Vol. 199 特集

セミ・ファームライフを楽しみながら生きる 泉澤舞子さんインタビュー


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 高校留学がきっかけでニュージーランドに移住した泉澤舞子さんは、結婚、出産を経て、現在子ども3人の育児に奮闘中。都会ではないけれど、田舎でもない。自給自足ほどではないけれど、できる範囲でやってみたい。そんなセミ・ファームライフを送る泉澤さんに、お話を伺いました。

泉澤舞子(いずみさわ まいこ)さん

神奈川県出身。18歳の時に高校留学でニュージーランドを訪れたことがきっかけで、移住。就職やワークビザの取得、結婚、出産を経て、「子どもには小さなうちから自然と触れ合い、視野を広げてほしい」という思いから、現在は家族5人でセミ・ファームライフを満喫中。

単身留学 意識の高さに驚く

 私は日本の学校からニュージーランドの高校のYear 13に編入したのですが、ニュージーランドという国は当時から、"Tidy Kiwi"や"Green New Zealand"、"Clean New Zealand"といったスローガンを掲げていて、とにかく環境問題への意識が高いのだという印象でした。
 私が通っていた学校でも何か悪いことをすると、ディテンション(罰則)としてごみ拾いをさせられたりしていましたし、ニュージーランドでは子どものうちから環境に対する教育が当たり前になされているんです。
 一つの地域に2、3軒ものオプショップがあったりして、世界的に見ると南半球の小さな島国であるニュージーランドは、ほかのどの国よりもエコやリサイクルの問題について真剣に取り組んでいます。
 また、当時は私も高校生だったということもあり大して気にしてはいなかったのですが、自分の健康や直接口に入る食べ物のことを気にしている人の割合も、日本人よりも多いという風に感じました。
 例えば、野菜はマーケットでちゃんと選ぶだとか、そういったちょっとしたところがすごいなと思っています。

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自然と触れ合い視野を広げる教育を

 ニュージーランドで家族ぐるみでお付き合いをしている人たちがいて、一度日本に招待したことがあります。その時、一緒に東京ディズニーランドに行ったのですが、「子どもたちがはだしになれない」ということがとてもストレスだったようで、驚きました。
 確かに、今ではうちの次女も靴を履くのが大嫌い。対して、日本から私の両親がやって来てはだしの子どもたちを見ると、「靴を履かせないのは可哀想」と言います。でも本当はどちらの方がより良い・悪いということではなくて、ただ単にニュージーランドと日本では常識や習慣が違うというだけ。
 これは環境の違いから互いに麻痺している部分で、私にとっては、ニュージーランドの方が子育てをしたいと思える国なんです。
 ニュージーランドでは、小さい時から土で遊んだり、動物に触ったりすることができます。私は移住してきた20歳前後の時にようやく自然と触れ合うことを覚えましたが、生まれた時からそのように恵まれた環境にいる私の子どもたちは、もっと視野の広い人間に成長してくれることでしょう。
 大変なことは多々ありますが、ニュージーランドでの子育てにはメリットしかない。そう思っています。

世界中で話題のKombucha

 ニュージーランドで郊外に住んでいると、誰もがその土地で暮らしていくための知識を持っているのでいつも驚かされます。
 例えば、「コンポスト」。コンポストとは、枯葉や家庭から出た生ごみを微生物の力で分解発酵させて堆肥を作ることをいうのですが、普通の主婦や友人、近所の人など、本当に誰でもそのやり方を知っているんです。だからいつも詳しい人から教えてもらっています。
 それから、「Kombucha」という飲み物をご存知でしょうか。「コンブチャ」と読みますが、これは「紅茶キノコ」のことで実は日本語ではありません。紅茶に砂糖を溶かしたものを紅茶キノコに与えれば、Kombuchaの出来上がり。
 瓶を煮沸消毒しなければならなかったり、飲めるようになるまでに1~2週間ほど時間を置かなければならなかったりと意外と手のかかる部分はあるものの、簡単に始められる手軽さから、大量に作っている家庭がたくさんあります。
 Kombuchaの中にはさまざまな善玉菌が入っているので、健康に気を遣っている人におすすめ。紅茶キノコといえば40年ほど前に日本でも大流行したようですが、今は海外セレブや日本で活躍するモデル、芸能人などが愛飲しているとして有名です。飲み続けていれば、医者いらずも夢ではないかもしれません。

食べ物が体を作る 食生活の見直し

 ニュージーランドにいる人たちと同じように自分の健康を気遣うようになったのは、1人目を妊娠した時です。
 高校を卒業してからというもの、飲食店をはじめいろいろな仕事を経験してきたのですが、結婚後も継続して夫婦共に働いていたということもあり、食に関しては手近なところで済ませることがほとんどでした。それまでは自分たちだけで良かったものが、妊娠すると摂取した栄養が全て別の人間に行ってしまう。「無責任なことはできない」と思ったことをきっかけに、食生活を一から見直すことにしたんです。
 自分も意識するようになって初めて、学生時代に滞在したホームステイ先のホストマザーが積極的にドライフルーツを摂取したり、ナッツ類を食べたりしている理由が分かるようになりました。数年越しにようやく、学校でもみんな普通に生野菜をランチボックスに入れて持ってきたりしていたのは、「そういうことか」と。
 ホストマザーも口癖のように毎日言っていましたが、まさに「You are what you eat.」という言葉がぴったりの国です。

新世界に挑戦 失敗から学ぶ

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 芝のメンテナンスをしてもらうため、羊を放牧しています。今の家に引っ越してきた時に4頭まとめて買ったのですが、ファームライフ初心者ということで値段の相場がいまいち分かっておらず、通常1頭80ドルのところ、250ドルも持っていかれてしまったんです。
 つまり4頭で1,000ドル。隣に住んでいるファーマーによると、これは新しいコミュニティーに入ってきた私たちへの洗礼ということです。こうして失敗を繰り返しながら、学んでいくものなのだと。
 それから1年足らず、今は子羊も生まれて家族が増えました。そのうちの一匹は、動物の世界では良くある話だそうですが、育児放棄をされてしまったんです。そのためしばらくは家の中で哺乳瓶でミルクをやって育てていて、その時に羊は懐く生き物なのだということを知りました。名前を呼ぶと近寄ってくるのが本当に可愛いんです。
 あとはニワトリも10羽ほど飼っていますし、家庭菜園ではこの前、ジャガイモとサツマイモを育てたりもしていました。ほかにも、バナナやレモン、グアバ、ビワ、柿といったフルーツの木もたくさんあって、中でもプラムは昨年、1本の木から50キログラムもの実が収穫できたんです。
 家で取れた果物は当然家族だけでは食べきれず、友達におすそ分けします。するとそれがジャムやケーキになって返ってきたりするので、気分はさながらわらしべ長者といったところ。そこに昔の日本のような温かさを感じます。

「セミ・ファームぐらいがちょうどいい」

 動物を飼い、野菜や果物を育てたりはしていますが、あくまでもこれは全部自分がしたいと思える範囲でやっていること。
 もしかしたら都市から離れた場所で暮らしている人の中には、完全な自給自足で生活している人もいるのかもしれませんが、今私が住んでいるオークランド郊外の地域は、車を使えば海まで5~10分、市内までも30分ほどとアクセスが良く、都会と田舎、どちらの雰囲気も併せ持っています。
 そうして地域のコミュニティーに所属しなければならない以上、また、自分のモチベーションを維持するためにも、今はこれくらいのセミ・ファームライフがちょうどいいと思っています。

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