Vol. 160 時代を飾るキーパーソン

大事なのはまずお互いを「知る」こと


前駐日ニュージーランド大使 イアン・ケネディ

メインイメージ

これほどまでに日本を知り、愛してくれるKIWIがいるだろうか。
生まれ育ったニュージーランドと、偶然の出会いとなった日本...距離の離れたこのふたつの国は、実は似ているところが沢山ある。
両国は競争相手ではなく協力関係にある。
ふたつの国の良好なパートナーシップのために大切なことを、未来を担う若者へのメッセージとして、イアン・ケネディさんに聞いた。

イアン・ケネディ Ian Kennedy
Japan/New Zealand Business Council 代表
前駐日ニュージーランド大使、ウェリントン在住。政治・経済に限らずスポーツ・教育など幅広い分野で日本とNZ の友好関係に尽力。奥様は日本人。お休みの日はゴルフ を楽しむ。一番好きな和食はトンカツ。

とにかくスポーツが好きだった

学生時代は、とにかく体を動かすことが好きで、ラグビー、ホッケー、クリケット、いろんなスポーツをしていました。

スポーツに熱中するあまり、勉強には熱が入らず、成績は決してよくなかったです。進級するだけでよいと思っていました。大学も、特にしたいことがなかったために、行ったようなものです。

160-11.jpg

大学2年生の時、クリケットの練習中に膝を大怪我し、スポーツができなくなってしまいました。しかしそれをきっかけに、勉強に集中するようになり、数学や経済も学び、かなりいい成績で卒業することができました。

卒業後は、経済を学びましたので、大蔵省や中央銀行に就職するつもりでいました。しかし当時色々とお世話になっていた知り合いの勧めで、外務省のテストを受け、合格し就職することになりました。学生時代の私の世界はニュージーランドだけで、外国に目を向けることはありませんでした。ですから、決して最

初から外務省を目指していたわけではなく、どちらかといえば偶然といった感じです。でも、外務省に入ればオーストラリアに行く機会もあり、きっとクリケットの大きな試合も見ることができるだろうとスポーツ好きの私は少し期待しました。

なんの知識もなかった日本

当時の首相は国民党のロバート•マルドゥーン。彼は海外資本も絡む大規模プロジェクトで経済政策を進めようとしていました。経済を勉強していた私に、日本行きの白羽の矢が立ちました。日本については、ほぼなんの知識もありませんでした。浮かぶものは"、電化製品""車"これだけです。日本語についても、学生時代に、フランス語、ラテン語と勉強しましたが、使う機会が全くなく、役に立たなかった経験があったため、特に勉強はしませんでした。仕事の相手となる日本人はきっと英語ができるだろうとも思っていました。

いざ、日本へ

1979年、初めて日本の地を踏みました。今でもはっきり記憶しているのは、最初の晩、高層ホテルの窓から見えたネオンばかりの風景。農場はひとつも見えませんでした。その驚きは今でも鮮明に覚えています。一方で明るい時に遠くに見えた富士山の美しさも忘れられません。

日本での仕事はとても興味深いものでした。でも日本語を勉強したいと思った大きなきっかけは、当時大使館の受付にいた日本人女性に出会った時です。今の奥さんです。

その後、一旦ニュージーランドに戻りましたが、再び日本に行くことになりました。この2度目の時に、一年間しっかり日本語を勉強しました。新聞を毎日読んだり、漢字を勉強したり、日本語での会話を積極的にするようになりました。そうすることで世界が広がりました。当時既に30歳を過ぎていましたが、ちゃんと勉強してよかったと思います。

結局日本には、数年の時を経ながらも、3度滞在する機会を得ました。その度毎に人間関係は広がり、長い付き合いになっていきました。人との交流はとてもよいと思います。

若い人にニュージーランドを勧めたい理由

"留学"となると、親御さんはアメリカやイギ
リスをまず考えます。語学を勉強するのであれば、親としてその選択は当然かもしれません。しかし、ニュージーランドは勉強だけではないプラスの部分が大きい。そのプラスとは、ラグビー、ゴルフ、野球、セーリングなどのスポーツや趣味です。

たとえお互いの言語が話せなくても、スポーツを通してなんらかのコミュニケーションができる。少しでもコミュニケーションができれば、親しくなれる。親しくなれば、お互いに自信を持って積極的に言葉をやりとりしようとする。それが、他の国の語学留学にはない、ニュージーランドならではの"留学"です。

日本とニュージーランドの教育方法の違い

日本の学校は、先生が生徒たちに教えます。上から下に流れていく感じに見えます。先生の言葉をよく聞いて、よく勉強して、試験でよい点数を取る。ニュージーランドは、先生が輪の中心。生徒たちに考えさせようとします。それは教室内だけではなく、外でも行われます。これを教えよう、学ばせようという期待があるのではなく、そこから子供達が何を発見するか、何を学ぶか、つまり、予期せぬことを期待するところがあります。

これはニュージーランドの強みです。決して大国ではないけれど、何かが起こった時になんらかの解決方法を見いだすことができる人間を育てます。これがこれからのニュージーランドの大事なポイントです。

日本とニュージーランドの関係

両国には共通点がいっぱいあります。島国であること、四季があること、民主主義であること、国民性も近いものがあると思います。経済の視点でいえば、ニュージーランドは資本金の少ない中小企業が多いです。そのため短期的なモノの見方をしてしまいますが、そうした考え方は、世界では成功しません。日本は資本金もあり、長期的に物事を捉えています。日本とニュージーランドが手を組めば、補い合いながらアジア各国との流通の発展に貢献すると思います。

日本とニュージーランドは、競争相手ではなく協力関係にあります。理想的なパートナーであると私は思います。

若い人たちへ、そして私たち大人が彼らにできること

両国は、もう少し活発に交流することが大事です。そのために、私たち大人たちは、もっとたくさんの情報を提供すべきです。お互いに相手についての知識を増やすこと、つまり
「知る」ことが大切です。ニュージーランドでは日本についての情報が少ないです。せっかく若者に人気の日本の漫画も手に入りにくい。

さらに、若い人にとって金銭面での問題はシビアです。渡航費用ひとつとってもそうです。もっと活発な交流のため、その辺りにも私たち大人にできることがあると思います。

経済の視点でいえば、現在日本からの投資でニュージーランドからアジア各国への輸出が実現しています。貿易がさかんになれば、さらに両国の関係は活発化します。強い関係を築くために、ニュージーランドの若者も日本語を積極的に学ぶようになると思います。日本の先端技術はすごい。ニュージーランドは将
来に向けて、日本との関係を大事にすべきです。

自分の国だけに住んでいるのでは、世界は狭くなります。交流し、お互いを「知る」ことで、共通点を見出し、相違点を尊重し合い、友好な関係を築いていってほしいと思います。

160-12.jpg

私にとっての日本

日本は素晴らしい文化があります。歴史もあります。東京の道を歩いていると、近代的な高層ビルのそばに神社仏閣があります。いたるところで歴史の深い国という印象を受けます。

また、都会は都会、地方は地方と、しっかり分かれていて、その地方その地方で独特の文化があります。だから私は東京が好きです。北海道も好きです。

ニュージーランドは小さい国ですが、スポーツでは、大きなオーストラリアやイギリスに勝てます"。勝ちたい"という意識が強いです。大企業の偉い人よりも、強いスポーツ選手を尊敬します。日本は少し違いますね。柔道、剣道..."道"です。勝つことよりもその方法、礼儀、精神を尊重する文化があります。素晴らしいと思います。しかし最近は、日本人に"勝つぞ"という強い意志を感じますから、2019年日本で開催されるラグビーワールドカップ、続く2020年の東京オリンピック、その活躍が楽しみですね。

各種法律や移民局の規定等は改定されている場合があります。詳しくはお問い合わせください。

お問い合わせはこちら