Vol.67 時代を飾るキウイ ニュージーランドの料理学校NSIA校長


IT、児童英語教育法、環境学、芸術など、ニュージーランドで学び、体得できる技術は多種多様にある。そのなかでも最も人気のある分野の一つといえるのが、ホスピタリティだ。この国にはもてなしの精神が息づいているため、サービス関連の勉強をするには最適な環境が整っている。また、ホスピタリティ業界は 求人が豊富なので、卒業後すぐにジョブオファーを獲得できるチャンスが多いことも大きな魅力なのだ。ニュージーランドで英語をマスターし、さらにホスピタリティの資格を取得すれば、この国や日本はもちろん、世界各国に活躍の場が広がるだろう。
ニュージーランド国内にはいくつものホスピタリティ専門スクールが存在し、それぞれに高い評価を受けている。そのうちの1校が、オークランドのノースショアに位置する「ノースショア・インターナショナル・アカデミー(NSIA)」。この学校の校長を務めるオットー・グローエンは、ヨーロッパでホテル業、日本とニュージーランドでフード・ビジネスに携わってきたエキスパート。同校のトレーニング・カリキュラムには彼のホスピタリティ産業に対する情熱と長年の経験が存分に活かされており、2004年の開校以来、優秀な人材を輩出し続けているという。
「人々を幸せにすることがホスピタリティ・ビジネスの醍醐味」と語るオットーに、お話を伺った。

調理・ホスピタリティー専門学校 NSIA校長【Profile】
オランダ生まれ。1952年にニュージーランドへ移住し、レストラン、食品貿易業、ホテルなど、ホスピタリティ業界で活躍。1968年に初来日し、70年開 催の日本万国博覧会でニュージーランドスタイルのレストランをプロデュース。アメリカを代表する放送局CBSの衛星ライブ中継で、米国全土に紹介されるほ どの成功を収める。2004年にホスピタリティ専門学校「NSIA」を開校。05年に調理師資格コース、07年にパティシエ資格コースをそれぞれスタート した。余暇は自宅近くのビーチで2人の孫と遊ぶのが楽しみという。

編集部注:Otto Groenさんは2010年8月10日にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

公式サイト http://www.nsia.ac.nz

ロマンを求めてニュージーランドへ

僕はオランダで生まれ育ち、1952年に冒険を求めてニュージーランドへやってきました。当時は学校を卒業したての若者でね、広い世界を見て回りたいという気持ちがあったんですよ。ニュージーランドを選んだのは、ヨーロッパから最も遠い場所だったから。地球の果てまで行きたいって考えたんですね。だって、 すごくロマンティックでしょう?
オークランドに到着してまもなく、ホスピタリティ業界で働く機会を得ました。家族がオランダでホテルを経営してい たので、もともとこの業種には馴染みがあったんです。そして2年後の1954年に自分のレストランをオープン。この店はニュージーランドで初めてアルコール販売のライセンスを持つ高級ダイニングレストランになりました。

おいしい料理をワインとともに提供できたら最高だと思ったのですが、その頃、この国では飲食店で酒類を出すことは許可されていなかったんです。そこでウェリントンの政府機関に何度も通って交渉してね。前例がないものだからライセンス取得までに7年間もかかり、苦労もしましたが、諦めないで本当によかった。僕は今でもそうなのですが、ホスピタリティ業界、特にフード・ビジネスに情熱を燃やしていて、この分野でほかの人とは違う、独創的かつ画期的なことを成し遂げたいという夢を抱いていたんですよ。ですから、パイオニアになれたのは感激ですし、このことで外食産業の活性化に貢献できたと自負しています。
それ以後も業界で精力的に働いた功績が認められたのでしょう。1968年には ニュージーランド食肉委員会の代表者に選出され、70年に大阪で開催された万国博覧会参加のため、日本へ行きました。ニュージーランド・パビリオン内に開くレストランのプロデュースを任されたのです。

ニュージーランドをテーマにしたレストランですから、料理の内容、つまり味覚だけではなく、五感の すべてでこの国を知ってもらえるような空間にしようというプランを立てました。店名は「ガイザールーム」として、その名の通り、ガイザー(間欠泉)をイメージした内装に仕上げまして。店内のものはカーペットからテーブル、イス、プレート、カトラリーにいたるまで全部ニュージーランド産で統一。もちろん食材もラム、ビーフ、クレイフィッシュなど、ほとんどニュージーランドから仕入れました。
僕の自信作となったガイザールームは、お陰様で盛況でね。連日、行列ができるほどの繁盛振りで、大成功を収めました。日本の皇室の方々をはじめ、各国のロイヤルファミリーにも数多くお越しいただいたことも、忘れられない思い出ですね。

日本との深い関わり

僕は万博が閉幕した後もしばらく大阪に滞在し、日本の方々と協力してニュージーランドの食材を日本市場に紹介する貿易企業を興しました。トップトレーディングという株式会社で、今も大阪本社のほか、東京、札幌、インバカーギル、フランスのリヨンにそれぞれ支社を持っています。この会社でニュージーランドか ら日本へ、ラム肉の輸入販売を始めたのです。
ガイザールームの準備をしていた頃、「日本人は羊の肉を食べない」と聞かされていたのですが、実際にレストランでラムのメニューを提供すると、たくさんの人々がおいしいと言って喜んでくれたんですね。ですからこれは売れるんじゃないかとひらめいたんですよ。
それからも、日本とはさまざまな形で深く関わってきました。例えば1984年から日本テレビ系列で放映された料理番組『SEIKOグルメワールド・世界食べちゃうぞ!』のロケをお手伝いしたりね。当時、僕はピーハにビーチハウスを所有していたので、司会の関口宏さん、出演者の萬田久子さんのほか、スタッフの方々をそこへお招きして、海を眺めながら鉄板焼きを作ったんですよ。

日本の食品関係の方々がニュージーランドへ会議や視察にいらした際も、アシストさせていただきました。僕自身も出張で頻繁に日本へ足を運び、ほぼ全国を回りましたよ。日本人は親切だし、和食が大好物なので、何度訪れても飽きることはありませんし、またすぐに行きたくなりますね。
国際文化交流で最も大切なのは、その国の食をいかに楽しむかだと思うんです。食文化を理解すると、その国の人々の暮らしや気質も見えてきますからね。僕は日本の食を心から堪能し、日本に素晴らしい友人もたくさんできましたよ。
2004年にはこれまでの経験をもとに、ホスピタリティの専門学校「NSIA」を設立しました。友人のエディから「語学学校を開くので協力してほしい」と声をかけられたのがそもそもの始まりだったのですが、僕自身のバックグラウンドを活かした学校を開きたいと考えるようになってね。また、ニュージーランドにはもてなしの心が生きてはいるけど、サービスの質はまだ発展途上だから、業界のためにも優秀な人材を育成したいと思ったんです。
開校からまだ3年ですが、卒業生は高い就職率を誇っていますし、僕の理想としている学校の形に、確実に近づいてきていますね。今年の10月に新しい校舎をオープンする予定ですが、そこには大きな厨房を5つ用意し、最新の調理器具も備えますから、より実践的なカリキュラムが組めるとわくわくしています。

第一線で活躍できるプロを育てたい

僕は、ホスピタリティは世界最大の産業だと信じています。なぜなら誰でも食事をするし、旅に出かけるでしょう? ほとんどの人の生活に関係のあるビジネスなんですよ。また、常に人手不足で求人があることも特色ですね。こんなにいい業界は、ほかにはないんじゃないかな。世界経済の成長にともない、今後はもっと旅行者も増えるでしょうから、さらなる人材が求められることは間違いありません。
僕がホスピタリティ産業を愛し続けているもうひとつの理由は、この仕事が人種や国籍に関係なく、人と人とを結びつけ、幸せにすることができるからなんです。おいしいものを食べたり、一流のサービスを受けたりした時、幸福感で満たされますよね。特に海外へ出かけて、心の温まるようなおもてなしをされたら、その国の印象はグンとよくなるはずです。

旅でも食事でも、結局は「人」が大事なんです。そしてサービスをした側も、お客様から感謝の言葉をいただいくとモチベーションが高まりますよね。仕事をする方も、商品(サービス)を受ける方も、どちらも一緒にハッピーになる......これは本当に素敵なビジネスですよ。
NSIA は、そんな最高の業界の第一線で活躍できる技術を身につけてもらうための学校です。資格が得られる、卒業すると永住権申請に有利になるなど、当校にはさまざまな利点がありますが、一番力をいれている点は、能力を最大限に高めることなのです。仕事はその人の一生を左右する重要なものだから、将来の可能性を広げられるスキルを学んでほしいのです。

日本は食もサービスも非常に水準が高いですよね。それに日本人は細かな気配りに長けていますから、潜在的に ホスピタリティ業務に向いているといえます。ただ、日本国内では海外からのゲストと接する機会が豊富とはいえないでしょう。日本人の学生が弱いところは、 そこです。ですから多民族国家のニュージーランドに来て、インターナショナルな環境でトレーニングを積めば、世界中のどこでも通用するようになるでしょう。事実、現在、当校には32の異なる国籍を持つ学生が在籍していて、とても国際色豊かです。この学校が僕の大好きな日本の人々の役に立てたら嬉しいですね。

※NSIAでは、マフティ(一種の募金方法)によって集めた食料を、地元のサルヴェーションアーミー(Salvation Army)寄付することによる慈善活動もおこなっている。

カテゴリ:ホスピタリティ
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