Vol.145 イタリアンレストランDivino Bistro, Head Chef


オークランドで観光客が必ず通るのがパーネル通り。中心街から徒歩で10分ほど離れ、古くからの邸宅が多く、落ち着いた雰囲気を持つ街並みだ。市街からパーネル通りに入る直前、昔ラグビー場があった場所にビジネスビルが建ち、その一角にオープンしているイタリアンレストランがある。そこでは日本人がシェフを務めている。「ニュージーランドで日本人が作るイタリアン?」と不思議に思う人も多いかと思うが、今世界中であたりまえとなっているトレンドがニュージーランドでも見られるようになってきた。

調理師【Profile】
黒田潤
イタリアンレストランDivino Bistro, Head Chef
1982年千葉県千葉市生まれ。高校卒業後、料理の世界へ。19歳でイタリア、スペインを旅する。奥さんの絵里香さんには一目惚れして猛烈にアタック。ニュージーランドに来た当時は「箱ワイン」でも充分おいしく飲んだが、今ではもっと美味しいワインを知り、酒代が家計を圧迫しているとか。

調理師
調理師
調理師
調理師

もともとはヨーロッパ派
高校卒業後、調理師の専門学校へ。卒業後イタリア、スペインなどヨーロッパを一ヶ月バックパッカーとしてまわりながら毎日市場に行き、現地の人と英語で会話をして食材を買い込み、自分で料理していました。ヨーロッパではサラミやハム、ワインがすごくおいしく、しかも安く手に入るんです。その後、フレンチレストランに就職。五年間前菜から肉、魚のメイン料理、デザートまであらゆる仕事を経験しました。そんな折、職場のレストランで知り合いが30人ほどのパーティーを開きました。私はそのパーティーのためにいろいろな料理を作ったのですが、パーティーに参加していた人の中に素敵な人がいました。それが妻の絵里香でした。知り合いにお願いして紹介してもらいました。彼女も調理師志望で、調理師科のある高校で料理を勉強し、また大学では栄養学を学んでいました。卒業後は結婚式場のレストランで和食のシェフとして働いていました。お互い食に興味があるので、すぐに仲良くなり付き合うようになりました。彼女は大学在学中、語学留学で二度ロサンゼルスに行くなど行動派。しかもアメリカの生活に憧れていました。二人共海外で暮らす夢でしたが、僕はヨーロッパ派、妻はアメリカ派。将来はどうしようかと考えている時に、ワーホリ制度があることを知りました。絵里香に相談すると、彼女もワーホリでどこかに行ってみたいと考えていました。その頃はもう付き合って4年経ち、結婚をお互い意識していた時期でもありましたから、二人で何ヶ月も相談し、また両方の家族ともじっくりと話し合いました。その結果、結婚するかワーホリを取るかを比べ、ワーホリを取ることにしました。結婚してしまうとワーホリは行きづらくなってしまいますから。さて、ワーホリで行く国をどこにしようかということも問題でした。イタリア、スペイン、アメリカはワーホリが無いので諦め、まだ行ったことのない国に行ってみようという事になりました。最終的に候補に残ったのは、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの三カ国。カナダ?寒そうだね...。オーストラリア?日本人が多そうだね...。じゃあニュージーランドは? あまり知らない国だし、日本と同じ島国。行ってみようか?となり、2010年10月に2人でニュージーランドでのワーホリ生活をスタートしました。

イタリアンレストランの日本人シェフ
日本を出る前にネットでオークランドの北20キロのアルバニー地区にあるオーガニックファームに連絡を取りました。そこはイタリア人夫婦がオーナーで、エコフレンドリーなライフスタイルを実践している一家でした。そこではエクスチェンジワークとして家の仕事のお手伝いをし、代わりに寝食を提供してもらいました。私たちは二人共料理人ということもあり、オーナーの奥さんが週末主催しているイタリア料理教室を手伝うことになりました。そこでひと月ほど滞在していると、自分の腕を買ってくれたオーナーの旦那さんが知りあいのイタリア人がシェフを捜していると教えてくれました。そこはCovoというイタリアンレストランで、オークランド市内に3軒の店を構えていました。私は、英語はまだまだでしたが、料理の経験が充分にあることと、店舗の一軒に日本人がシェフとして働いていたこともあり、面接の後に採用になりました。研修後、今のパーネルの店に配属され、本格的に仕事を開始。一年も経つ頃には、ヘッドシェフとしてお店を任せてもらえるようになりました。2011年4月にパーネル店を新しいイタリア人オーナー、ダビデ氏が買い取り、現在店名はDivino Bistroとなりましたが、私はずっとこの店で働いています。新しいオーナーは自分が買い取ったイタリアンレストランのヘッドシェフが日本人であることに全く抵抗はなく、むしろ、イタリアにある有名レストランのヘッドシェフに日本人がいることを知っており、キウイやイタリア人のお客さんにも日本人のシェフがいることをアピールしてくれています。飾り付けのうまさや繊細な味付けは日本人の特技のひとつだと思います。実は隣のビジネスビル内に世界的な食品会社があります。フランス女性のCEOなので食にはかなりのこだわりがあるはずですが、よくこの店に食べにきてくれますし、日本食も大好きだそうです。お客さん達は、フランスのフレンチレストランにも日本人シェフがたくさん働いていることや東京は世界で一番ミシュランガイドの星の数が多いことを知っていますので、日本人シェフの腕を信用しているのです。日本人として、料理人としてもとても誇らしく思います。

ニュージーランド人の食への興味を引き出す
周辺はオフィス街なので、この店は土日は休みになります。珍しいですよね。土曜日に休んでしまうレストランって。でもそのおかげで、土日二日間かけて妻と遠出ができるのです。趣味は各地のマーケットやワイナリーをまわること。いろいろな食材を見つけたり、ワインの試飲をしたり、生産者の方々と直接話したり、いろんな人に出会ったりできます。ニュージーランドを選んだ理由の一つにワインがあります。将来、自分のお店を持つ事ができれば、ワイナリーを巡り、ワイン生産者と話をし、自分たちが気に入ったワインを店で提供してみたいと思います。生産者の顔が見える食材やワインにストーリーがあると、食事が楽しくなりますからね。また、シェフとしては食材の豊富さも見逃せないですね。日本では考えられないことですが、海に行けば鯵や鯛は間単に釣れるし、遠浅のビーチではアサリが採れるし、近所の庭にはオレンジ、レモン、グレープフルーツがなっています。ですがニュージーランドの食文化は浅く、食に対する探究心や挑戦する意欲があまりないのかもしれません。日本食といえば照り焼きチキン、サーモン寿司。ここに私のシェフとしての役割が見えてきたような気がします。

共通の夢
最初はワーホリで一年だけ、などと考えていましたが、今ではすっかりここでのライフスタイルが気に入って永住権も申請中です。日本よりも色々な事が不便だったりもしますが、自然の豊かさ、人のやさしさ、食べ物のおいしさなどニュージーランドであたりまえのことに感動し、自らこの国を日々楽しんでいます。ワーホリでニュージーランドに来たときはそれぞれ独身でしたが、2012年5月に籍を入れ、夫婦でこの国で頑張ってみようと決めました。妻はワーホリで来てすぐに日本食レストランにシェフとして就職しましたが、今はここでマネージャーとして働いています。将来は気軽においしく食べられるお店を出すことが二人の共通の夢です。

各種法律や移民局の規定等は改定されている場合があります。詳しくはお問い合わせください。

お問い合わせはこちら