Vol.19 Career up in NZ ニュージーランドの花屋へ就職


映画館やレストランが集まっているエンターテイメントスポットのIMAX。
その1階にあるフラワーショップMOOA FLOWRISTでマネージャーを務める大竹美佳さん。この国に来た当初も、そして今も英語が苦手だという。しかし日本で得たフラワーデザイナーの経験や技術で苦手な英語をカバーして、花ざんまいの生活を楽しんでいる。

ニュージーランドの花屋へ就職。フローリスト大竹美佳さん

大竹 美佳 :Mika Otake
MOOA FLORIST マネージャー: MOOA FLORIST Manager

70年生まれ。千葉県出身。アパレルデザイナー系の専門学校を卒業後、経理の仕事に就く。その後フラワーデザイナーの講師の資格を4年かけて取得し、フラワーショップ、カルチャースクール、ホテルのウェディングの仕事をする。そして、2000人の応募の中から選ばれた4人のうちの1人として、東京ディズニーリゾートの「アンバサダーホテル」の立ち上げに参画する。その後ニュージーランドへ。現在は毎週、ANZCentreビルの本部受付の花を創っている。

日本では学校を卒業してから住宅会社の経理で働いていました。入社して2年目くらいで、仕事にマンネリ感が出てきたときに、自分に自信の持てる仕事をしたいと思いはじめました。そんなとき、ちょうど会社の隣のビルでフラワーデザイナーの学校があるのを見つけたので、これだと思って衝動的に入学したのです。通い始めて3、4ヶ月経ったとき、勤めていた会社を辞めました。花の勉強をするからには仕事の時も花に触れていればもっと多くのことが吸収できると思ったからです。それで生花店でアルバイトをするために電話帳で上から順番に問い合わせをしていきました。
花屋というのはどこも、スタッフが何人も必要なくらいに忙しいと言うわけではありません。ですから、アルバイトとは言え、未経験者が簡単に仕事を探せるものではありませんでした。しかし、なんとか雇ってもらえるところを見つけアルバイトを始めました。当時はバブルの頃だったので普通のアルバイトの平均時給が千円前後だったにも関わらず、私は620円からのスタートでした。

こうして、花の世界に足を踏み入れた美佳さんは4年をかけて日本フラワーデザイナーズ協会が認定する講師の資格を取得した。

ここを卒業した人は、そのまま先生になったり、ショップで働いたり、ウェディングやレストランの企画をしたりと、方向は多岐にわたりますが、花に関することを仕事にしていきます。私も卒業後、フラワーショップで3年ほど働きその後カルチャースクールの講師をしました。
しかし、ウェディングの世界に強く惹かれていたのでホテルの中にあるフラワーショップで働くことにしました。そこでは色々な経験をさせてもらいました。自分の背丈くらいの壷にお花を生けるときなどは、直径20センチ、高さ3メートルもあろうかという木を取ってきて、それを壷に入れて芯をつくり、そこへ網を張ってお花を絡ませたり、針金で止めたりして創っていきます。こういった作業をしているときに、この仕事は肉体労働だと感じました。
そこで数年働いた後に、新規に建設されるホテルのオープニングを手がける仕事が決まり、そちらの職場に変わりました。こういった新しい仕事の情報はセリの市場などで得ていました。「今度どこそこで、なになにがあるから問い合わせてみたら」と卸し業者の人や市場の人が教えてくれたのです。セリ市場の人たちは厳しい人が多かったのですが、その分、こちらが誠意をもって接していれば優しい人たちでもありました。
この新しいホテルの立ち上げの仕事では、仕事を任されたということだけでなく、時給620円から始まった収入の面でも自分なりに充実感を感じていました。

そして01年3月に美佳さんはワーキングホリデーでニュージーランドに来た。

どうしてもニュージーランドで、もっと正確に言うならばミッションベイで暮らしてみたかったというのがワーキングホリデーでこの国に来た理由です。以前に旅行で初めてこの国に来たときに偶然行ったところがミッションベイのビーチで、その雰囲気が忘れられなかったからです。他にも色々な国を訪れたことがありますが、住んでみたいと思ったのはこのミッションベイだけでした。それで年齢的にワーキングホリデーがギリギリになったこともあったので、思い切って仕事を辞めてニュージーランドに来ました。

美佳さんは日本での経験を生かしてIMAX内のフラワーショップMOOA FLORISTでの仕事を見つけた。

この国に来たからには生活をしたいと思っていました。私にとって生活をするということは仕事をして収入を得るということです。そのため、来てすぐの頃、偶然ここの募集広告を見つけてすぐに応募しました。日本で経験があったので、幸いにもすぐに決まりましたが、採用が決まってから実際に働き始めるまで2ヶ月ほど時間が空きました。そこで、その間に英語を勉強しようと語学学校に通いました。しかし、これまで英語とはかけ離れたところにいた人間が1ヶ月足らずで話せるようになるわけがありませんでした。結局、英語ができないまま、仕事を始めることになりました。
ここは小さなショップです。一度に2人、3人で働くことはありません。常時、お店には1人だけですから私も仕事の初日から1人で店に立つことになりました。時間帯は午後の5時から10時まででした。1年間、この時間が私のシフトでした。初日は、とにかく英語が恐くて仕方がありませんでした。絶対に誰も声をかけないで欲しいと思って下を向いていたような気がします。しかし、実際にお客さんが来れば、そんなことを言っても誰も助けてくれる人はいないので、シドロモドロになりながらも、なんとか対応していました。
しかし、これではいけないと思い、店に立つ時間以外を利用して英語を勉強することにしました。といっても日本でお店に立っていたときにお客さんとしていた会話を思い出したり、自分がお客さんだったらどんなことを聞きたいかを考えて、それらを英語に直して実際に店で使ってみたりと、まったくの独学でしたが、自分からお客さんに会話をする機会を作るようにしました。

日本人とニュージーランド人の感覚の違いも、美佳さんが戸惑いを感じたことの一つだった。

これは私だけでなく、多くの人が感じていることだと思いますが、花の色の組み合わせの感覚が日本とこの国では大きく違います。日本では同系色で揃えるのが普通ですが、ここでは反対色をよく使いますし、お客さんからもそういったリクエストを貰います。また日本ではツボミを買っていく人が多いのですが、キウイは今一番キレイな状態で咲いている花を買っていきます。こういったことは見慣れないことだったので、いいのかなあ?と思いながらも仕事をしていました。

その後、美佳さんはワークビザを取得しマネージャーとしてショップの運営を任されることになった。

朝の9時半から夕方の6時までが今の勤務時間です。市場から花を仕入れたときは朝一番で、その処理をして店頭に並べて商品を作ります。花の高さや向きを揃えたり、配色を考えることが大切です。 そしてもう一つこのショップでのディスプレーのポイントがあります。それはお客さんが手に取りやすいように花を筒の中に入れることです。このお店には冷蔵庫は無く全て店先に花が並べてあるので、お客さんは自分が欲しい花を実際に筒の中から抜いて私のところに持ってくる人が多いのです。その際に花が傷つくことなく、スムーズに抜けるように入れることも必要になってくるのです。
私達の仕事は、こういった準備をしている時間が実は一番忙しいのです。実際にお客さんが来ているときは売るだけですから、その対応だけです。如何にお客さんを呼ぶディスプレーをするかが大きな勝負どころです。また、常に店の全体を注意してみることも当然必要です。例えば、花びらが一枚でも床に落ちていたらその花は古いと思われて絶対に売れません。

オーナーから大きな信頼を受けている美佳さんは、オーナーの代わりにセリに行くことも多々ある。

セリ市場が一番苦労しています。セリは朝の6時くらいから始まります。会場は私達のような仕入れの人間が座る場所がひな壇になっており、全体としては劇場のようになっています。そこの各座席には番号が書いてあり、ショップに割り当てられた自分の番号の席に着きます。そしてその席にあるボタンを押して、花を競り落としていきます。
花は大きな台車に乗って出てきます。そこにいくつも花がバンチ(束)になって置いてあり番号がついていて、セリはその番号順に進んでいきます。例えばバラであれば1バンチが10本です。そして、1バンチ20ドルくらいからスタートして段々と値が下がっていきます。そして、最初にボタンを押した人がその花を競り落とせるのです。バラの相場は通常、7、8ドルですから、そのあたりで、どのタイミングでボタンを押すかという駆け引きがここでは繰り広げられます。売れない商品は50セントまで下がることもあります。こういった方法は日本と同じでしたので、初めて市場へ行ったときでも対応できました。ただ、やはり英語がつたなかったことと、見た目が幼く見えたのでしょうか、最初のうちは、どうしてここに子どもがいるんだ?みたいな目で見られていました。
日本でもここでも同じことですが、市場では季節や天候によって花の数や種類が少なくなる場合があります。そういった時は、日本に比べてセリ市場の規模が小さいニュージーランドでは、少し気を抜いていると大手の業者に大量に買い占められ、仕入れが全くできなくなってしまうこともあります。日本ですと、どこかに多少、余っているということもありうるのですが、ここではあり得ません。ですから、お客さんからの注文で花が指定されているときは、いつもより早く市場に行き、商品を確かめ、早めにセリ落しのボタンを押さなければ、商品を手に入れられませんので非常に緊張します。

今は色々なことを試行錯誤しながらお客さんと触れ合うことを楽しんでいるという。

ブーケの値段設定や、ラッピングの方法を少しずつ変えて、自分のスタイルを作ってきました。またリサイクルも始めました。冷蔵庫がないため、花は仕入れてから3日くらいで売り物にならなくなってしまうものもあります。それらは通常、捨てられてしまうのですが、そのまま捨てずに花びらを取り、乾燥させてポプリにして店に並べました。すると、これが結構よく売れたりしました。
また、生け込んだ花を企業や学校に持って行くという注文も受けています。その中の一つに、アルバートストリートの、ちょうどスタンフォードホテルの向かい側の角にあるANZ Centreビルの中にあるANZ銀行のグループ・ヘッドオフィスの受付の花をデザインする仕事があります。私がこのショップに入る前から決まっていた仕事でしたが、先方の本部移転の関係でキャンセルになってしまいました。ところがその後、受付の女性が私のことを覚えていてくれて、連絡をもらい、3月から毎週、受付の花を再び担当することになったのです。そのビルの近くにもフラワーショップがいくつもあるにも関わらず、少し離れた場所にあるウチの店に連絡をくれたのは大変有りがたいことでした。
ここの花を創るときは、ダークブラウンの壁の色、少し高めの天井というその場の雰囲気に映えるように明るく、大きく花を組み合わせます。また、日差しが良く当たる窓際に置かれることも考えて、なるべく長持ちする花を選ぶようにしています。この仕入れ自体は店頭に並べる花と基本的には変わりはありませんが、長持ちすること、背の高い花にすること、花の顔が大きな、ヒマワリやユリ等を仕入れます。このオーダーは毎週の事なので、花の種類にバリエーションがない時期は色で変化をつけたり、全体の形を三角にしたり、四角にしたり、また三角、四角スリムにしたり、広げたりの応用で変化をつけています。先方からは、全て任せるから自由にアレンジしてくださいという形で注文を受けているのですが、強いて言えば鮮やかな花が、例えば、濃いピンクの花などはゴージャスだと言って喜ばれます。
今では毎週のように花を買いに来てくれるお客さんも増えてきました。日本であればキャリア的にも年齢的にもきっと、事務処理などのデスクワークが中心になっていただろうと思いますが、私はショップという現場にいることが好きですし、それができるニュージーランドで改めてこの仕事の楽しさを実感しています。

カテゴリ:フローリスト
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