Vol.60 時代を飾るキウイ ニュージーランドのランドスケープ・デザイナー


去る11月15日から19日まで、オークランド植物園にて、毎年恒例となった花と園芸の祭典「エラズリー・インターナショナル・フラワーショー」が開催された。出展数は300を超え、6万人以上の来場者で賑わう南半球最大の花のイベントだ。
個性溢れるガーデンが並ぶ中、一際注目を集めていたのが、ニュージーランド観光局がスポンサーとなり、新進気鋭のランドスケープ・デザイナー、ゼンシィ・ホワイトがデザインを担当した「100% Pure New Zealand Garden」。これは今年5月、英国のチェルシー・フラワーショーで発表され、銀メダルに相当するシルバー・ギルト・メダルを受賞した作品を、同フラワーショーのために再現したもの。メダルにはゴールド、シルバー・ギルト、シルバー、ブロンズの4つがあり、デザインはもちろん、フラワーアレンジメントや植物の栽培技術といった全ての部門で高いレベルに達した参加者にのみ贈られる、栄誉ある賞なのだ。
「100% Pure New Zealand Garden」はオークランド近郊のカレカレ・ビーチからインスピレーションを得て、この国の類まれなる自然環境とアートやカルチャーを組み合わせて表現したものだという。意欲的にデザインに取り組み、ニュージーランドのガーデニング産業をリードするゼンシィに、今年のフラワーショーと彼女が手懸けるガーデンについてお話をうかがった。

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Xanthe White
ゼンシィ・ホワイト
ランドスケープ・デザイナー
Landscape Designer

ウェリントン生まれ、オークランド育ち。オークランドのUNITECでランドスケープ・デザインのディプロマを取得後、2000年にデザイン会社を設立。ガーデン・メンテナンスやデザインの仕事の傍ら、98~2001年にTV3の『Groundforce』、04年にTV ONEの『Ultimate Garden』と、2つのガーデン番組に出演する。03年、初参加となったエラズリー・フラワーショーで銀メダル獲得。04年の同ショーでは金・銀両メダル、ランドスケープ産業協会アワードなどを受賞。今年のショーでは、5月、英国のチェルシー・フラワーショーに出展し、シルバー・ギルト・メダルに輝いた「100% Pure New Zealand Garden」を再現した。

ニュージーランドを象徴するガーデン

今年5月、英国の歴史あるチェルシー・フラワーショーに参加したことは、とても素晴らしい体験になりました。ニュージーランドの代表として、この国を象徴するガーデン・デザインを手懸けられるなんて非常に光栄でしたし、ニュージーランド観光局と一緒に仕事ができたのも楽しかったです。園芸職人のフィリップ・スミスとジェームズ・フレイザー、アートディレクターのサチャ・ナム、彫刻家のヴァージニア・キングなど、チームメイトも最高でした。それにチェルシーのスタッフたちもフレンドリーで、あらゆる面でサポートしてくれましたね。そして何より、私たちの作品が高く評価され、シルバー・ギルト・メダルをいただいたことには大感激でした。
また、この作品を祖国ニュージーランドに持ち帰り、エラズリー・インターナショナル・フラワーショーで再現できて、本当によかったと思います。「100% Pure New Zealand Garden」のプロジェクトは、チェルシーだけでなく、ニュージーランドで公開されてはじめて完全なものになると考えていたからです。
事実、ガーデンに配されたニュージーランド固有の植物は、環境の変化からチェルシーでは充分に生育しないものもありました。エラズリーではこれらの植物がよりイキイキとしていて、ガーデンが生まれ変わったかのようです。
私はこの作品で、ニュージーランドの自然の姿とともに、この国ならではのアートや文化も表現しました。都市と自然とが密接につながっていることや、私たちの生活に大きな意味を持つ「水」、そしてコンテンポラリー・アート。これらが融合したガーデンを目指したのです。
子供の頃、夏を過ごしたカレカレ・ビーチからヒントを得て、丘陵地帯から森を抜け、湖、滝を通って黒砂のビーチへと続く水の流れをつくりました。ママク、カウリ、ニカウ、ポフツカワなど、3千を超える固有植物で周囲を囲む一方で、グラス・アーティストのダーモト・ケリーや、先に挙げたヴァージニアによる人工的なアイテムを使用して、現代芸術の要素も取り入れました。
私は2003年からエラズリーに出展していますが、今年は例年よりも多くのガーデンが発表されましたから、来場者にもより一層興味を持っていただけたのではないかと思います。「100% Pure New Zealand Garden」を見学にいらした方々には、ニュージーランドの素顔とその美しさを感じてもらえていたら嬉しいですね。

自然好きが高じてデザインの道へ

私は高校卒業後、オークランド大学に進学したのち、UNITECでランドスケープ・デザインのディプロマを取得しました。父方・母方、両方の祖母とも庭づくりに長けていましたし、父は登山家で、母も旅が好きでしたから、家族でマウント・クックに登ったり、南米に遠征したり、シアトルに2ヶ月間滞在して周辺の山々を歩いたりと、幼少時から自然に親しんでいたのです。ですから、もともと植物にも興味があったんですね。それで将来、どんな職業に就こうかと思案していた頃、家族や友人からランドスケープ・デザイナーはどうかと薦められまして。ニュージーランドはガーデニングが盛んなこともあり、挑戦してみようと決めたのです。
UNITECでの勉強を終えてから、ガーデンセンターに勤め、メンテナンス業務に携わったのですが、当時は今よりも女性のランドスケープ・デザイナーが少なく、希望していたデザインの仕事がなかなかできなかったんです。ランドスケープ・デザイナーは体力が要求されますから、女性には難しいという固定観念があったんですね。それなら自分でビジネスを興そうと、2000年に「アースルーム・ランドスケープズ」というデザイン会社を設立しました。最初はお客様を獲得するために広告を出しましたが、やがて口コミでクライアントが増えるようになりました。
それと前後しますが、TV3のガーデン番組『Groundforce』に出演することにもなりました。ガーデンセンターの上司から「仕事があるけど、やってみないか」と電話があって、てっきりランドスケープ・デザインの依頼だろうとわくわくして承諾したんです。そうしたら、全く予想していなかったテレビの仕事だったというわけ(笑)。2日間でガーデンをつくるというリアリティ・ショーで、わけのわからないうちに始めましたが、面白かったですね。その後、TVONEの『The Ultimate Garden』という番組にも出ました。こちらでは夢のガーデンづくりの指南をする役割で、例えば英国式ガーデンがつくりたいという人がいたら、土台や基礎づくりから最終的な形になるまで、私が指導するのです。人に何かを教えるのってこんなに楽しいのかと、この番組を通じて発見しました。
この経験は本業にも大いに役立ちましたね。特にチェルシーでは多数のメディアから取材を受けましたが、私はマスコミに慣れていたため、スムーズに対応できたんです。
2003年にはエラズリー・フラワーショーに初参加。キウィ・バックヤードをテーマにしたガーデンを出展し、銀メダルを獲得しました。
それをきっかけに、日本でガーデン・デザインをする機会にも恵まれまして、大阪、京都、岡崎(愛知県)、箱根、東京などを巡って仕事をしました。ニュージーランドとはガーデニングの様式が異なるので、興味深かったですね。日本滞在中は、常に目を見開いて、見るもの聞くもの全てを吸収しようと努めました。
日本のガーデンは、四季を巧みに活かしている点が素敵ですね。オークランドは日本ほど四季がはっきりしていないし、通年緑があって花も咲いているでしょう。それがよいところでもあるのですが、大きな違いだと感じました。
その翌年のエラズリーでは、ローアレルギーガーデン、つまり花粉症といったアレルギー発生の原因を極力抑えながらもカラフルな花の咲き誇るガーデンを提案しました。この作品では金・銀の両メダルのほか、ランドスケープ産業協会アワード、デザイン&ライトニング賞、ピープルズ・チョイス・アワードなど、数多くの賞を受賞することができました。

コミュニケーションがデザインを生む

昨年は最初に起業した会社を売却し、新ビジネス「ゼンシィ・ホワイト・デザイン」で新たなスタートを切りました。こちらは各プロジェクトに特化した会社です。以前は従業員もおりましたから定期的に仕事を回さなければならず、マネージネント的な業務も多々あったのですが、もっとプロジェクト自体にフォーカスしたいと考え、このような形を取ることにしました。私はランドスケープ・デザインの仕事が心底好きなので、余計なことに煩わされることなく、そのことに集中したかったのです。
デザインの醍醐味は、コミュニケーションにあると思います。クライアントの希望を聞き、話し合い、資料を読み、言葉やアイディアを書いて、コンセプトを決める。レイアウトが上がったら、園芸職人や造園担当者にチェックをしてもらい、またそこで意見をいただく。いろいろな人々の見解を聞きながら、デザインを完成へ導いていくのです。私よりも優れたアイディアを持っている人々は大勢いますから、それらに耳を傾け、常に勉強を怠らないようにしなくてはなりません。また、ガーデンにはさまざまな種類があり、スタイルも無限ですから、いつも新鮮なことも魅力ですね。
今後は、ガーデンと人とを結びつけるような、公共スペースのデザインをしてみたいですね。集ったり、催しを行ったり、何かを体感する場として活用して欲しい。ニュージーランドの環境をさらによくするために、デザインを通してお手伝いができればと考えています。

カテゴリ:ガーデニング
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