Vol.138 Wynton Rufer / WYNRS Director


ニュージーランド人として初のプロフットボール選手としてヨーロッパや日本で活躍したウィントン・ルーファー氏。現役を引退してからニュージーランドに戻り、この国のフットボールを盛り上げ、選手養成に携わる。ジュニアチームは海外遠征で他国強豪チームと互角に戦えるレベルに成長した。フットボールのペナントやポスター、チームの寄せ書きサインがされたユニフォーム、トロフィーなどが所狭しと飾られた彼の事務所を訪ねた。

wynrs【Profile】
Wynton Rufer ウィントン・ルーファー
1962年12月29日生まれ。ウェリントン出身。父はスイス人、母はマオリ系ニュージーランド人。高校卒業後、1981年にヨーロッパでプロのフットボール選手となる。ストライカー。ワールドカップに出場した1982年のニュージーランド・チーム、All Whitesのメンバーだった。チーム在籍はドイツのWerder Bremenが最長だが、Jリーグのジェフ・ユナイテッド市原でもプレーした。オセアニア・フットボール協会から「今世紀最大のオセアニア・フットボール選手」と指名される。オーストラリア人の妻、ドイツと日本で生まれた2人の息子との4人家族でオークランドに在住。



nadia Lim
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FIFAが私の進むべき道を決めてくれた

私はフットボールクレージーですからね、実はニュージーランドに戻ってくるなんて少しも思っていませんでした。でもキッカケは、Jリーグのジェフ・ユナイテッド市原でプレーしていた1996年にFIFA(Federation International Football Association )が1999年のU17ワールドカップをニュージーランドで開催を決定したこと。ちょうど私はプレーヤーとして引退しようとしていた時でした。だからFIFAが私の進むべき道を決めてくれたようなもの。ニュージーランドに戻って、ニュージーランドのフットボールのために働こう、ニュージーランドの選手を養成しよう、と決めました。
私のフットボールアカデミーWYNRS(ウィナースと読む)は1997年の6月に発足しました。当時ビジネスを立ち上げるのに協力してくれたパートナーが、WYNRSの名づけ親です。WYNウィントン、Rルーファー、Sサッカーという合成語ですが、言葉のゴロも響きもいいし、スポーツアカデミーにはピッタリでしょう?
ニュージーランドは国が小さくてフットボール人口も少ないので、ここでフットボールを盛り上げていくのは、とても大変なことです。フットボールの歴史も浅く、そのため人材も少ないです。だからプロでプレーした経験のある優秀なコーチは、海外から招聘してこなければなりません。
たとえば、ジェフ・ユナイテッド市原時代のチームメート宮澤浩は、アカデミー早期からのスタッフで、WYNRSの主要コーチです。(宮澤さんのインタビューは先月のイーキューブに掲載)彼はJリーグで活躍した後、オーストラリアでプレーしていましたが、そのときに私がNZにひっぱってきたんです。良い選手を育てていくのに一番重要なのは、良いコーチですからね。


アジアの血が流れている

今Master Chef NZの4回目が放送されています。今までに私を含めて3人のマスターシェフが誕生しています。この番組をきっかけに多くの人がニュージーランドの食文化により一層興味を持ってもらいたいと思います。私はマレーシア人とのハーフであることで、私のレシピにマレーシア、インドなど東南アジアのエッセンスを加えることができると思います。最近は日本食のエッセンスも加えることが多く、特にポン酢や昆布だしは私のレシピに頻繁に登場するようになりました。刺身ケバブ、ポン酢オイスター、そばなどを作りました。今後は東南アジアだけではなく広くアジアの料理のエッセンスを加え、季節感のあるニュージーランドの食材を使ったヘルシーなレシピを考えて行きたいと思っています。ですから、アジアの各国には足を運びたいですね。Master Chefになってからはオーストラリア、マレーシア、フランス、ドイツ、ロンドン、スペインに行きました。それぞれの国で色々な料理を食べるたびに私のレシピのアイデアになっていきます。パーソナリティを務めるサーモンやアボカドで日本に行くこともあると思います。まだ日本には行ったことがないので、どんな国なのか楽しみです。


フットボールはチームスポーツ

WYNRSを始めてから今年で16年。現在はコミュニティ・プロジェクトとして、主にオークランド南部の学校で、フットボールに焦点をあてたPEプログラム(体育)を展開しています。そのプログラムに参加しているのは約10校、2000人の子供たち。それから、アカデミーには毎学期ごと、150人から250人の子供が通ってきます。小学生からティーンエージャーまで、いろいろなレベルがありますが、トップレベルの子供たちは、季節に関係なく1年中トレーニングしています。良いフットボール選手には、もちろん才能は大切ですがそれだけではありません。才能面では多少劣っていても、常に前向き、徹底的に向上しようという決意がしっかりしていて、人一倍努力しようとする姿勢が、素晴らしいスキルレベルにつながります。このスポーツはチームスポーツですからね。仲間でお互いを励ましあい、競争しあい、個々を高めていく。そこが、フットボールの良いところです。WYNRS出身の選手にはAll Whites のMarco Rojasや Chris Woodがいて、それぞれ海外でプロ選手として活躍しています。 ロンドンオリンピックに出場したニュージーランド女子チームのキャプテン、Rebecca SmithもWYNRS出身。でも、WYNRSでプロを目指して訓練した選手が必ずプロになれるとは限りません。プロになるのはとてもたいへんなことです。2010年のAll Whitesのワールドカップでの活躍は、ニュージーランド・フットボールのターニングポイントになりました。より多くのニュージーランド人がフットボールに注目し、プレーする人口も増えました。中でもマオリやパシフィック系の子供たちには、生まれつき運動神経が優れ、体つきもがっしりして、将来有望なプレーヤーが多いです。今、Maxと Ben Mataという13歳と15歳の兄弟に注目しています。


ライフスキルを学ばせる

WYNRSで特に私が力を入れているのは選手にライフスキルを学ばせること。ここで教えるのはどうしたらゴールを決められるか、相手を抜いていけるか、だけではない。良い人間を育てるのが目的。フットボールはゲームですからルールがある。そのルールにどうやって従うか、それからチームの一員として仲間をどうやって信頼しあうか。スポーツを通して、そんな、人生全般に共通する価値を教えていきます。私はクリスチャンですからね、その辺はちょっとうるさいですよ。おかげで、私のチームは海外遠征でトーナメントに参加するとき、他の国のチームと比べ、選手全員の態度が全般的に優れていると評判です。それはとても誇りに思います。

体験から学んだプロのスキル。

ドイツのプロ選手としてプレーして記憶に残ったのは大観衆が見守る中でプレーするのはとても興奮するということです。特に、自分チームのホームスタジアムでの試合はすごいです。4万人のファン全員が味方。群集の熱気がプレーヤーを高潮させるので、おのずと良いプレーができます。そんなわけでフットボールの試合はホームアドバンテージが非常に大きい。特に、ドイツやイタリア、オランダは、スタジアムの雰囲気が狂気の沙汰といえるほど。逆に敵地へ出向くときは、それなりの注意、覚悟が必要です。あるところでは、身の安全を確保するために遠征先のホテルから出ないよういわれたり、移動のバスも外のファンを刺激しないようにするため窓際には座りません。ドイツのWerder Bremenに移っての初試合のこと。相手チームのディフェンダーが私にピッタリついて、ほとんど反則のしつこいマークをされました。でもレフリーは笛を吹いてくれない。それを見て監督は私の方に向かって何か怒鳴っている。私は、てっきり監督はペナルティの判定をしないレフリーに向かって抗議しているんだと思いました。以前にプレーしていたスイスでは経験が無かったことです。でも、実は、監督は私に向かって怒っているのでした。私がなぜ突き飛ばされたように振舞って倒れる演技をして、ペナルティをアピールしないのか、と。そうです、そこでのプロの試合では、ストリートワイズというか、スマートにプレーしなければならないのです。明らかに反則のディフェンスも、レフリーが見ていなければまかり通ってしまう。それを、ハリウッドの俳優並みの演技力でアピールするのが、試合の流れを味方のアドバンテージに変える大切な作戦なんです。反則を反則だと分からせる頭の良さがプロでは求められるのです。

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