Vol.35 Career up in NZ ニュージーランドでヘリコプター免許を取得


ニュージーランドのヘリコプターパイロットは、ヘリスキー、雪崩の監視管理、ヘリフィッシング、ヘリハンティング、家畜の管理、各種観光ツアー、航空写真撮影など幅広い活動を支えている。クライストチャーチ国際空港に隣接しているChristchurch Helicoptersで誠さんは、インストラクターとして未来のパイロット達を育てている。

ニュージーランド・ヘリコプターパイロット 浦誠さんMakoto Ura
浦 誠
ヘリコプターパイロットインストラクター / helicopter pilot instructor
72年11月1日生まれ。横浜市出身。駒沢大学経済学部卒。96年3月、ニュージーランドへ渡航。大学卒業後、2年間のワークビザでお土産屋で働く。一年間クイーンズタウン、その後クライストチャーチへ。ワークビザ延長で合計3年半、お土産屋で働く。その間に永住権取得。その後日本とニュージーランドを行ったり来たりしながらヘリコプター免許を取得。2003年4月よりクライストチャーチヘリコプターズで働く。2003年9月よりインストラクターとしてフライトしている。

ニュージーランドに来たキッカケ

私は子供の頃から海外に強い憧れがありました。小、中学校の頃は海外が想像もつかないまったくの別世界に感じていました。 また、外国人が、宇宙人と同じくらい別の人のように思えました。その後、大学生になって東南アジアが安いし、比較的近いということから、一人でインドネシアやタイを旅行しました。そして、姉がワーキングホリデーでニュージーランドに来ていたことからこの国がのんびりしていて、いいところらしいとの話しを聞く機会がありました。それから大学の夏休みを利用して遊びに来たのです。
その旅行が初の英語圏の国ということもあって、空港から街に向かう途中、街の表示が全部英語ということがすごい格好良く見えました。また、夏真っ盛りの8月の日本を出発したのにニュージーランドは冬。それが不思議でした。この国ののんびりした雰囲気や、きれいな景色が、すぐに気に入りました。
日本に帰国してもその体験を忘れることができず、しだいに海外生活を経験してみたくなっていったのです。大学を卒業しても日本は就職難。当時やりたいことも特になかったということもあってニュージーランドに長期滞在することが、良い経験になるし、英語もしゃべれるようになるのではないかと思ったのです。 そして、幸い紹介からお土産屋でビザを出してくれる運びとなり、大学卒業後2年間の予定で渡航しました。

ヘリコプターライセンス取得へ

ニュージーランドに来てはじめの1年はクイーンズタウン、次の年はクライストチャーチのお土産屋で働きました。最初は英語が全くできず、お客さんの対応の仕方がわからなくて困りました。というのも英語は、中学で学び始めるまでまったくできず、中学、高校を通して一番の苦手科目でした。英語学校にも通ったことがないのでニュージーランド渡航当初は非常に戸惑ったのを覚えています。日本で全然勉強してこなかったのを後悔しました。ですが、場数が増えていくうちに英語にも慣れていきました。当時、会社は全く英語がしゃべれないのが入ってきてびっくりしていたと思います。
そして、2年間のワークビザの期限が近づいてきて、もう少し長くNZにいたいと思ったとき永住権の話を聞き、申請、取得したことがきっかけとなり、ヘリコプターのライセンスを取得しようと思ったのです。日本ではできないことに挑戦したかったのです。
ヘリコプターライセンスには自家用、事業用、定期飛行運送用と大きく3つに分かれます。インストラクターというのは免許ではなく資格となります。
私は、まず自家用のライセンスを取得するために学校に通うことにしました。そこではヘリコプターを操縦するために必要な専門知識を学んだり、実際にヘリコプターを操縦してインストラクターから訓練を受けました。
ヘリコプターで実際に飛んでいると管制塔との交信、他の飛んでいる飛行機の確認など、一度にたくさんのことをしなければなりません。川の上空を低空で飛んだり河原に着陸したり、飛ぶことに対する不安だとか恐怖はなく、飛べること自体を楽しみながらも必死で勉強していきました。
訓練を重ねて、免許取得のフライトテスト。国家試験を受けました。一つのミスで不合格になりかねないので一時も気を抜けません。とにかく今まで習ったことをその通りに出して、98年5月、自家用免許を取得することができました。

日本とニュージーランドを行き来しながら

自家用免許を取得後、私はタービン資格を02年8月、事業用免許を同年9月に取得しました。その間、資金の都合から日本とニュージーランドとの行き来を繰り返していました。日本でバイトして少したまったら戻ってくるという生活をしていました。その頃から仕事としてヘリコプターを操縦していたいという思いが強くなりよりいっそう勉強に励みました。
特に事業用免許取得のときに受けた学科授業は特に印象的で、3ヶ月間で6科目の国家試験を終わらせる超過密スケジュールのコースでした。朝9時から夕方までみっちりの授業。ついていくのがやっとで、帰ってからも予習復習です。土日もずっと勉強していました。ですが、自家用免許取得のときの学科勉強が独学だったこともあって、それまで英語学校に通ったこともない私にとって授業はこちらで始めての経験で新鮮でした。 Kiwiの生徒は積極的でどんどん質問したり、先生と生徒の間で、議論したりするのが日本の学校とは大きく違うと感じました。また、好きなことをやっているので学科授業もそれほど苦ではありませんでした。
その後、仕事探しでアメリカに行きましたが、ビザがないと厳しいと感じました。また9・11 のテロ以降セキュリティーも一段と厳しくなりましたから就職することは高いハードルとなっていました。そこでインストラクターの資格を取れば仕事の幅が広がるのではと思い、ニュージーランドでさらに経験を積むことにしました。就職保証などはないけど、とりあえずやるだけやってみようと、まさに賭けでした。そして、夜間飛行を03年7月、インストラクター資格を同年9月に取得することができました。

インストラクターとして就職

事業用のトレーニングを始めた頃から航空業界で働くのを希望していました。私は今の会社の設立当初からの生徒で、会社がどんどん大きくなったことからタイミングよく就職できました。この仕事は大変特殊な仕事なのでなかなか一般公募は行われません。当校の生徒から卒業後、そのままスタッフになるというパターンも多いのです。また、信用問題の点からまったく知らない人を雇うよりもリスクが小さいということから誰かの知り合いということもしばしばあります。私は生徒の時から、掃除とか、皿洗い、機体洗車など、なるべく会社の手伝いをしたり、学科もなるべく高得点で合格するようにしていました。そういった在学時からの積み重ねもあって仕事の話をもらうことができたのです。
いつもは8時から8時30分ぐらいの間に出勤しています。終わるのは5時から5時 30分です。日本人的考えでは、上司が残っているのに自分だけ帰るのは気が引けるので、最初は特にすることがなくても遅くまで残っていました。 インストラクターなので基本は生徒と飛ぶことが仕事となります。それ以外では、ホームページ作成、観光ツアーの企画、広告の仕事、問い合わせについてメールや電話での答え、日本人生徒さんについてはこちらでの生活のお手伝いなど多くの仕事があります。
フライトは天候に左右されるのでオフィスワークだけの時もあれば、ずっと飛びっぱなしの時もあります。

ニュージーランドのヘリコプター事情

ニュージーランドには約500機ヘリコプターがあります。人口に対するヘリコプターの数では世界一です。足代わりにヘリコプターを使う、というところまではきていませんが広大な土地があるので着陸場所には困りませんし、ヘリコプターには理想的な国です。山火事の際の消火活動、農薬散布、各種観光フライト、ヘリスキー、報道など使用事業は多岐にわたります。
ヘリコプターを使用する特殊な仕事では、フロストオペレーションというのがあります。ニュージーランドのワインは近年、有名になってきてますが、ブドウの栽培時期は10月から4月頃までです。10月と収穫時期の4月頃は朝晩冷え込むと氷点下になることがあり、ブドウが大きなダメージを受けることがあります。そのため、ブドウ畑に10メートルおきぐらいにストーブをたきます。暖められた空気は上昇するので、ヘリコプターでその上を飛んで、逆に上から下向きの風を送り込んで、ブドウ畑を暖めます。この作業は真夜中から夜明けまで続きます。眠いのと、ストーブの排気ガスのにおいと、暗闇での作業と、厳しい条件の仕事です。
他には雪崩れ防止のオペレーションがあります。新雪が降ったあとは雪が不安定になり雪崩れが起きやすくスキーヤーには危険です。そのため、わざと雪崩れを起こして雪を安定させます。危険そうな場所までヘリで飛んで上からダイナマイトを落とし、雪崩れを起こさせます。クリスマスから正月にかけて昨年は山火事が頻繁に起こったのでヘリで消火活動を行いました。
また、映画ロード・オブ・ザ・リングの影響もあってか、映画撮影がニュージーランドでよく行われており、今後ヘリコプターによる空撮も増えると思います。

パイロットを目指す人へ

航空業界は、日本でもニュージーランドでも就職状況は厳しいですが、空の魅力に取り付かれてしまったらなかなか抜け出せません。最初はパイロットとして飛べなくてもなんとかヘリコプターに関係した仕事をしていることでチャンスを見つけることができると思います。多少時間がかかっても、なんとしてでも仕事をゲットするという積極的な姿勢が大切です。
それから、飛ぶ技術もそうですが、それ以上に、コンピューターが得意とか、観光客を連れて来れる営業能力が優れているとか、いった他の能力があるといいと思います。
パイロットに重要なことは、準備を怠らないことです。飛ぶ前に完璧な準備をしておくことが良いフライトになるかどうかの決め手です。それと、状況に応じた適切な判断力。フライト中のハプニングは大事故につながる可能性があります。ミスのできない仕事です。常に完璧なフライトはできませんが、いかに危険要素を取り除くかいつも考えています。ニュージーランドは天候が変わりやすいので、フライト中に霧が来て戻れなくなったことや、前線が思ったより早く来て慌てて戻ったことはあります。やはり天候の変化が一番怖いです。今はトレーニングを中心に行っていますが、今後もっと経験を積んでレスキューヘリのパイロットになるのが目標です。

カテゴリ:技術職
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