Vol. 179 特集

2017年の日本とニュージーランド - 後編 -


メインイメージ

ニュージーランド三菱商事
清水泰雅金属グループマネジャー

信頼関係構築がビジネスの鍵

Mitsubishi.jpg

 ニュージーランド三菱商事は50年来、機械、鉄鋼製品、化学品、食品などの輸出入から各種プロジェクト関係まで、幅広く事業を行ってきました。最近では、ハントリーという町にある国営企業の火力発電所に三菱重工製のガスタービンを入れましたし、今後オークランドの地下鉄を通る予定のCAFというスペイン製の電車をAT(オークランド・トランスポート)に紹介したのも三菱商事です。ニュージーランドの産業に紐付いている資材や商品の貿易からノウハウの提供も含め、総合的に活動しています。
 全ての商売に通じると思っていますが、仕事をする上で大事なのは信頼関係です。外国人である私たちがここで商売をやっていくには、関係性という土台がないと続きません。私たちの場合BtoBが多いですが、私たちが仲介して商品を売っているお客さんに信用してもらい、彼らが安心して物を売れるかどうかというのが大切です。信頼関係を築くためには、まず相手の話をよく聴くこと。相手が困っていること、やってもらいたいことは何なのかを引き出し、ベストフィットするアイデアを提供できたときに信頼してもらえ、「パートナー」になれると考えています。
 人口規模の小ささから、ニュージーランドでの商売は量を追うことはできません。北米や中国でビジネスをするのに比べたら、数字の後に付くゼロの数は少なくなるでしょう。しかし、小さいなら小さいなりにさまざまなことができるはずです。インフラ整備や高速道路の延長工事など、色んな話が出ていますが、ウェリントンの中央政府がこれから何をしたいのか、そこに私たちがどう関わっていけるのか、一緒に何ができるのかを考えていきたいと思います。

 

資生堂ニュージーランド

高井信之取締役社長

多様性強みにさらなる飛躍をShiseido.jpg

 資生堂は1971年にニュージーランドに上陸しました。貿易業をしていたニュージーランド人の夫妻が海外旅行先で資生堂の接客を受けて感激し、「ニュージーランドでも資生堂の商品を売りたい」と本社に持ちかけてきたことがきっかけでした。
 ものづくりにこだわりを持ってやってきたことで、資生堂の製品の良さをニュージーランドでも受け入れてもらえたと思っています。この国の消費者は非常にロイヤリティーが高いため、商品を長く使っていただけています。ブランドとしても定着してきていて、私もイミグレーションで職業を問われた時に、「資生堂」と言って通関で知らなかった人はまずいません。とてもありがたい話です。
 また、製品の質とともに、日本企業としてお客様に対するおもてなしの精神を大切にしてきました。資生堂ニュージーランドで働く社員や店頭のBC(ビューティーコンサルタント)は、Kiwiだけでなくアジア系など日本人を含め多様な従業員がいます。彼ら、彼女らに資生堂のおもてなしの精神を伝えていきたい。そのために年に一度優秀社員何人かを日本へ送り、日本の文化や資生堂のバックグラウンドを理解してもらうようにしています。
 資生堂はグローバルな会社として、特に海外市場に力を入れています。全社的なミッションの1つに「Diversity in Strength」というものがあります。多様性を生かして、ますます企業としての力を発揮していこうということです。ニュージーランドは市場規模は小さいですが、多様性に富んだ社員一人一人がレベルアップを図ることでより強い会社にし、海外事業の一翼を担い、資生堂全体の中で貢献したいと考えています。

 

Summit Forests New Zealand

左:小川哲郎社長
右:木下裕介輸出副部長

現地目線で地域社会に貢献Summit-Forests.jpg

 住友商事の事業会社であるSummit Forests New Zealandは、ノースランドのカイタイアで森林事業を行っています。植林をし、20~30年かけて木を育てて伐採し、工場に売る。国内での主な用途は柱や壁などの住宅用建材で、ほかにも工事現場のベニヤ板や紙など、さまざまなものに使われています。2012年に会社を設立して以来の目標でもありますが、森林の規模をまずは現在の2倍にすることを目指しています。
 海外でビジネスをしていく上で大切なのは、当然ながら現地の人たちとうまく融合していくことだと考えます。経済や雇用のほか、社会的、環境的な面でも地域社会に貢献しながら浸透していく。日本のことやお金のことだけを考えるのではなく、地元のことを考えてやっていくことがビジネスの継続性につながります。そのために私たち駐在員には、日本と現地の間に立ち、ちょうどいい落とし所を探す絶妙なバランス感覚が求められます。コミュニケーションを取る上で英語はいつまでたっても課題ですが、分からなかったら2回でも3回でも聞き直します。初めは恥ずかしくても、ビジネスの大事な決定をしていく上では絶対に必要なことだと思っています。
 今、国の政策として、国有地を中心にマオリの人々に土地を返還するという流れがあり、今後マオリのプレゼンスが高まってくるということがニュージーランド社会全体で起こっています。森林業をしている以上、必ずマオリの人々との接点が出てくると考えられます。彼らは20年後、30年後、50年後のことを見据えて物事を決めたり、ビジネスパートナーを選びます。それにアジャストしていかなければいけないところもありますし、元来私たちもそういった視点を持っているため、やりやすいとは思っています。マオリの人との関係構築にも主体的に取り組んでいきたいですね。 

 

frucor - A SUNTORY GROUP COMPANY -
姫野州將会長

日本の技術で健康社会を実現frucor.jpg

 オセアニア地域で飲料の製造、販売を行うfrucorは、2009年に日本のサントリーホールディングスが買収し、サントリーのグループ会社になりました。エナジードリンクの「V」や炭酸飲料の「Mountain Dew」などを扱っていて、ニュージーランドの飲料業界では2番目にシェアの大きい会社です。
 近年、若い消費者の間で健康志向が高まり、飲料業界では砂糖の問題が話題になっています。ニュージーランドではまだまだ炭酸飲料を飲む人が多く、日本のようにお茶や水というカテゴリーが小さいのが現状です。そこにサントリーが日本で鍛え上げてきた技術、特に緑茶やウーロン茶の技術を持ち込み、消費者の健康志向に応えられる商品を作っています。例えば2015年に発売した「OVI」は、人口添加物を使わず、緑茶の抗酸化作用を加えたフレーバーウォーターです。
 次々に技術が進化し、新商品が登場するITの世界とは違い、人の味覚や健康を相手にする飲料の産業は変化に時間がかかります。人の味覚が変わるのはそう簡単なことではなく、甘いものを飲みなれている人が、いきなり砂糖の入っていないお茶を飲むのは難しい。10年、20年の大計でこの国の人々に新しい健康的な選択肢を提供するための仕事に取り組んでいます。そしてそれはニュージーランド社会への貢献につながると考えています。 
 サントリーには代々、「やってみなはれ」というチャレンジ精神が受け継がれています。今までやったことがないことに挑戦する。それは新商品や新市場の開発であったりします。元々frucorにも「Go for it.」という、極めて「やってみなはれ」に近い、挑戦心に溢れたモットーがありました。ローカルのマネジメントや企業文化を大事にしながら、サントリーのカルチャーをどう植えつけていくかというのが大切だと考えています。

 

丸紅ニュージーランド会社
神戸資元社長

交流促進で潜在チャンス生かすMarubeni.jpg

30年ほど前の商社の仕事は、「トレード」という、物を右から左に流すというビジネスが主流でした。しかし、インターネットの普及もあって、物を売る側と買う側が簡単に結びつくようになった今、単に両者の中間に位置するというだけでは商社としての機能が見出せなくなってきました。最近では主体的に事業経営や事業投資を行うことに軸足を移しています。
 ニュージーランドでのビジネスはまだトレードが主体で、その中心となっているのが原木や製材品といったフォレストプロダクツです。事業面では日本の丸住製紙と合弁で、ワンガレイに製紙用のウッドチップの工場を持っています。お互いにフレンドリーに感じている日本とニュージーランドですが、まだまだいろんなビジネスや交流ができるはずです。ニュージーランドの強みは、やはり一次産品が豊富で競争力があるということ。そこに日本が持っている省力化や省エネ、環境面への配慮といった、技術やノウハウを加えてさらに付加価値を高める。そういったスキームができれば理想的だと思います。
 丸紅には「正・新・和」という社是があり、この意味は「正しく、新しいものを求めて、協調しなさい」ということです。日本企業として特に「和」というものを特徴として生かしながら、現地のシステムなり習慣を理解し、リスペクトすることが大切だと考えています。ニュージーランドは本当に住みやすい、いい国です。もっと多くの日本人に知ってほしいし、今後もっといろんなチャンスがあると思います。商社としてどこまで実現できるか分かりませんが、文化やスポーツなどを通しての人的交流にも少しでも貢献できればと思います。

 

日本貿易振興機構JETRO

オークランド事務所
林道郎所長

高まる関心、好機捉え現状打破をJETRO.jpg

 経済産業省が監督官庁を務めるジェトロは、諸外国との貿易、直接投資などの通商関係の進展を図る貿易促進機関です。柱となる業務は時代ごとに大きく異なり、現在は「対日投資」という、外国企業が日本に拠点を持ち、事業展開することに対しての後押しが重要な業務になっています。もちろん農林水産物食品を中心とした輸出促進にも力を入れ、海外バイヤーの招聘(しょうへい)などに取り組んでいるほか、海外調査や情報提供といった仕事もあります。
 ニュージーランドにとって日本は、物品貿易において第4の輸出先であり、また第4の輸入元でもあります。信頼関係も確立され、外交的にも良好な両国の関係は、良く言えば非常に安定していると表現できますが、新味がない関係性とも言えます。相当の日系企業がすでに出てきていますが、新たな進出が続出しているわけでもありません。輸出の面では「不戦敗」、つまりチャレンジしていないケースも多いと考えています。ニュージーランド企業の関心が中国や東南アジアといったダイナミックな市場に集まっているのに対し、静的な日本市場の現状をどう打ち破っていくかが今後の課題と言えるでしょう。
 そんな中、さまざまな通商枠組みの構築に伴い、ニュージーランド企業の日本市場に対する関心は高まっています。また、反対に日本側のニュージーランドに対する関心も高まりつつあります。ある意味稀有なチャンスとも言えるこうした機会をうまく捕まえて、さらなる経済関係の発展に寄与していきたいと考えています。ニュージーランドの経済は安定している上、堅調に成長もしています。開拓余地が残る、「先進国最後のフロンティア」と言えるかもしれません。今見られる関心の高まりを生かして日本企業にビジネスチャンスをできるだけ提供し、現実の取引につなげていけるよう努めたいと思います。

 

 

カテゴリ:特集
各種法律や移民局の規定等は改定されている場合があります。詳しくはお問い合わせください。

お問い合わせはこちら