Vol.145 オークランド大学 日本研究センター主任 マーク・R・マリンズ


オークランド大学の日本研究センターに日本在住約40年の教授がいると聞いたのは2013年の中頃。専門は宗教社会学というが、日本での経験がオークランド大学でどのように活かされるのか、大学生に日本をどう理解させるのかなどを聞くために大学内の研究室を訪ねた。

ais【Profile】
マーク・R・マリンズ
オークランド大学 日本研究センター主任
1954年アメリカ合衆国アラバマ州生。6歳から両親に連れられ、日本で育つ。アラバマ大学卒業。リージェント大学(カナダ)を経てマックマスター大学(カナダ)で博士号取得。専門は宗教社会学。1985年から日本在住。四国学院大学、明治学院大学をへて、上智大学比較文化学部教授。長野県に山小屋を持ち、アメリカに住んでいる娘さんと合うために日本とアメリカ、そして仕事をしているニュージーランドの3カ国を駆け回る。

オークランド大学
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社会における宗教の役割

私はアメリカ生まれのアメリカ人ですが、宣教師の両親に連れられて6歳から18歳まで日本で育ちました。東京のインターナショナルスクールで勉強し、大学はアメリカに渡り、アラバマ州立大学で宗教学を専攻しました。両親が宣教師であったことが私に宗教への興味を持たせてくれたのではないかと思います。その時、初めて両親から離れましたが、祖父母がアメリカにいましたので、アメリカに帰ることに不安はありませんでした。その後、リージェント大学(カナダ)でアメリカにおける禅の研究で修士号を、同じくカナダのマクマスター大学院でカナダの日系社会における浄土真宗で博士号を取りました。専門は社会における宗教の役割や宗教文化の変容です。宗教はおもしろいことに、文化に触れてその国や地域独特の変化をします。例えば、カナダでは浄土真宗といえども檀家はありません。檀家とは特定の寺院に代々属して、布施などの経済的援助を持続して行い,葬式・法事などを行なってもらう家のことです。カナダではその存在がないのですが、第二世代、第三世代、第四世代と経て行くうちに檀家のような存在が形作られて行くかもしれません。いずれにしろ、日系コミュニティーの支えとしての宗教として存在し続けています。キリスト教との関係もあり、日曜日に集まる独自の変容を遂げています。新しい仏教として発展して来るんですね。現在、世界中で起こっている対立のいくつかは宗教に関連しています。宗教を理解することは意外と大切なのです。宗教は政治ともつながりが深いのもみなさんが知っている通りです。日本で"土着化"していた私は1985年に再び日本に戻ってきました。一年間日本語の専門用語などを勉強した後、香川県の四国学院大学で准教授(当時は助教授)として3年間勤務しました。私はカナダで博士号を持っていましたので、すぐ助教授になれました。その後、東京の明治学院大学、社会学部教授として迎えられ、14年間勤務しました。国際交流センター長の補佐として、留学制度の整備も行いました。明治学院大学とウェリントンのヴィクトリア大学の協定校関係構築も担当しました。そして、上智大学に移り、比較文化学部教授として11年間在籍しました。大学院のGlobal Studiesで宗教社会学を担当しました。上智大学での最後の3年間は「Monumenta Nipponica(モニュメンタ・ニポニカ)」という、1938年から発行されている英語による日本についての学術雑誌の編集長も務めました。日本の社会、文化、歴史、宗教、文学、芸術など、日本やアジア研究についての論文や書評が掲載されています。また、数冊の本を書きました。Religion and Society in Modern Japan (1993年)、Religion and Social Crisis in Japan (2001年)の二冊は共著、Christianity Made in Japan (1998年)は単著で日本語にも翻訳され、2005年に「メイドインジャパンのキリスト教」という邦題で発行されました。朝日新聞の書評欄で、キリスト教土着化の初めての実証的比較研究として紹介されました。


新天地へ

日本にもだいぶ長くいたので、環境を変えてみたいと思っていました。2012年のことです。インターネットで大学教授職を探していました。大学教授のポストを探す人はほとんどアメリカに目を向けています。そのため、なかなか空きがないのです。オークランド大学で日本研究の教授ポジションの募集を見つけたときはあまりピンと来ませんでした。しかし、ウェリントンには一度行ったことがありましたので、ニュージーランドがどんな国であるかのイメージは持っていました。新しいチャレンジだと思って応募しました。書類でのやり取り、面接と講義を行った末に採用され、2013年1月から今のポストに就きました。授業は学部では日本の宗教社会学、大学院ではアジア研究の中における日本の宗教について授業を受け持っています。オークランド大学では神学部でキリスト教の勉強ができますが、私の宗教社会学は現代社会の中で広く、比較して宗教を学ぶ機会を作れると思っています。ニュージーランドではさらに比較研究する機会が得られると思います。それはニュージーランドにはマオリがいること、ニュージーランドの位置が環太平洋にあることなのです。マオリもニュージーランドに土着化したキリスト教を持っています。私がカナダの大学院で研究したカナダの仏教などと比較して、環太平洋の宗教社会学として広く研究すると新しい発見があるのではないかと思っています。哲学、文学、言語、都市開発、建築、デザインなどからの影響で宗教がどのように変容して行くのかを研究することは、新しい学問の出発になるかもしれません。


日本研究センター

世の中で大きな事件があったりすると、多くの人が宗教との関わりを考えるようになります。「危機の後、すがりたくなる」気持ちともいうのでしょうか。日本で言いますと、オウム真理教事件のあった1995年や東日本大震災のあった2011年は我々宗教社会学者が研究を活発に行ったのです。2013年9月にJapan Foundationのサポートでこの研究発表を「Japanese responses to social crisis and disaster」と題して、日本研究センターが行いました。興味深いことにこの二つの事件の後に政治の世界でも大きな変化が起こっているのです。事件、宗教、政治は密接につながっているので、宗教社会学は時代をはっきりと反映する学問と言えるのです。今、日本では大きな動きがあります。それは「君が代斉唱・日の丸掲揚時起立」「靖国問題」「憲法改正論議」です。宗教社会学者が研究を進めれば進めるほど、これらの問題が宗教・政治・文化・歴史と深く関わっていることを実感します。日本研究センターではオークランド大学で日本の研究をする博士号終了者をフェロー(研究員)として迎えています。日本の研究をする人を増やし、日本に対する理解を深めるための積極的なプロジェクトです。今年2014年は韓国研究センターと共同で国際学会を開催する予定です。

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