Vol. 176 特集

遠藤貴司 - New Zealand 警察官

“Safer Communities Together” 今、改めて実感する、 安全に暮らすことの大切さ


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水色のシャツに濃紺のチョッキ、チェック柄の帽子…、ご存知ニュージーランドの警察官のユニフォームです。街中で目にすると、ドキッとしたり、ほっとしたり。その存在に関心を引かれずにはいられません。オークランドには現在2人の日本人警察官がいます。異国の地での生活は、“なにかあったとき”が一番辛いところ。クライストチャーチの地震の時も、日本人警察官がニュージーランドと日本、両国のコミュニケーションを円滑にしました。普段は意識することのない警察…それが安全に暮らしていることの証明でもありますが、いざという時にいてくれる安心感。ニュージーランドで警察官となった遠藤貴司さんにお話を伺いました。

遠藤貴司
えんどうたかし●New Zealand Constable
1976年札幌市生まれ。高校時代は陸上部の中距離選手。専門学校の時に柔道を習い初段を取得。趣味はロッククライミング。ニュージーランドの好きなところは「年齢や人種に平等で、いくつになっても若者と同様に新しいことにチャレンジができるところ」。さらにアウトドア好きな面から「危険な生物(ワニ、毒蜘蛛や蛇など)が他の国に比べて少ないところ」。出勤前後には3kmほど愛犬2匹を連れて近所を散歩。共働きのため「食事も子育ても妻と協力して」。

ニュージーランドに来るきっかけ

 出身は北海道、札幌です。専門学校を卒業後、フェリー会社の乗務員として船内案内所で働いていた時に、外国の方と接する機会も多かったため、英会話を勉強し始めました。海外旅行もするようになり、そのうちに日本を出て仕事をし、生活をしてみたいという気持ちが湧いてきました。そして8年間勤めた会社を辞めて、準備を始めました。渡航先をニュージーランドにしたのは、2004年ウェリントンから北に向かって10日間の旅行をしていた時に、自然がたくさんあること、そして暮らす人々にゆとりがあるように感じたからです。クイーンズタウンを選んだのは、出身の札幌と気候が近かったことと、まず英語を勉強するのなら日本人の少ないところがいいと思ったからです。そして2006年、29歳の時にワーキングホリデービザでニュージーランドに来ました。

 こうしてニュージーランドでの生活を始めた遠藤さん。来た当初の英語力は、「言われていることは分からず、全く通じなかった」そうです。とにかく英語だけの環境に身を置こうと、クイーンズタウンの語学学校に通いながら、ホームスティや学校のスクールアコモデーションで他の学生と共同生活をしました。その後、ホテルのポーターの仕事につきます。この仕事でさらに英語でのコミュニケーション力を身につけることになりました。ワーキングホリデービザからワークビザに切り替え、その後永住権を申請し、取得。新たなスタートを切ります。

警察官を志すことになった"一言"

 永住権を取得したのち、大きな街で自分の力を試したくなり、人口の一番多いオークランドに移りました。とりあえず同じ系列のホテルで仕事をしていましたが、仕事内容がオフィスワークになったことで、改めて自分に向いていること、やりたいことを考えるようになりました。そんな時、現在の妻が言った一言が、「あなた、警察官に向いているんじゃない?」。もともと間違ったことが大嫌いな性格なのと、それまでの仕事が人と接することでしたので、確かに自分には向いているかもしれないと思えました。彼女のこの一言をきっかけに、自分でウェブサイトを調べ、真剣に警察官になることを考え始めました。そもそも日本人がニュージーランドの警察官になれるとは思っていませんでしたが、調べていくなかで、永住権があれば可能であることを知り、警察官になれば、"自分の手で人を助けることができる"と、志願することにしました。ホテルの仕事を辞め、Auckland Central Police Station内でボランティアを経験したのち、警察が押収した物や遺留品を保管する部署での仕事を得ました。2014年4月のことです。

警察学校に入るために

 ニュージーランドの警察官になるためには、いくつかのリクルートメントプロセスを全てパスし、警察学校に行き、数々のトレーニング・試験を経て卒業しなければなりません。これは国籍に関係なく、全員が同じプロセスを踏みます。私は2014年にリクルートメントを開始しました。警察学校に行く前のこのプロセスにはおよそ15のステップがあります。その中には体力テスト、筆記テスト、タイピングテスト、面接や実地研修、12週間のオンライントレーニングが含まれています。仕事をしながらでしたので、私はこのプロセスを約2年かけて行いました。
 ニュージーランド警察には、採用を専門に担当する部署があり、その部署との架け橋になってくれるAsian liaison officerという人がいます。私はその方から数え切れないほどのサポートやアドバイスをいただきました。自分に何が欠けているか、次のプロセスにはどんなことが必要か、どんな準備をすれば良いか、時にはインタビューの練習相手にもなっていただいて、本当にお世話になりました。
 筆記テストや体力テストについては、その対策や講習が随時あり、無料で受けることができます。こうしたものに参加すると、他の志願者と知り合え、交流を深めることができるので、私は積極的に参加しました。おかげでたくさんの仲間と出会え、かけがえのない友情を築くことができました。


 こうしたプロセスを経て、2015年10月に警察学校に入学。警察官になるための本格的な訓練が始まります。警察学校はウェリントンにあるため、既に結婚していた遠藤さんは、妻子をオークランドに残し、寮生活に入ります。同期は40人。警察学校(Police College)で学ぶ人間は、警察官の訓練生という位置付け(Recruit)となり、この時点で制服が貸与されます。

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警察官への道のり

 警察学校は16 週間あり、月曜から金曜の朝8時から夕方5時まで授業があります。土・日はお休みですが、みんな勉強をしていたと思います。私もこんなにしたことはなかったと思うくらい、この時期は勉強しました。平日は朝4時から勉強をし、学校から帰ってからも7時くらいまでやっていました。
 トレーニングは大きく分けて5つあります。1. Police Study(犯罪について) 2. Defensive Tactics(逮捕術) 3. Firearms Training (銃の取り扱い) 4. Driver Training (ポリスカーの運転技術) 5. Computer Training(専用のパソコンの取り扱い) です。やはり英語が母国語ではないので、特にロールプレイングのPractical Examには苦戦しました。ですが、とても頼りになるトレーナーや先生、共に頑張る仲間たちの支えもあって、全てパスすることが出来ました。正直、警察学校での生活はとても大変でしたが、私にとってはかけがえのない人生経験になりました。

 今年2月、16週間の警察学校を卒業した遠藤さん。卒業後は、2年間のProbationary Constable (見習いの警察官)として任務につき、実務経験を積むため、様々な部署に配属されます。

警察官としての第一歩

 最初に配属されたのが、Front Line。この部署は、真っ先に現場に向かい、状況を把握、適切な判断を下して事件を解決したり、他の専門部署に引き継ぐことが任務です。そして3ヶ月のFront Lineの後、6月から現在のTraffic Alcohol Team(飲酒運転をメインに取り締まる部署)で交通規則違反者や飲酒ドライバーの取り締まりをしています。その他、警察署内の様々な部署から日本人へのサポート依頼がありますので、そうした仕事を受けています。勤務は、午前、午後、夜勤といったシフトワークです。だいたい1日9〜10時間勤務で、週40時間程度になります。

 警察官としての日々の生活がスタートして数ヶ月。「なりたい」という気持ちを実現した遠藤さんは、実体験を通して、どのようなことを感じているのでしょう。

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警察官としての日々

 犯罪の恐ろしさ、安全であることの大切さ、それを改めて認識する日々です。初めてそうしたことを感じたのは、警察官になる前の9ヶ月間在籍したAuckland Central Police Station内の押収物や遺留品を保管する部署で、事件や事故に関連した様々な物を目にした時です。実際今勤務をしていても、危険はどこに潜んでいるか分かりません。細心の注意を持って、職務を遂行しています。その為のトレーニングや身につけている武器の扱い方を警察学校で学んだわけです。今でも年に数回、個別にDefense Tacticsについてのアセスメントという確認作業があり、さらに2年に一度、PCT(Physical Competency Test)で基礎体力のテストもあるんです。
 最近こんなことがありました。飲酒運転の取り締まり時、止めた車のドライバーが、私の指示に従わず、車の中にあったハンマーを手に取って振り回そうとしたんです。見た感じでは普通のドライバー。怖いというよりも、潜んでいる危険というものを初めて実感しました。
 他の職業と比べると危険と隣り合わせなことが多いかもしれませんが、日々やりがいを感じています。経験はまだ浅いですが、リクルーメントプロセスで努力しこと、多くの人からアドバイスをいただいたこと、その過程で育んできたたくさんの友情、そして何よりいくつになっても新しい事にチャレンジできるんだということを、警察官になったことで確信しました。
 今までイメージしていた警察官は、パトロールや事件へのアテンドなど、外での活動をメインと思っていましたが、実際は色々な書類作成のためのオフィスワークや事件のフォローアップなどでコンピューターに向かっている時間も結構あるんですね。まだまだ知らないこと、学んでいくべきことはたくさんあります。この2年間で、警察内のいろいろな部署を経験し知識を増やして、自分の能力を生かせるところはどこなのか、見つけていきたいと思っています。

ニュージーランド警察が求める人間

 いつも必ず心のどこかにあるのが、ニュージーランド警察が掲げる6つのCore Values。1. Professionalism (プロ意識) 2. Respect (尊敬、敬意) 3. Integrity (誠実さ) 4. Commitment to Maori and the Treaty (先住民のマオリ人に対して真剣な関わりや将来への取り組み) 5. Empathy (共感) 6. Valuing Diversity (多用性の価値)。この全てを理解し実行していくことが、ニュージーランドの警察官に求められています。逆に言えば、こうしたことができる人材をニュージーランド警察は必要としています。さらに、自分の行動に責任を持ち、体力に自信があり、チームプレイができる人...。そんな人には是非"ニュージーランドの警察官になる"ことを将来像のひとつにして欲しいですね。

 移民の多いニュージーランド。それを背景に起こる事件もあります。この国で暮らす日本人に、自分がそうした事件に巻き込まれないための予防策、心構えをお聞きしました。

日本人に必要な「No」という勇気

 日本人には、ある一線を超えないと、なかなか「No」と言えない律儀なところがあると思います。不本意にもかかわらず、相手に合わせてしまって、結果事件に巻き込まれてしまう、そうしたケースを時々目にします。「No」が自分の気持ちであるのなら、それをはっきり相手に伝えること。これが日本人に必要なことだと感じます。そして何か事件・事故などが発生した時は、迅速に警察に連絡をしてください。通報が早ければ早いほど、事件の解決が望めます。

 現在、警察官になるきっかけを与えてくれた奥様と1歳の息子さん、そして2匹の犬と暮らす遠藤さん。"オン"と"オフ"。張り詰める"オン"だからこそ、"オフ"の時間を大切にしていらっしゃいます。

家族の存在

 妻とは、クライミングで知り合ったのですが、今でも友人とロッククライミングを楽しんでいます。今は息子が1歳、妻も仕事をしているので、休みは家族で過ごすことを優先したいと思っています。ピクニックに出かけたり、まとまった休みも取れるので、なにかの記念日には国内旅行も計画しています。
 息子が生まれて改めて、日々安全に生活ができることが、健康でいることと同じくらい大切なことだと痛感しています。ニュージーランド警察が掲げているSafer Communities Together (一緒に安全な社会を築きましょう)というスローガンに向けて、自分自身が、今以上に貢献し、事件・事故に遭われた方々をきちんとサポートする一人前の警察官になりたいと思っています。

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New Zealand POLICE website

http://www.police.govt.nz

NZ POLICE Recruitment website

https://www.newcops.co.nz

▼ニュージーランドでのキャリアインタビューはこちら!

http://www.ecube.co.nz/category/92

▼ニュージーランド式の就活のことならこちら!

http://www.ecube.co.nz/category/105

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