Vol. 190 特集

小児歯科衛生士 エケトネ-テカナワ 一葉さん


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エケトネ–テカナワ 一葉(かずは)さん

 北海道出身。2004年、家族でシドニーからニュージーランドの南島にあるダニーデンへ移住。オタゴ大学の口膣健康科学コースで歯科衛生学と歯科療法学を専攻し、2009年に卒業。2015年からノースショアにある「Greville Dental」に勤務中。ニュージーランドでの日常や子育て、小児歯科衛生士としての情報を発信するブログ「歯科衛生士の子育てlife in NZ」(https://ameblo.jp/yorkplace107c/)を運営している。

「子育ては海外で」家族で移住

 高校生の時にアメリカへの短期留学を経験したことで英語に興味を持ち、いつかは海外に住みたいと思うようになったんです。日本の短大では英文学科に入り、卒業後は英会話教室に講師として就職して、そこで出会ったオーストラリア育ちのニュージーランド人男性と結婚しました。
 その後もしばらくは日本で生活を送り、英会話講師の他にもいろいろな仕事を経験して。その中の1つが歯科助手でした。日本で歯科助手をするのに資格は必要なく、実際に働いていく中で歯科衛生士や歯科医から指導を受けるんです。私はオープニングスタッフとしての採用で、1つの組織をみんなで作り上げていく一体感を味わうこともできました。
 出産を経て子育てについて考えたとき、「海外がいい」と思ったんです。それで2002年、夫が日本に来る前に長く暮らしていて、義母も住んでいたオーストラリアのシドニーにまず移住することにしました。
 シドニーでは日本食レストランとかでアルバイトをしたり英会話力向上のため語学学校に通ったりして。一度歯科助手の求人にも応募をして1週間のトライアルに行きましたが、オーストラリアやニュージーランドでは患者とコミュニケーションを取るのも仕事のうち。英語力のことで「ここは学校じゃないのよ」と言われたのはとてもプレッシャーでした。

ニュージーランドへ、歯科助手に 

 オーストラリアで2年間過ごし、ニュージーランドに来たのは2004年。ニュージーランド人である夫がダニーデンにあるオタゴ大学で勉強をし直すことになったからです。夫が机と向かい合っている間私は仕事を探すことにしたんですが、ある時偶然、ダニーデンの新聞の求人欄に大学内クリニックの歯科助手の募集があるのを見つけて、これまでの経験が活かせると思い応募したんです。結果は採用。オーストラリアのときとは違い、ときにつたない私の英語も笑い飛ばしてくれる感じでした。冗談交じりにしっかりと訂正してくれてありがたかったです。
 働きだしてから気付いたのが、受付をやって先生のアシスタントをやってといろいろなことを任される日本とは違い、ニュージーランドの歯科助手は患者に触ってはいけなかったり物を渡すだけだったりとできる範囲が限られているということです。
 もっとやりがいを感じたいと思い始めていた頃に、翌年か2年後か、近々オタゴ大学の「歯科衛生学(Dental Hygiene)」と「歯科療法学(Dental Therapy)」のコースが合併する「口腔健康科学(Oral Health)」の学部があるということを聞いて興味を持ちました。
 歯科衛生士は歯のクリーニングやホワイトニング、歯科療法士は18歳未満の子どもの乳歯、あるいは永久歯の簡単な治療が認められていて、大学を卒業して資格が取れればもっとできることの幅が広がると思ったんです。

大学のインターンで実務経験を積む

 オタゴ大学の口膣健康科学の学部に必要なIELTSのスコアは、オーバーオールで7.0。当時英語力に自信はなく、仕事をしながらでも通える夜間コースのある語学学校を探したけど見つけられませんでした。
 職場で培ったスピーキングやリスニング能力のみで臨んだ初めてのIELTSは5.5という散々な結果。必要スコアに全く届いていない現実がショックで、このままでは駄目だとライティングやリーディングのスキルも養うためにひたすら図書館にこもって勉強をしました。
 IELTSスコアを取得し無事に大学生活をスタートさせたはいいものの、入学当初は全く講義についていけなくて。最初のうちはレコーダーを常備して、授業の内容を録音したり一番前の席に座ったりと努力をしました。実務経験と知識があったおかげで歯学系の勉強はなんとか理解することができていたんですけど、その他薬学や社会学などの必修科目がとにかく大変で、友達の力を借りたりして食らい付きました。
 大学に通う3年間の中でインターンも経験しました。歯学部では2、3年目にインターンが組み込まれていて、学生の間から大学内にあるクリニックで実務経験を積むことができるんです。通常45分ほどで終わる治療も、2年生のうちは学生同士でペアを組んで先生のチェックを受けながら2時間もかけたりして。在学中に実践的な知識を養えるので自信も付くし、卒業後の就職に直結するというのもよかったです。

出産、新たな職場との出合い

 2015年からはオークランド郊外にある「Greville Dental」に「小児歯科衛生士(Oral Health Therapist)」として勤務しています。きっかけは患者として受診したことでした。娘を出産した時、いきんだ拍子に歯が折れてしまって。それで家の近所に新しくオープンした歯医者に行ってみることにしたんです。
 ニュージーランドに移住してからいろいろな歯科医を見てきましたが「この先生が一番」だと思いました。丁寧なだけでなく、スピードも速い。彼は患者が不快にならないちょうどいい触り方を知っていると感じたんです。治療を受けていた時に自分の経験と資格の話をしたら、ちょうどもう1人歯科衛生士を探しているところだったと言われて。当時は子どもがまだ6カ月で週に何度も勤務をするのは難しいというお話をすると、向こうも週1回の午前中だけ働ける人材を募集していたということで、とんとん拍子で就職が決まりました。
 今はほとんどの場合、歯科衛生士の求人はオンラインで見つけられると思います。ただ私が最初に就職活動をしていたときはインターネット上での求人募集はまだあまりポピュラーではなかったので、図書館に置かれている新聞の求人欄を端から端までチェックしたりしました。タイミングや条件などが合えば、人脈を頼って入社できる私のような珍しいパターンもあります。

歯科衛生士としてさらなる高みへ

 日本にいたときから人をケアする仕事が向いていると感じていました。英会話講師などの経験から子どもも好きで、小児歯科衛生士という職業はとても楽しいです。基本的にニュージーランドの歯科医療は18歳未満の子どもには無料診断が提供されることになっているけど、政府と提携しているクリニックのみの適用だったり12歳以下だとスクールデンティストにかかる場合のみ無料になったりと少し複雑になっていて。どうしても大人の患者の方が多くなってしまうので、今担当しているのはホワイトニングやクリーニングといった衛生士業務がほとんどです。
 大学在学中は大変なこともたくさんあったけど、いろいろな壁を乗り越えて辿り着いたのが歯科衛生士と療法士、どちらもできる小児歯科衛生士の道です。子どももまだ小さく、母親業に仕事にと慌ただしい毎日ですが、今のクリニックでできる幅をさらに広げていきたいです。大人メインというだけではなく、いつか子どもも同じぐらい見ていけるようになったらいいと思っています。

 

▼Vol.188のSelection:Greville Dentalについての記事はこちら!

http://www.ecube.co.nz/content/1885

カテゴリ:Career Interview,特集
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