Vol. 181 特集

特集1:「驚きと感動。それがアートです。」文化庁文化交流使土佐尚子さんインタビュー


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 日本の文化を世界に発信することなどを目的に、さまざまな分野で活躍する芸術家や文化人を国が派遣する「文化庁文化交流使事業」。2016年度の文化交流使の1人で、メディアアーティストの土佐尚子さんが2月、ニュージーランドを訪れ、オークランドのアートギャラリーで講演とショートエキシビジョンを行いました。「見たこともない美しさ」を追求する土佐さんにお話を伺いました。

2016年度文化庁文化交流使
京都大学学術情報メディアセンター教授

1961年、福岡県生まれ。東京大学にて博士号を取得後、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究所に在籍。作品はニューヨーク近代美術館、日本の国立国際美術館などに収められている。

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 昨年4月のロンドンから始まった文化交流使としての活動。これまでにパリやニューヨーク、シンガポールなど約10カ国を訪れた土佐さん。交流を通じ、「日本の芸術文化に対する世界の評価は良い」と感じたと言います。「『ポケモン』に見られるようなアニメとか、ゲーム、オタク文化といった日本のポップな文化が浸透している一方で、古来の日本文化も好きという人も多い。日本の文化は非常に興味を持って受け入れてもらえていると思います」 

 

 

 

 メディアアーティストとして活躍する土佐さんは2015年、京都国立博物館で琳派※400年記念のプロジェクションマッピングを狂言師の茂山逸平さん、生け花の家元の笹岡隆甫さんと成功させ、話題に。また、2014年にはシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ地区にあるアートサイエンスミュージアムの外壁を使ったプロジェクションマッピングで「四季」を表現するなどし、世界から注目を集めています。
 土佐さんが取り組んでいるのが、「アートとテクノロジーの融合」。その制作風景はまさに「実験」です。生の花を液体窒素に漬けて凍らせたものをエアガンで打って割ったり、スピーカーの振動を利用して液体を飛び散らせ、その瞬間を1秒に2,000枚撮影できるハイスピードカメラで撮影します。肉眼では確認できない世界。そこには、人のコントロールの範疇を超えた美が写し出されます。

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 「実験の中でまだ発見されていない、科学的に証明されていないものが出てくる中で、『美しいもの』と出合う。その瞬間、アートにしようって思うんです」。概念や観念の元に作られるコンセプチュアル・アートとは違い、そのものが持つ美しさに触発され、形にする。土佐さんはアートの定義を「驚きと感動」と表現します。
 かつて土佐さんはコンピューターグラフィックスを使った作品制作に力を入れ、人の感情を認識するコンピューターキャラクターなどの研究に取り組んでいましたが、ある気付きをきっかけにその道を離れます。「これはアートじゃないと思ったんです。そこには遊びやエンターテインメント、サービスはあるかもしれない。でも惚れ惚れするほど美しいと感じたり、感動して泣くことはないじゃないですか」
 土佐さんが求めるのは「見たこともない美しさ」。科学と現代技術を用いて生まれる「未知の美」に、生け花に見られるような「自然を生けどる」という日本的な気質を合わせた表現で見る人の心に驚きと感動を届けます。

ecube181_tosanaoko_Moon-Flower1.jpg  文化交流使の任期は今年3月までの予定でしたが、4月にニューヨークのタイムズスクエアでのエキシビションが決定。タイムズスクエアのビルボードに、毎晩1カ月間、土佐さんの作品が映し出されます。
 「やるからには美術史に残るようなことをやりたいです。アートというのは『無用の用』なので、人のやっていないことをやらないと意味がない。そのために見たこともない美しさというのは非常に重要で、目にした人がそこから何か感情的なものを感じ取ってくれればいいなと思っています」

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※琳派 桃山時代後期におこった日本絵画の一派。金、銀を豊富に用いた装飾的な画風を特色とし、ヨーロッパの印象派にも大きな影響を与えている。

 

文化庁文化交流使事業

2003年、世界における日本文化への理解の深化や、海外のアーティストらとのネットワーク強化を目的に文化庁が開始。2015年度までに、伝統音楽や舞台芸術、生活分野やポップカルチャーなど、さまざまな分野で活躍する芸術家や文化人、のべ122人と2グループ、26団体が世界79カ国へ派遣されている。2016年度の文化交流使は土佐さんを含め12人。

 

カテゴリ:特集
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