Vol. 191 特集

―今を生きる― 未来をつなぐアートの形


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 日本からクライストチャーチに移住して15年の古川晴子さんは、「アーティストとして社会と関わっていきたい」との思いから、クライストチャーチ復興に向けてボランティアストリートアーティストとして精力的に活動中。将来的には音楽関係の人とステージ上でコラボレーションをしたいという夢を持つ古川さんに、お話を伺いました。

古川 晴子(ふるかわ はるこ)さん

 大阪府出身。子どもの頃に見た教育番組に影響を受けて芸術の世界に興味を持ち、美大を目指すため、高校生のときに画塾に通い始める。2017年にはクラウドファンディングを活用し、アメリカのグランドラピッドで開催された「国際アートプライズ展」に自身の作品を出展。現在はクライストチャーチ復興に向け、ボランティアアーティストとしても活動中(http://www011.upp.so-net.ne.jp/haruart/index.html)。

自分にしか見えない色がある

 芸術の世界に興味を持ったのは4歳ぐらいのときでした。テレビの教育番組でガラスに両手で絵を描いて子どもたちを楽しませてくれるお姉さんがいて、漠然
と画家という職業に憧れを持つようになったんです。
「練習して自分もあんな風になりたい」と思いました。
 小学校5年生のとき、朝ドアを開けて、太陽の光が地上に降りてくる様子が美しいなと感じたんです。それから「自分の色彩」というのを意識するようになって、初めてクライストチャーチを訪れたときも展覧会のためにアメリカのグランドラピッドに行ったときも、結晶のような形でぼんやりと自分の色が見えました。そのときは「青」。私の中で青というのはピュアで優しい色なんです。
 小学生のときに印象派のクロード・モネやルノワールの作品と、中学生になり日本画と出会いました。「自分の目で見た景色よりもリアルだ」と感じ、衝撃を受けて。それで美大を目指すために、高校2年生のときに画塾に入学したのが本格的にアートを始めたきっかけです。

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世界中から集まるアーティストたち

 今から7年前に起きたカンタベリー地震で、クライストチャーチは大きな被害を受けました。その際、いろいろな国から救助隊が助けに来てくれるのはもちろんのこと、ストリートアーティストの人たちが世界各国から駆け付け、クライストチャーチで暮らす人たちを励ますために壁画を描いてくれたんです。それを聞いたとき、とても感動しました。国も言葉も文化も違うけれど、世界は一つなんだと。
 その後、人づてにクライストチャーチカウンシルがボランティアを募集していることを知って、自分にできることがあるならとすぐにアーティスト登録をしました。それが私がストリートアートに携わるようになったきっかけです。
 ストリートアーティストとしての被災地支援を通して気付いたのは、人と人とが支え合うことの大切さ。私一人の力には限界があるかもしれません。でも、みんなで協力すれば可能性は無限に広がっていく。次は市内の大きな建物に壁画を描きたいと思っています。見た人が楽しめて力が湧いてくるような、そんな作品にしたいです。クライストチャーチの復興は、まだまだこれからも続いていきます。

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アートで未来をつないでいく

 アートは今を生きている私の命そのものです。小さい頃、湾岸戦争の様子がテレビでライブ中継されたことがあります。一般市民の人たちが被害に遭っているということを考えると衝撃的な光景でしたが、その映像を何事もなかったような顔をして眺めている周りの人たちを見たときに、一種の恐怖を感じたんです。私たちは今、感情がない世界に近づきつつあるのではないかと。でもアートでなら思いやりだったり優しさだったり、普段は目に見えない感情を自分なりに表現することができると思ったんです。
 40歳を過ぎてから自分の子育てが一段落し、子どもたちに絵を教えるようになり、自分が昔教わった大事なことを伝えようとしたときに、「生きるというのはつないでいくこと」だと思うようになりました。人が今を生きる意味。私にとってそれは、自分が経験したこ
とやもらった愛情を未来につないでいくことなんです。
 子どもたちが目にする全てが殺風景な世の中になってしまわないように、夢や情熱を持って生きられる世界であるように。いつもそう願いを込めて絵を描いています。

今月の特集その1 あの日から7年 記憶とともに未来へ - ニュージーランドで地震が起きたらどうする? 「Drop, Cover and Hold」

今月の特集その3 福島県浪江町とわたし

今月の特集その4 被災地応援プロジェクト

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カテゴリ:特集
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