Vol.151 St Pierre's International Ltd


黄色地で赤と黒の文字を使った看板と言えば、多くの人があの「St.Pierre's」(セイント・ピアーズ)を思い出すのではないだろう? 1980年代半ばから、ニュージーランドで寿司を広めるのに大きな貢献をしたことは誰もが認めるに違いない。現在ではニュージーランド国内で週に4万人ものお客さんを相手にすると言う最大の寿司チェーンに成長している。St Pierre'sはギリシアに祖先を持つ4人の兄弟がウェリントンで両親が始めた魚屋を手伝ったことから始まった。兄弟が始めた魚を中心としたデリカテッセンで試験的に売り出した寿司が今では魚の売り上げよりの何十倍にもなっていると言う。ニュージーランドの寿司事情のすべてを知っているNick Katsoulisさんに話を伺った。

St Pierre's【Profile】
Nick Katsoulis
Director, St Pierre's International Ltd.
1964年ウェリントン生まれ。ビクトリア大学でビジネス、マーケティングの学位を取得。4人兄弟の3番目で担当はマーケティング、店舗開発。日本へは年3〜4回足を運び、日本の食トレンドに常に敏感でいるよう心がける。好きな食べ物はすし、そば、天ぷら、濃い目の緑茶。

St Pierre's
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一度は止めた寿司販売

私たちは、両親の魚屋を手伝っていた経験を生かして、何か新しいビジネスを始めようと考えていた時に、たまたまオーストラリアで見たデリカテッセンにインスパイアされ、魚屋とデリカテッセンを一緒にした新しいコンセプトがニュージーランドで受け入れられるのではないかと直観しました。両親が経営していたのは昔からある古いタイプの魚屋で、有名レストランや、スーパーマーケットに魚を販売していました。私たち兄弟4人は学校が終わった後に半ば強制的に手伝わされていたのです。魚屋と言えば服は汚れるし、手は臭くなるし、疲れるしでやりたくはなかったのですが他の選択はありませんでした。しかし、私たちが「魚屋を新しくきれいな店にすれば、従来のイメージを変えることができ、より多くの人に喜ばれる」これは、私たちにしかできない使命だと思いました。こうして、St. Pierre'sは1984年にウェリントンで私たち兄弟が新しいコンセプトのデリカテッセンとしてスタートしました。当時の商品は魚と海鮮を使った惣菜でした。店で寿司を販売し始めたのは友人が店のオープニングパーティーで寿司を作ってくれたことがきっかけでした。その寿司はキュウリや沢庵を入れたベジタリアン寿司でしたが、新しい商品として可能性を見出したのです。実際に店で販売したのはスモークサーモンの巻き寿司一品だけでした。残念ながら売れませんでした。まだアジア人が少なく、また、寿司がどの様なものかという情報もなく全く理解されていなかったからです。そのため半年後には寿司の販売を止めざるを得ませんでした。その後、1986年にオークランドのクイーンストリートに第二号店をオープンさせました。少しずつアジア人が増え始めた頃です。またこの頃、ニュージーランドのシーフード業界の日本視察に同行しました。日本国内で寿司がどのように作られ、どのように食べられているかを目に焼き付けて来ました。日本視察の後、1992年頃にスモークサーモンだけではなく、生のサーモンを巻いた寿司販売を開始しました。寿司に使う魚は、オークランドでもっとも身近な魚であるスナッパー(鯛)ではなく、取引先からの協力もあり、敢えてサーモンを選択しました。取引先が、生のサーモンを弊社で寿司として提供するにあたり、当時ニュージーランドでは技術的に難しかった冷蔵温度での毎日配達を約束してくれたのです。アメリカでは寿司がブームになっていましたが、オークランドでの寿司のイメージは前向きではありませんでした。生魚を食べることへの抵抗感がまだあったためです。これは試練とも感じました。その後、アジア人の増加、寿司への理解の高まりなどもあり、徐々に受け入れられて来ました。キウイは食べ物をシェアする文化がありません。友人とレストランに行っても自分でオーダーしたものを食べきるのですが、それに対し、巻き寿司はピザのように切った状態で提供していますので、気軽に一つだけでもつまむことがでます。そんな寿司との遭遇を経験したキウイが増えたこともあり、数年後にオークランドのニューマーケット、ダウンタウン、セイント・ルークス、パクランガにも店をオープンし、寿司を販売するようになりました。そうそう、ワーキングホリデーで来た人たちがホームステイしている最中、寿司を買い、ホストファミリーに紹介したこともかなり役立っていると思います。


寿司食材の輸入

オークランドの四店で寿司を販売し始めた直後に二度目の日本視察に行きました。目的は醤油、ガリ、わさび、のりなどの寿司食材を自前で輸入しようと思ったからです。魚屋の経験から、卸業者がいることで品質のコントロール及び安定供給量の確保が困難なことがあり、これを克服することで、次のダイナミックな成長に繋げる事が出来るのではないかと考えていました。そこで、東京のホテルで二社と商談を計画しました。一社目は商談に現れませんでした。2社目はアメリカで日本食材を卸売する会社でした。日本語・英語でのコミュニケーションは難しく、商談は完璧にほど遠いものでしたが、取引が始まりました。届いたコンテナの第一便で驚いたことがありました。輸入したガリが白色だったのです。私が日本視察に行った時に食べたガリは、ピンク色で、無着色の白いガリの存在さえ知りませんでした。今でも継続して無着色のガリを使用していますが、当時は、そんなレベルから始まったのです。以来、ショッピングモールに集中して出店し、店舗数が増えて行きました。ショッピングモールは多くの人が行き来し、寿司が目につく機会が多いことでその存在を知ってもらえたと思います。お客さまの目の前で寿司を作っているので、その様子をじっと見て行くお客さまもいます。これが寿司の啓蒙に大きく役立ったに違いありません。

店舗展開と人材確保

創業30年を経た現在は43店舗に増えました。オークランド25店、ハミルトン2店、タウランガ1店、ヘイスティングス1店、ウェリントン9店、クライストチャーチ4店、クイーンズタウン1店です。オークランドではさらに出店予定です。最近は、ライフスタイルの変化に伴いお客さまから営業時間延長の要望を多く頂きます。それに応えるべくロードサイドへの出店を増やしています。ここまで弊社ビジネスが成長できたのは、弊社に良い人材が集まったからです。多くの日本人スタッフが店舗マネージャーとして、または、店舗運営のサポート役として弊社ビジネスの成長を支えています。弊社では、人材確保の為に従業員に対し、売上ボーナスだけでなく各種のモチベーションプログラムを用意しています。例えば、雇用期間が6か月以上の従業員に対しプロフィットシェアリング制度を採用しています。これは、目標達成の喜びを従業員と「家族の一員」として共に分かち合いたいという思いから17年前に始めました。さらに、弊社ではパートナーシップ制度も採用しています。これは、店舗マネージャーとして2〜3年ビジネスの経験を積んだ従業員を対象に、新規店舗における初期投資及び運営にかかる費用をシェアする制度です。この制度により、独立して店舗を持ちたいという従業員をサポートすることが出来ると考えています。弊社のハミルトン、タウランガ、クイーンズタウン、ヘイスティングス、ウェリントンの一部の店はこの制度でオープンしました。

It's time to eat healthy

今後は、こんな日本食もあるのかと驚かせる様な新鮮で美味しい日本食を紹介して行きたいです。最近は大福餅や緑茶も販売しています。また、日本食を通して健康な食生活の提案や日本食文化の紹介もして行きたいと思います。その為にも私たちは、日本からダイレクトで納得のいく食材を輸入して使いたいのです。巻き寿司に使う「のり」も品質の低いものは受け入れません。「和食」はユネスコの無形文化遺産に登録されたそうですね。私は日本人ではありませんが、日本食をさらに理解し、一人でも多くのキウイに日本食を啓蒙して行きたいと思っています。

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