Vol. 188 特集

特集1:ニュージーランド原生の森を歩く


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 ニュージーランドと聞いて思い浮かべるのは、どんな景色ですか。牧草地で羊がのんびりと草を食む様子でしょうか。「自然豊か」と言われるニュージーランドですが、過去約200年の間に行われた大規模な伐採により、原生の森の85%が失われたことをご存知ですか。今では貴重な姿となった「本来のニュージーランド」を見に、オークランドのツアー会社・NAVI OUTDOOR TOURS NEW ZEALANDさんの案内のもと、ワイポウアの森を訪れました。

NAVI OUTDOOR TOURS NEW ZEALAND

 オークランドを拠点に、アウトドアをメインにした日本語のツアーを催行。トレッキングガイドとしてニュージーランド政府環境省(DOC:Department of Conservation)から正式に認可されています。ツアー参加費の一部はDOCに寄付され、ニュージーランドの環境保護のために使われます。

https://navi.co.nz/tours/

 今からおよそ6億年前。ニュージーランドの国土は全体が森に覆われ、そこではキウイバードをはじめ、プケコ、タカヘ、ケア、カカポなどさまざまな鳥たちが暮らしていました。そんな鳥たちの楽園に初めて人が足を踏み入れたのは、約1000年前。マオリの人々が船でこの地にたどり着き、生活を始めました。
 マオリたちは森の木を切って生活に必要な物を作りましたが、多神教の考えを持ち、自然を尊ぶ彼らは行き過ぎた伐採はしませんでした。中でもひときわ立派なカウリの木は、彼らが伐採の道具に使っていた翡翠では切ることができなかったことから、「神が宿る木」として大切にしてきました。
 1800年頃になると、イギリスをはじめヨーロッパからの入植者がニュージーランドに渡ってきます。1840年2月6日にワイタンギ条約が結ばれ、イギリスの植民地になると入植者の数はさらに増え、ニュージーランドの豊かな森は資源として注目されました。マオリの人々が大切にしてきたカウリの木ものこぎりで次々に切り倒され、森には火がつけられ、禿山になったところにヨーロッパから持ち込まれた芝生が植えられた結果、現在のような牧草地が広がるようになりました。
 わずか200年あまりで大きくその様を変えたニュージーランド。原生の森の約85%が失われ、カウリの木にいたっては約2%しか残っていません。ただただ切られるだけだった森の植物と、信仰の対象として大切にしていた森を力によって奪われていったマオリの人々。わずかに残された原生の森の中で、ニュージーランドの歴史を学んでみませんか。

ワイポウアで出合える特別なカウリツリー

 「カウリ」とはマオリ語で「大きな木」の意味。その名の通り、直径は大きいもので5メートル、高さは数十メートルにもなる巨木です。成長の過程で自ら節ごと枝を落とし、魚のウロコのように皮が剥がれます。これにより着生植物によって成長を妨げられることなく、固く丈夫でまっすぐな木に育ちます。

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Tane Mahuta

森の神「タネ・マフタ」

「森の神」(または森の主)と呼ばれるタネ・マフタは、ニュージーランドで最も大きなカウリ。推定樹齢は2000〜2500年。直径は4.5メートル、高さ約50メートルに及びます。2009年には日本・屋久島の縄文杉との間で世界で初となる木と木の提携が結ばれました。

 

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Te Matua Ngahere

森の父「テ・マトゥア・ナヘレ」

 推定樹齢2500〜3000年、ニュージーランド最古のカウリであるテ・マトゥア・ナヘレ(森の父)。森の中で突如姿を現す威厳のある様は圧巻。周囲は16.5メートル、大人10人が手を伸ばして囲むほどの大きさです。

 

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Four Sisters

「フォーシスターズ」

 4本のカウリツリーが並んで立つ姿からその名が付けられた「フォーシスターズ」。カウリは周辺の木を押しのけて育つ、競争心の強い木のため並立することは珍しいと言われていますが、フォーシスターズはそれぞれの木が枝を内側には伸ばさず、仲良く育っています。

 

カウリ・ダイバック

 近年、カウリの木を狙った病原菌により、「カウリ・ダイバック」と呼ばれる枯死が発生しています。病気になったカウリは白く枯れてしまったり、猿の腰掛のようなものが着生します。カウリを病気から守るため、森に入る前・出た後には消毒が義務付けられています。

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原生の森の個性豊かな植物たち

 約200種類を数えるシダをはじめ、ニュージーランドの原生の森には多様な植物が生息しています。形や大きさ、育ち方もさまざま。その一部を紹介します。

ニュージーランドのシダの中で一番大きく成長する「クロシダ」。高さ20メートルにもなります。葉の付け根が黒いのが特徴。

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過去に絶滅した大形の鳥・モアに食べられないよう、背の低い時には黒くとげの付いた葉を付け、モアが届かない高さに成長すると緑の葉を出すようになった「ランスウッド」。

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マオリの人々が古くからお茶にして飲んでいた「カワカワ」の葉。体内の毒素を排出したり、体力回復に効果があると言われています。

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葉の上で胞子を育てる珍しいシダ。成長してから地面に落ちる臆病者というところから「チキンファーン」と呼ばれています。

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葉の裏が白い「ギンシダ(シルバーファーン)」は月の明かりに照らされると光り、夜道で目印になったことから、「必ず無事に帰れる」と、軍隊の制服やオールブラックスをはじめスポーツ選手のユニフォームに模様があしらわれています。

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ニュージーランド航空の翼のモチーフにもなっているゼンマイシダはマオリ語でライフサークル(輪廻)を表す「コルー」。

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 今回お世話になったNAVI OUTDOOR TOURS NEW ZEALANDさんのツアー「カウリの森林 ワイポウア・フォレスト」は、オークランドを朝出発し、ハニーセンター、カウリミュージアムを見学し、ワイポウアの森を1時間半散策。同社では他にもワイポウアのカウリの巨木「ヤカス」に触れられるツアーや、西オークランドの原生の森を歩く半日ツアーなどニュージーランドの自然にまつわるツアーを多数扱っています。

 

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カテゴリ:特集
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