Vol.73 時代を飾るキウイ ニュージーランドの動物愛護団体SPCA責任者


幼い頃誰もが感じた動物に対するまっすぐな思いやり。それとは裏腹に、忙しさを理由にペットの世話を怠たる人が絶えない現実。扱い方、育て方を知らない子供が暴力をふるい、主張を訴えられない動物は被害者となる。そんな悲しい現実を阻止し、動物を救うべく立ち上がったのが寄付金で成り立つ動物愛護団体SPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals)だ。125年前イングランドで動物愛護の法律が作られて以来、SPCAは世界中に規模を広げ、多くの動物の命を救ってきた。現在ニュージーランドでは48の独立団体が設けられている。その中心オークランド施設で、動物への思いやりを決して忘れず誠意を持ち動物と接する模範スタッフ、それがSPCAの最高責任者Bob Kerridgeだ。動物保護以外にも、動物を通しての"命の大切さ"教育活動にも専念し、その他、動物の持つ癒しの力をセラピーとして導入し施設訪問するなど、扇情的に活動を広げている。彼の出版本"Father & Son"の序文ではBob氏を知る多くの人が、彼の包容力や超越したコミュニケーション能力を高く評価している。今回はそんな彼の魅力に直接触れるべく、オークランド施設を訪れた。優しい笑顔が印象的で冗談好きなBob氏に、人と動物のつながりについて、彼の思いと情熱を経験談もふまえながら熱く語っていただいた。

ニュージーランドの動物愛護団体SPCA責任者Bob Kerridgeさん少年の頃から動物が大好きで11歳の愛犬との理不尽な別れから、幼心に動物愛護に貢献をしたいと決心。そして現職に就くに至る。SPCAの最高責任者CEOとなって23 年、施設の管理や動物の世話の他、出版業や講演会などを通し動物の命の大切さを訴え続ける。ユーモアのあふれる笑いのセンスと愉快な性格で、講演を聴講された人からも大人気のSPCAの顔でもある。メカニック関係の仕事に携わった経験もあり。

http://www.spca.org.nz/general/home.htm

愛犬との衝撃的な出会い

ニュージーランドの動物愛護団体SPCA責任者Bob KerridgeさんSPCAで働いてから23年になります。よくどうしてこの仕事に就いたのか動機を聞かれるんですがね、それは私が11歳の時から始まるんです。実はその頃、子供ながらにも悩みを抱えていましてね。担任の先生が両親に渡した僕への評価をきかっけに、自信を喪失してしまってね、落ち込む事が多い少年時代でした。いつも通りモヤモヤした気持ちを抱えながら学校から帰宅したある日、自分の部屋を開けた瞬間、僕の目に飛び込んだのはベッドの下から僕を覗くかわいい子犬でした!母親からのプレゼントだったんです。そう、その子犬が僕の初めての愛犬ラスティー。それはもう嬉しくてね、飛び跳ねて喜びましたよ。ラスティと僕が大親友になるまでは時間がかかりませんでした。
ラスティーが現れた事は、当時11歳の私がまさに必要としていた奇跡的な癒しでした。彼との出会いによって、生まれて初めて「大切にしたい、しなければ」という"愛情"が芽生えたんですね。そしてそれに伴う責任感も自然に身に付いたのでしょう。話ができなくても心が通じ合う、犬にも感情がある、という事も学びました。
動物であっても人間であっても、良い関係を築くためには誠意と愛情を持って接するという事の大切さをラスティーが教えてくれたんです。幼い頃、そう考える機会に恵また私は幸運ですね。ラスティが私の人生を変えてくれたと思っています。
しかしながら、両親がその後離婚してね、僕は全寮制の学校に入学させられる事になったんです。家も売るため引っ越し先にラスティーは連れて行けず、ラスティーを施設に送る、とある日両親から告げられたんです。無力に何もできなかった僕は、そりゃもう夜通し泣きました。また心にぽかんと穴があいたような感覚に陥って、愛するものを失うつらさを味わいました。その時ぼくは、ラスティーを裏切った事に対して責任を感じた。「必ず埋め合わせをするぞ」と強く心に決めました。そう決心した事をまだ昨日の事のように覚えています。そんな少年時代の思いが今の仕事に至るわけなんですよ!もう随分昔です、何年前かな。まだ100歳は超えていないからここ100年以内の話ですよ(笑)

動物を飼う時に発生する責任

ニュージーランドの動物愛護団体SPCA責任者Bob KerridgeさんSPCAでは、助けが必要な動物たちを引き取って、健康面の治療をし、良い環境で育てます。気性が荒い犬は専門家のトレーナーが訓練をします。施設は緑がたくさんある場所を選び、動物にストレスを与えないような環境作りをスタッフが力をあわせて作っています。そして、ペットを探されている方が訪問され、動物を引き取られていきます。僕はそれを「養子(adoption)」と言います。「かわいいから欲しい」という感情の後に必ず、"動物を飼うという事の責任の重さ"を考えなければいけません。Adoptionとい言葉の裏側には、しっかりとした責任を飼い主に持ち続けてもらいたいとう強い願いが込もっています。引き取られる際には、適切な知識と教育を身につけた上で愛護してもらえるよう伝えます。皆さんよく施設にいらっしゃる前は「弱っている動物ばかりがいるのではないか」と想像されているようで、実際来られて驚かれる事が大半ですね。プロが徹底的なケアをしますので、清潔で健康状態が良好な動物ばかりですよ。
痩せ細ってここに運ばれてくる動物を見る瞬間が1番悲しい瞬間であるいっぽうで、しっかりと愛情をもって世話をしていただける家族に無事引き取られ、見送る時が1番幸せで嬉しい瞬間です。
毎年オークランド施設だけでも、1万匹以上の犬猫が被害に遭って連れてこられます。そのうちほとんどは居場所を見つけて帰って行くのですが、やはり虐待やネグレクトが起きる前に予防できる事が1番理想ですよね。そしてそれを防ぐためにキーとなるのは、「教育」です。

子供への"教育"、そして動物セラピーの重要さ

ニュージーランドの動物愛護団体SPCA責任者Bob Kerridgeさん心に悩みや不満を抱える子供が、1番最初に八つ当たりして暴力をふるう標的になりがちなのが"動物"です。言い返したりしませんからね。また、ペットを飼った後に世話の仕方が分からず困ってしまう人も案外多いんですよ。機械を買った時のように説明書は付いてきませんからね。だからこそ、幼少時代に、正しい教育と動物を通しての「命の大切さ」をきちんと伝える事に重きを置いているんです。そしてそれは我々大人の責任であると思います。子供に理解してほしい、動物には"気持ち"があるという事を。そしてそれを大人になっても忘れないでまた次世代へと伝えていってほしいです。
動物には特別な癒しの力があるという話を聞かれた事がありますか?先日老人ホームを訪問した際のエピソードです。何ヶ月も誰とも話をせず殻にこもってしまった老人がいらっしゃってね。連れて行った猫を、彼女の膝に置いた時の事です。何ヶ月も話さなかった老人が、自分の膝にいる猫をなで始めた途端に話を始めたんです。自分の抑え続けていた感情が言葉としてやっと溢れ出て、そしてそれをまるで受け入れるかのように猫はひたすらその老人の膝から離れなかったんです。老人とその猫に間に芽生えた"関係"には、老人ホームのスタッフも目からうろこがおちたようでした。このような興味深いエピソードはしばしば起きます。人間ひとりひとりに個性や才能があるのと同じで、動物にも同じように隠された才能があるのですね。

相手を尊重する姿勢が"Relationship"の基本

ニュージーランドの動物愛護団体SPCA責任者Bob Kerridgeさん先日、東京へカンファレンスで訪れたばかりなんですよ!食べ物や建物の美しさと人々のあたたかさに感動し、そして充実した素晴らしいサービスには脱帽でしたよ。何よりも感銘を受けたのは日本人の「相手を徹底的に尊重する」という姿勢です。それが人間関係の基本ですよね。動物との関係も、人間同士の信頼関係を築き上げるのと全く同じで、日々"関係作り"に努力です。
SPCAは寄付で成り立っている団体ですので、こちらに滞在されている日本人の方も興味があればボランティアで関わっていただけると光栄です。施設に連絡して直接訪問していただくと、出来る事はたくさんあります。ここでで学んだ事を日本に帰国した際、どんどん広めていただき、その輪(動物と人が築いたつながり)が世界中でさらに大きくなり、動物をいたわれる人がさらに増える事を心から願っています。

カテゴリ:ボランティア
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