Vol. 200 特集

特集2:2018 JSANZ Tertiary Japanese Language Speech Contest(3位)


※スピーチ原稿、コメントは原文のまま掲載しています。

第3位

Vincent Nicoll-van Leeuwen(Ara Institute of Canterbury)
「太宰治と私 文学と私」

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 2011年のカンタベリー地震が起きた時、私は高校生でした。地震の後、学校内の雰囲気がたいへん変わり、生徒も先生も、皆ずっと落ち込んでいました。私もそうでした。そして、大学に進学するか、働くか、どうするか決めなければならない時期がやってきました。その時、地震後に高校を中退した友達が現れました。

 彼は高校中退後、就職もせず、お酒に溺れ、悪事を働いたり、毎日毎日遊んでいました。私は高校最後の年という大事な時期に、その世界に引きずられていきました。それから、だんだん登校しなくなり、その友達のようになりました。そこで、久しぶりに、高校をやめずにずっと勉強を頑張っていた親友に会った時、文学が大好きな彼はリュックから本を出し、「これ読んで」とだけ言い、私に本を渡しました。

 それは太宰治の人間失格という小説でした。私はそれまで文学にあまり興味がありませんでしたが、彼がいいと言うなら、読んでみようと思いました。この小説は、主人公の男が青森県から上京し、悪友にお酒、タバコ、売春婦、左翼思想を紹介され、人生を苦しみ、薬物中毒になったすえに精神科病院に入院する話です。

 最初から最後まで私はこの小説に魅了させられました。「まるで私のために書かれているみたいだ」と思いました。なぜそう思ったかと言うと、主人公の他人に対しての考え方や、学校や家族などを気にせず、悪友と夜遊びばかりするといったところに自分が重なって見えたからです。

 ところが、その時、まだ知らないことがありました。それは、この小説は単なる作り話ではないということです。私は何も知らず初めて読んだ時、これは太宰治がただ人間をよく分析し、リアルな主人公や世界を上手に作り上げた作品だと思っただけでした。しかし、実は、太宰治は自分の人生に基づいてこの小説を書いていたのです。ただ、彼の人生とは大きく異なる部分が1つあります。

 物語の中では川に飛び込み、死のうと思った主人公は結局死ねません。しかし、実在した太宰治は人間失格を書き終わったわずか1ヶ月後に、愛人と川に飛び込み、自殺をしてしまうのです。私はこれを知った時、恐怖を感じました。この小説が彼の自伝だというなら、私も将来彼のように自ら死を選んでしまうのではないかと思ったからです。

 そして、前向きで明るい人として知られていた彼でさえ、お酒や薬物によってそんな恐ろしい結末を迎えるなら、もうやめよう、他に生きる道を探そう! と思いました。つまり、太宰治の人間失格が私を目覚めさせてくれました。大事な時期に、希望がなくなっていた高校生の私を救ってくれたのです。

 今もこの小説は悩んでいる若者の間でとても人気があり、私のような人を救っているでしょう。もし太宰治自身がこの小説を読んで、私と同じ気持ちを感じたとしたら、最後にあのような恐ろしい手段で自分の命を絶たなかったのではないかと思わずにはいられません。最後に、彼の名言で今日のスピーチを終わりにしたいと思います。

 一日一日を、たっぷりと生きて行くより他は無い。明日のことを思いわずらうな。明日は明日みずから思い煩わん。きょう一日を、よろこび、努め、人には優しくして暮したい。

 ご静聴ありがとうございます。

受賞コメント:

JSANZのコンテストで3位を取ることができて嬉しいです。いつも応援して下さるAra工科大学の先生へ心から感謝しております。スピーチを作成するのにとても時間がかかり、発表した時、たいへん緊張していましたが、参加して良かったと思います。正直に言わせて頂ければ、優勝できなかったのが本当に悔しかったですが、今後も勉強を続け、向上していきたいと思います。

第3位

Vanessa Tubman(Massey University)
「日本人ハーフの二重国籍の悩み」

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 みなさん こんにちは。今日は日本のについて少しお話したいと思います。
 私の名前はVanessa Tubmanです。三人兄弟で、弟が二人います。私たちは日本人の母とNZ人の父との間に生まれ、NZで生まれ育ったハーフです。弟の一人は日本人ですが、もう一人はNZ人です。なんか変ですよね。

 日本人と外国人のハーフは21歳までは国籍を二つ持つことができるのですが、21歳の誕生日が来ると、国籍を一つにする必要があるのです。下の弟は21歳になり、ニュージーランド国籍を選びました。大学卒業後日本のJETというプログラムに応募して、日本の学校で英語のアシスタントとして仕事をすることを決めたのです。実はこのプログラムは日本人はすることはできないため、彼には選択のはありませんでした。

 上の弟は、国籍に関してとても悩んでいて、なかなか選ぶことができませんでした。結局彼も仕事の都合で日本国籍を選択することにしたのです。二人とも仕事の都合でおい違う国籍を選ぶことになったのですが、「できれば両方の国籍を持っていたかった」と、一つの国籍を選ばなければいけないことにとても悩んでいました。

 実は、私も同じ気持ちで、のとても苦労をしました。私達ハーフにとって、国籍を一つだけ選ぶというのは簡単な事ではありません。父の国、そして母の国どちらかを選び、もう片方を捨てるという事はできないのです。

 母方の親戚はみな日本に住んでいます。NZのはもういなくなり、母方のはだんだん年を取ってきていて、とても心配です。日本にいる祖母は私にとってはたった一人の「おばあちゃん」なのです。そして、祖母にとっても孫は私達3人だけなのです。そしてNZには私達の父がいます。

 私達にとってとても大事な家族は両方の国にいます。これからの長い人生でもしかしたら日本に住むことになったり、NZに戻ってくる必要もあるかもしれません。私はどちらの国も大事なだと思っています。それなのに、「どちらかの国をえらべ」とせめられるのは、とてもつらい事です。今回日本人として生きていくと決心した弟はNZ生まれのNZ育ちで、を終えるまでここに住んでいたにもかかわらず、いつかNZに戻ってきたくてもその時は外国人として戻ってくることになります。

 しかし日本では、二重国籍をもつことは許されていない。二重国籍はそれだけで犯罪なのでしょうか。私達のように日本人のハーフである、二つの国籍を持つことはどうして許されないのでしょうか。日本の二重国籍について少し調べてみましたが、いろいろな意見が書いてありました。

 中には、スパイとかテロのを書いているものもあり、かなりショックでした。国の安全はもちろんとても大事ですが、国籍を二つ以上もつこと=犯罪だとは思いません。今はの時代です。これから、世界はどんどんグローバル化していく中、国際結婚も増えると思います。ハーフとして生まれてくる子供たちも増えますよね。

 将来、日本の法律が変わって、私達のようなハーフがデメリットではなく、メリットのある存在としてもめて受け入れてもらえる日が来るのをっています。

 私はニュージーランド人であり、それと同時に日本人です。

 ありがとうございました。

受賞コメント:

3位入賞する事ができて嬉しいです。会話とは違い、スピーチを書くのはいろいろ大変でした。また、人前でのスピーチは初めてだったので緊張しましたが、とてもいい経験になりました。これからも日本語が上達するように努力を続け、将来はニュージーランドと日本のかけ橋になれるような仕事ができたらいいと思っています。

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