Vol. 197 Career Interview

看護師 淺川真由美さん

日本で感じていたプレッシャー 思い切って外に飛び出して 看護師として自信を持って働ける 今の環境がただ幸せです


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淺川真由美(あさかわ まゆみ)さん

 東京都出身。国立看護大学校を卒業後、看護師として国立高度医療センターで5年間勤務。人手不足で十分な看護ができない職場環境に疑問を持ち、海外の看護に興味を抱く。紆余曲折の末、ニュージーランド看護師資格を取得し、オークランド市立病院の心臓胸部外科に就職。日本の看護雑誌で執筆活動も行う。現在は仕事と育児を両立。

新たな目標 ニュージーランドで看護師に

 早いもので、ニュージーランドに来てからもう6年が経ちます。渡航する前は日本で看護師として働いていましたが、配属された病棟は忙しく、毎日の長時間残業に加え、有給休暇は使えないような状況でした。人手が全く足りていなくて、患者さんに呼ばれても応えてあげられない。主に重い病気を扱う病棟だったので、「このままでは患者さんを殺してしまう」と本気で思ったこともあります。何もできない自分のふがいなさは、とても大きな絶望感になりました。
 そんな時に副師長にならないかという話をいただいて、一度は「管理職になって上り詰めていけば、将来的にこの状況を変えられるかもしれない」と思ったものの、同時に、「このままこの病院で働き続けるのがいいのだろうか」と疑問も抱くようになったんです。代わりに気になったのは、「ほかの国の看護師はどうなのだろう」ということ。学生時代にいろいろな国を旅して、たまたま訪れたイギリスで出会った人に、看護師は目指すのであればイギリスで就職すればいいというようなことを言われたのを、ふと思い出しました。
 それも選択肢の一つなのかもしれないと思って調べてみると、看護大学の卒業資格とIELTSの「読む・聞く・話す・書く」の4技能全てで7.0を取得できれば、イギリスやニュージーランドなどの海外でも看護師として働けるということが分かって。私は日本ですでに看護大学は卒業していたので、あとは英語力の証明だけ。以前旅行でオークランドを訪れた時に、さまざまな人種のいる街にすっと溶け込んでいく感覚を味わいました。「あ、このまま住めちゃいそう」と思わせるような何かがあって、それはほかの国では一度も感じたことのない感覚でした。そして私は、自分らしさと新しい可能性を信じて、ニュージーランドで看護師になることを決めたんです。

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IELTSの高い壁 9.0を目指す

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 英語は独学で勉強していたのですが、日本で広く認知されているTOEICとは違って、当時まだメジャーでなかったIELTSの本はごくわずかしか見つけることができませんでした。日本で勉強するには限界があると感じ、直接現地に飛び込んで、学生ビザで3カ月ほど語学学校に通うことにしたんです。結局短期間の通学では目標を達成できず、ワーキングホリデービザに切り替えて、アルバイトをしながら図書館に通い詰め、問題集をひたすら解いて、自力で基準をクリアしました。

 しかし、私が目指しているのはニュージーランドで看護師になることで、英語も日常会話ができればいいというものではないので、そこからまた、OET(The Occupational English Test)という、医療従事者の語学試験の対策コースを開講している語学学校に入学して、数週間にわたり語学力の向上に努めました。この期間で学んだ医療英語は実用的で、病名や症状、検査や薬の説明の仕方などは、今でもとても役に立っています。
 外国人看護師がニュージーランドで働くときには、登録申請をするために、まずは看護協会の定めた講習を修了しなければなりません。全てのバンドスコア(IELTS)で7.0を持っていれば学校に通えるはずでしたが、当時は外国人看護師の応募が殺到していたため、高い英語力を持つ人から優先的に入学する流れになっていました。9.0のスコアを保持するインド人やフィリピン人が応募してくるというんです。
 そうなるとやっと7.0に到達した程度のレベルでは難しく、さらに英語を勉強することにしました。高得点を取らせてくれるという噂の先生に教えてもらい、ライティングでは8.5を取得することができたのですが、それでも断られ続けました。でも、日本の生活を全て捨ててきたんです。「実績を残さずには帰れない」と、とにかく必死でした。全国のあらゆる学校にひたすら連絡して、一校だけ受け入れてくれる所を見つけることができました。

大事なことは"正直さ" 看護師の資質

 学校は大害の場合6週間~3カ月ほどで、在学中はニュージーランドの看護について理論を学ぶだけでなく、実習などを通して実践的な知識も養います。私はこの時、学校と提携している老人ホームで看護実習をしました。
 ただ、無事にコースを修了しても、就職先は自分で探さなければなりません。私は今、看護師としてオークランド市立病院に勤務していますが、仕事が見つかるまでにはかなりの数の履歴書を提出しました。オークランド市内だけでなく、ほかの都市にある病院に直接メールを送ったり、飛び込みで求人はないかと訪ねに行ったりと、就職活動は日本に比べ大変でした。
 ある日、求人に応募していたウェリントン病院から連絡があり、電話インタビューをしてもらうことになりました。面接官はとても良い人だったものの、電話での面接など生まれて初めてのことで、さらには顔が見えないということで対面とは比べものにならないほど緊張してしまって。うまく対応できなかったので、「逆に落としてくれてありがとう!」という感じでした。
 対して、オークランド市立病院は直接出向くことができ、場の雰囲気がとても和やかだったこともあってリラックスして臨むことができたんです。駄目でもともとで受けた面接でしたが、面接の最後には「あなたはこれからここで働くのよ」と言ってもらえて、安心したのを覚えています。

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 面接では、看護をするときに大事にしていること、状況によりどう対応するかというような看護観についての質問や、今までの経歴などについて聞かれます。看護師は人の命を扱う仕事なので、経歴も人間性も重視されるんです。
 例えば、ある患者さんの血圧が高すぎたとして、でも仕事を増やしたくないからと報告しないということもできてしまう。それが看護師という職業。だからこそ、私は常に正直でありたいと思っているんです。看護師という専門職の誇りを持って、患者さんや家族に対して、医師やその他医療従事者に対して、自分のやったことに対して、いつも誠実に向き合っていきたいと考えています。

温かいサポートで女性に優しい職場環境

 ニュージーランドで看護師として働き始めてみると、日本とは全く違い、とても働きやすいことが分かりました。電話対応は受付が、シーツ交換は看護助手がというように、病棟での仕事はきっちり分業制。看護師は看護の仕事だけに集中できるだけでなく、より専門性が高く難しい仕事を任されるのでやりがいもあるし、周囲からも専門職であることが認識されていることを嬉しく思っています。
 また、残業もなく、長期休暇も希望通りに取ることができる。仕事とプライベートを分けて充実した生活を送っているため、忙しい病棟でもみんなで声を掛け合いながらチームとして働けていて、職場の雰囲気もとても良いんです。
 日本の看護学校や職場で受ける新人教育は、精神的に追い詰められるような厳しいものでした。それに比べると、ニュージーランドで働く看護師たちは誰に対しても優しいという印象があります。
 私は今、結婚をして小さな子どもがいます。妊娠した時に「職場に迷惑を掛けて申し訳ない」と思ったのですが、職場の仲間たちは心から一緒に喜んでくれて。「赤ちゃんは大丈夫?」「体調は?」と常に気に掛けてくれて、当然のように力仕事を代わってくれるんです。子どもができても働きやすいのは、周りからの温かいサポートがあるからです。それはニュージーランドならではだと感じています。

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家族に感謝 看護師として働き続ける

 私がニュージーランドで看護師になることができたのは、日本にいる家族の協力と応援があったからです。渡航後に知り合い結婚した夫もとても理解のある人で、私の仕事のために専業主夫をしてくれています。子どもを育てながらでも、不規則な生活リズムの看護師という仕事を続けられているのは夫のお陰なんです。
 もう5年以上今の職場で働いていますが、同じ環境であっても、新しい気付きや学びは毎日のように出てくるもの。今の自分にはまだまだ満足していません。もっといろいろなことを勉強したいし、もっと仕事ができるようになりたい。幅広い知識と技術を身に付けて、どんなことでも冷静に対応できる看護師になるというのが、日本にいる時から少しも変わらない私の目標です。看護という仕事がとにかく大好きなんです。生涯一看護師でいたいと思っています

カテゴリ:Career Interview
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