Vol. 188 Career Interview

保育士 谷島直樹さん

「ニュージーランドで保育士になる」 志しから約5年かけて資格を取得 海外で保育士として働く選択肢を 多くの人に知ってほしいと思っています


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谷島直樹(やじま なおき)さん

 東京都出身。大学時代オーストラリアでの研修をきっかけに海外の幼児教育に興味を持つ。大学院でニュージーランドの教育を知り、2014年9月にワーキングホリデービザでニュージーランドへ。保育士の資格取得に必要なIELTSのアカデミックモジュールで全科目7を達成、2017年7月に念願の資格を取得。マンゲレブリッジにある保育園「Tadpoles」に勤務。ブログ「オトメン保育士の海外ライフinニュージーランド」(https://ameblo.jp/hoikushi-nz/)でニュージーランドで保育士になるための情報を発信中。

工業高校から保育の道へ 海外の教育に興味

188career_07.jpg もともとは工業高校出身なんです。祖父が製造業の会社を起こして、父が2代目。ずっと「3代目」と呼ばれて育っていたので、何の疑問もなく工業高校に入ったんですが、学校で勉強すればするほど「自分にもっと向いている仕事がある」って思ったんです。ボーイスカウトをしていたことから物を作るよりも人と関わる方が好きだと気付き、教科の勉強より生きる力みたいなものを教えることに関われる幼児教育に魅力を感じました。学校での周りの反応は「何言ってんだ」という感じでしたが、もともと保育士か警察官になりたかったという父をはじめ、家族は応援してくれました。
 大学の研修プログラムでオーストラリアに1カ月行った時、子どもを遊ばせながら親がおしゃべりができるカフェや、おもちゃを貸し出している図書館があって、充実していると思いました。中でも一番刺激を受けたのが、ホームステイ先のお父さんが家事や育児を率先してやっていたこと。「子育ては夫婦2人でするもの」という考え方で、子どもとたくさん遊んだり、「愛してるよ」と言う姿が印象的で、この経験から海外の幼児教育に興味を持つようになりました。

大学院へ ニュージーランドの教育との出合い

188career_01.jpg 大学を卒業後はいったんフリーターになり、大学院の入学試験を受けたんですが、面接で「専門科目の点数はいいけど英語が0点に近い。3年現場で働けば、英語の試験が免除される社会人枠というのがあるから」と言われたんです。英語は昔から大の苦手だったので、勧められた通りまずは就職することにしました。
 正職員として就職するまで少し時間があったので、また海外の幼児教育を見に行こうと思い立ちました。初めはオーストラリアに行こうと考えていたんですが、「行ったことがないから」という理由でニュージーランドを選びました。午前に英語の授業、午後は保育園でのインターンシップというプログラムを1カ月体験しましたが、英語が分からなかったのでニュージーランドの教育が先進的だとか世界的に評価されているということは全く知りませんでした。
 帰国してから保育士として働き、4年目からは仕事をしながら大学院の夜間コースに通いました。勉強している時にたまたまニュージーランドの教育について書かれた本に出合い、それを夢中になって読みました。それからずっとニュージーランドのことが頭から離れず、大学院を卒業して3カ月後にはニュージーランドで保育士になろうと決め、ワーキングホリデービザでニュージーランドに来たのは30歳の時です。

無資格のポジションを知り、仕事をスタート

188career_02.jpgニュージーランドで保育士として働くには資格が必要で、それを取るにはIELTSの全科目で7.0のスコアが必要だと聞いていたので、来てからはとにかくIELTSの勉強をしました。日本で受検した時のスコアは4.5。6カ月勉強すれば目標に届くと思っていましたが、結果はライティングが7.5で、他が6。半ばふてくされながら語学学校を卒業し、ビザの延長を目的に、カティカティという町で3カ月キウイフルーツの収穫の仕事をしました。
 お世話になっていた家の子どもが幼稚園に行っていたつてで、収穫の仕事が休みの日にその園でボランティアをさせてもらっていたんですが、ここで初めて資格がなくても働くことができることを知りました。それからあちこちの園にCVを送り、オークランドの1つの園から連絡があり、面接をして採用が決まりました。
 ワークビザの取得を申し出ましたが、無資格(Unqualified)のポジションは希望者が多く、サポートは難しいと言われてしまいました。学生ビザに切り替え、修了するとジョブサーチビザの申請ができるLevel 7の ビジネスのディプロマコースに入り、パートタイムで仕事も続けました。ある日、カフェのウェイトレスと話をしていたら、彼女も保育士をしていて、「新しくオープンする予定の園があるから、働けるか聞いてみてあげる」と言ってくれたんです。経歴を書き出し、連絡先を渡すと後日連絡があり、マンゲレブリッジにある園のオープニングメンバーとして採用されました。

子どもの興味を伸ばす教育「テ・ファリキ」

 ニュージーランドの保育現場では、「興味があるからこそ学ぶ」ということを重視しています。教育指導要領「テ・ファリキ」では、子どもたちが興味のあるものに合わせてカリキュラムを作ります。うちのクラスでは今、飛ぶものが人気なので、紙飛行機を作ったり、ニュージーランドのネイティブバードについて勉強したりしています。僕の影響で忍者にも関心を持つようになったので、今度は忍者をカリキュラムにしようかと考えています。
 テ・ファリキというのはマオリ語で、「編んだ敷物」の意味です。教育というのはいろいろな要素が編みこまれるようにして成り立っていて、それをいろんな人が絡んで行う。そうしてできた教育という敷物の上に全ての人が立てることを目指しています。また、マオリの文化や言葉を、英国のものと同じくらい大切にするということや、多文化社会のニュージーランドで、自分のアイデンティティーをしっかり持った上で、違う文化も受け入れられるようにということが書いてあります。
 日本では30人の子どもを1人の先生が担当するのに対し、ニュージーランドは10人につき1人。今担任をしている年長児のクラスは22〜28人の子どもを4人の先生で担当しています。先生の数が多い分、休憩も気兼ねなく交代で取れるし、ティーブレイクの時間も時給が発生します。それから週に2時間は「ノン・コンタクト」といって子どもたちから離れ、「ラーニングストーリー」という記録をつける時間に充てられています。残業もないし、休みも取りやすい。余裕を持って子どもと接することができていると思います。

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念願の資格を取得、後進のサポートも目標

 苦戦したIELTSも全ての科目で7を超え、今年7月に念願の保育士資格を取得しました。資格を取るにはニュージーランドのLevel 7以上の学校でECE(Early Childhood Education)の勉強をするのが王道ですが、僕は日本で幼児教育の学位と修士を持っていること、日本での7年の現場経験があることをアピールして申請し、資格がおりました。これは個別のケースによります。資格はEducation Councilが発行しているもので、申請するとまずは「Provisional Certificate」という3年間の仮免許のようなものが発行されます。期限内に2年間、国内の保育園か幼稚園で働き、要件を満たすと「Fully- Registered」といって資格が確定します。
 まずは本資格を取ることが目標ですが、ビジネスも勉強したので、長期的な目標として将来は日本かニュージーランドで自分の園を持ちたいと思っています。あとは、ニュージーランドで保育士になりたいと考えている人の力になりたい。僕がニュージーランドで保育士になろうと決めた時、本当に情報がなかった。だから今、ブログで情報を発信しています。
 日本のことは大好きですが、大学にいる時は保育の現場に期待が持てなかったんです。聞こえてくるのは、卒業生が3カ月で仕事を辞めたとか、給料が低いとか残業が多いとか、そんなことばかりでした。でも、保育の仕事はとても素敵です。「今日は子どもとどんなことをしよう」「あの子は何をしたら喜ぶかな」とか考えながら過ごせる。子どもから教わることは多いし、成長を見られる。本当にいい仕事だと思います。かつての僕がそうだったように、好きな仕事に就くことができたのに、働くモチベーションが持てない人はいると思います。そういう人たちへ、一度日本を離れて海外で働くという選択肢もあるということを発信し続けていきたいと思います。

カテゴリ:Career Interview
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