、私が短期間留守にしていた間に、母が私に代わって勝手に応募してくれていた会社でした。幸い、私は在学中に働いていたワインの会社と、Tuiとの両方からジョブオファーをもらい、どちらかを選択することになりました。ビール会社を選んだのは、ビールのアルコール度がワインに比べて低い、ということが大きな理由です。だってワインの利き酒を職業としている人って、赤ら顔で、なんだかアル中っぽいイメージじゃないですか? それから、その仕事が魅力だったのは、醸造者という肩書きで世界中のビール醸造メーカーを見学しに行けることでした。Tuiで5年間を過ごし、同時に、イギリスの国際認定資格を取る勉強をして「マスター・ブルーアー」という資格も取りました。書類上では、私がニュージーランドで初の、それも27歳という世界で最年少での「マスター・ブルーアー」ということになります。


海外の多くのビール醸造所を視察

その後、シンガポールのTiger Beerで働き、系列で新しく創った中国の醸造所で働きました。Tiger Beerはハイネケンと同一会社です。そして、1998年の国際ビールコンテストに出品した私のTiger Beerは、ラガー部門で188ものエントリーの中から一等賞に輝きました。新しい工場でビールを作り始めてからたったの12ヶ月で成し遂げた快挙です。その時受けたトロフィーは、今でもTiger Beerのボトルのラベルにデザインされています。そして、デンマークにある、カールスバーグ・ビール醸造所のコンサルタントとなり、チェコ、ロシア、カザクスタン、エチオピア、アメリカ、韓国、などなどたくさんのビール工場を視察して回りました。その時に旅先で経験したこと、学んだものは今の私にとってかけがえのない宝物です。


素朴な疑問が人生を変えるキッカケに

 さて、あるとき、ホリデーでNZに帰ってくると、おじさんが「自家製のビールってどうしてまずいんだろう?」と私に聞きました。その素朴な疑問が、私の人生を変えるアイディアを生みました。「美味しいビールを手軽に作ることができる自家製のビール製造機があったら素晴らしい」と。リサーチしてみると、世界中のどこにもそんなものは無く、しかも充分に需要はありそうだ、ということが分かりました。私はプロのビールメーカーとして、ビールの作り方を良く知っているし、経験もある。だから、ビールを自分で作るときの問題点も良く分かる。調べてみると、その問題は12点あることが分かりました。デンマークで住んでいた家を売り、家族でNZへ戻ってきたのが2006年のこと。家を売却した資金で、2年半、フルタイムで自家製ビール醸造機の開発に打ち込みました。ビールを新鮮に保つにはどうしたらいいか、ビールを空気に触れさせないようにするには、イーストが醗酵するときに出すガスの一部を保つには、ビールが出来上がるまでの時間を短縮するには、などの問題点をひとつひとつ解決、改良に改良を重ねて、最初のプロトタイプが出来上がったのが、2009年でした。知り合いを集め、家のガレージで有名ブランドのビールをたくさん取り混ぜた目隠しビール試飲会を行い、私の自家製ビールが、2位、4位、5位となったのを機に、NZでの特許を取得。世界32カ国でも現在特許申請中です。そして、出資者を募りました。デンマークの大金持ちがまず名乗りを上げてくれ、工業デザイナーによる新しいデザインの新しい試作機ができ、それからさらに新しい出資者と、更なる改良がなされ、2011年4月、晴れてWilliams Warn Personal Brewingの発売となりました。


あきらめずに進めば報われるときが来る

 最初の月には、たった1台しか売れませんでした。何しろ6500ドルもする機械ですからね、そう簡単にはいきません。本当は、私は500ドルぐらいで売れる機械が作りたいのです。でも、私がやろうとしている条件をすべて満たすにはどうしても高くついてしまうのです。ほら、14、5年前にフラット スクリーンのテレビが新発売されたとき、2万ドルほどもしていましたよね。それが、今では技術の進歩と普及、需要の高さによって、値段が10分の1以下になった。私はこの自家製ビール醸造機にもそんな経緯をたどってもらいたい。いや、必ずや、そうなると信じています。
最初の1年でNZ国内で30台、海外で40台を売りました。実際に売れた数はまだまだ多くはないですが、発売と同時に新聞や雑誌、ネットなどで取り上げられ、その反響は大きく世界中から注目を浴びました。第1弾の機械75台は完売。現在は、さらに改良を重ねた第二世代の完成を待っているところです。そして何と500人が現在その順番待ちリストに乗っています。
6年たった今、ようやく私のビジネスは軌道に乗ってきた感じです。背負ったリスクはとても大きかったし、特に金銭的なストレスは大変重く長びきました。それでもあきらめずに進んできて良かったです。これからどう会社を伸ばしていくか、とても楽しみです。

Ian Ian

カテゴリ:起業系
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