Vol. 189 Career Interview

フィジオセラピスト 佐藤文一さん


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狭き門の先に待っていた厳しい環境、足踏みすることなくやりきった大学時代
ニュージーランドの日本人フィジオセラピストとしてさらなるスキルアップを図りたいです

佐藤文一(さとう ふみかず)さん:Bun Sato

 岐阜県出身。2003年、スノーボードをしに初めてニュージーランドを訪れる。翌年ワーキングホリデービザで再び渡航し、その後永住権を取得。2011年にAUTのヘルスサイエンス学部に入学し、フィジオセラピーコースを修了。2017年5月からノースショアにある「PLAYON」に勤務。Facebook(https://www.facebook.com/japanesephysio/)でフィジオセラピストとしての活動や体のケアについてのアドバイスを発信中。

リフレクソロジーからフィジオセラピーの道へ

 ニュージーランドに初めて来たのは2003年です。クイーンズタウンにスノーボードをしに来て、そこで出会った日本人女性と結婚し、翌年妻がワークビザを取得したので、私もワーキングホリデービザを取って一緒にニュージーランドに戻ってきました。
 日本の大学では環境系の勉強をしていたんですが、当時は関連する就職先があまりなくて。在学中からアルバイトでリフレクソロジーの仕事を始め、足裏だけでなく全身を診れるマッサージに興味を持つようになりました。タイのチェンマイを訪れた時にタイマッサージの魅力を知り、毎年通って習うようになり、タイ政府公認の指導員資格を取得。施術を重点的に、マッサージコースを開講したこともあります。
 マッサージの良いところは、施術後すぐに患者の反応が見られること。「気持ちいい」と言ってもらえる楽しみはあるけど、「体を治したい」という気持ちが強く、体の仕組みを知りたいと思うようになりました。いろいろ道を模索した結果、全身を見ることができるフィジオセラピーに行き着きました。

長期戦を覚悟に入学、難関コースを卒業

 フィジオセラピストになることを決め、2012年にオークランド工科大学(AUT)に入学しました。ヘルスサイエンスの学部にはフィジオセラピー
(Physiotherapy)のほかに助産科(Midwifery)や看護科(Nursing)などのコースもあります。当時、フィジオセラピーコースへの入学は10倍という高倍率で、現地の人でも高校を卒業してから直接入学できる人はあまりいません。さらに英語レベルもIELTS7.0(オーバーオール)が必要でした。
 いきなりフィジオセラピーコースを目指すのは難しかったため、まずはヘルスサイエンスの学部のスタンダードコースに入り、全般的なヘルスサイエンスについての教養を身に付けました。欠員が出て成績が良ければフィジオセラピーコースに移動できる可能性があると言われましたが、前の年に実際にスタンダードコースから移動できたのは1人だけ。とにかく必死で勉強し、フィジオセラピーコースへ移ることができました。
 希望のコースに入るのも大変でしたが、入ってからはさらに大変で、初めは150〜170人いた学生も最終的には約半数に減ります。フィジオセラピーの学科は4年間で1,000時間の実習が義務付けられていて、4年目には病院研修をします。休めばその分周りから取り残されると思い、必死で実習も課題もこなし、休暇も復習に充てるなど、常に何かしていなければ不安でした。試験に落ちると同じ単位を取るのに1年待たなければならず、子どももいたので「ここで足踏みするわけにはいかない」と、とにかく前に進み続けました。

就職後も勉強 最新の技術と知識で施術

 2015年12月にAUTを卒業し、クリニックの勤務を経て、現在勤めている「PLAY ON」では今年5月から働いています。以前の勤務先のマネジャーが新しいクリニックを開業するにあたり、さらなるスキルアップを目指しオープニングスタッフとして働かせてもらうことになりました。
 フィジオセラピストの求人はオンラインでもそれなりにありますが、コネで就職する人が多いように思います。例えば、もともと患者として通っていたクリニックに卒業のタイミングで求人の問い合わせをしてみるとか。職場の面接では実技試験はありませんが、大学では他の学生を患者に見立てて施術を行うロールプレイ形式の試験をし、難易度が高いためかなりの数の学生がここでドロップアウトします。
 ニュージーランドのフィジオセラピストは、免許を更新するために3年間で100時間以上の勉強をすることが義務付けられています。認められた施設で提供しているコースや「In-Service」といって病院やクリニックで開かれる勉強会に参加して、常に新しい技術を学ばなければいけません。
 最初は箔を付けるために資格を取ると考えていました。今、実際に働いてみて思うのは、資格を取ったからフィジオセラピストとしていろいろなことができるようになったというよりも、資格を取ったことによっていろいろなことが許されるようになったということ。患者に対してフィジオセラピストとしての専門的な知識をもってアドバイスでき、信頼してもらえる。今後はさらなるスキルアップを目指していくつもりです。

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国際大会も視野にスポーツ分野でも活動

 クリニックでの仕事のほかに、オークランドラグビーリーグのNorthcote Tigersのフィジオセラピーも担当しています。以前の職場で誘われ、チームを受け持ってこれで2シーズン。もともとスポーツフィールドには興味があり、自分がほしいスキルを培うことができる機会だと思い迷わず引き受けましたが、ラグビーについて特別詳しいわけではなかったので、現場で日々勉強しながらやっています。平日、仕事が終わった後に週2日と週末の試合の時に付き添い、怪我をすればどこがどう痛むのかという話を選手としながら、アセスメントやテーピングの方法を考えます。
 2019年にはラグビーワールドカップ、2020年にはオリンピック・パラリンピックが日本で開かれます。日本語が話せて、英語でも施術ができるフィジオセラピストの存在は貴重だと思うので、今の経験を生かして何かしらの形で国際的なスポーツイベントにも関われたらと思っています。

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日本人が安心できる「よりどころ」が目標

 将来的な目標としては、ニュージーランドに住む日本人が頼れるようなメディカルセンターのようなものを作れたらと考えています。日本人は良くも悪くも我慢強い。それからニュージーランドの医療制度をきちんと理解していない人も多くいます。
 ニュージーランドには、居住者、留学生や旅行者などの一時滞在者に関わらず事故によるけがの治療費を国が一部負担してくれるACC(Accident Compensation Corporation)という制度があります。病気は対象外ですが、事故には交通事故だけでなく、労災からスポーツやレジャー中の事故など、予期できなかった突発性のアクシデントがカバーされます。また、フィジオセラピーに行く前にまずGP(一般開業医)に診断を受け、ACCの手続きをしてもらわなければいけないという勘違いがよくありますが、フィジオセラピストも国から認定されたACCのプロバイダーのため、GPと同じようにACCの手続きができます。
 痛みを訴えてGPに行っても、自分の症状を上手く伝えられなければとりあえず痛み止めを渡され、根本的な解決にならないということが起きます。痛みが外傷的なものなのか、内部からきているものなのか、実際に診てみないと分からないことがたくさんあります。私たちフィジオセラピストは医学的な専門知識があるので、アドバイスできることがあるかもしれません。
 仮にフィジオセラピーの範囲外だったとしても、症状から何かしら治療の糸口を掴める可能性も十分にあります。具合が悪い時は精神的に不安になるので、日本語で相談できるだけで安心するという人もいます。病院に行くかどうかをちゅうちょしたり、GPで診てもらうために長い時間待つより、まずは相談してほしい。困った時に頼れるネットワークやコネクションを作り、日本人が安心して立ち寄れる場所を作れればいいと思います。

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カテゴリ:Career Interview
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