第5回 英語達人列伝


夫が経営するマーケティング会社で日本市場を担当し、それに伴う翻訳を日夜こなしている育子さん。英語には自信を持ってニュージーランドに来たが、あることをキッカケにその自信が崩れてしまう。その後、どのようにしてそれを乗り越え今日にいたったのであろうか?

英語上達のコツが満載!英語達人列伝 東京生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。現在 BTM(Booties Tourism Marketing) 勤務。翻訳をする訓練のひとつとしてウェブで配信される朝日新聞の天声人語を購読している。和文と英文の両方が掲載されていて、参考になる表現が多いという。育子さんの会社のホームページは www.btmnz.co.nz

ニュージーランドとの関わり

日本では旅行会社の海外旅行営業部に勤務していました。そこでは海外航空券の発券個所登録や販売の手引き、添乗員マニュアルなどの製作を担当していました。そのころ、ニュージーランドの支店から来た夫と出会い、93年に結婚、そしてオークランドに来ました。
暮らし始めた当初に感じたことは庭や家の広さです。部屋の中でもあまりごちゃごちゃと家具が置いてあるということもなく、ゆったりとした空間が印象的でした。
オークランドでも旅行会社に勤務しました。97年の終わりに出産のため退社し、現在はマーケティングコンサルタント業を営む夫の会社で日本へのマーケティングを担当し、各種のパンフレットやウェブサイトなどの翻訳作業をしています。

英語の習得

私は中学から大学まで一貫教育の学校に通っていました。中学での英語の教科書は日本語が一切書かれていない外国の本でした。そして文法を文法として教わらなかったんです。だから中学生の時には文法の言葉、例えば現在完了という言葉を知りませんでした。もちろん have + 過去分詞という存在は知っていましたが、それが現在完了と呼ばれていることを知りませんでした。
その授業が良かったんでしょうか、英語への入り口はスムースでした。
高校では一転して、文法が中心の授業でした。今覚えているのは文法の授業のシーンばかりです。大学は英文科に進もうと思っていましたから、しっかりと取り組みました。私の学校には帰国子女の生徒が大勢いましたので、その中である程度の成績を修めなければならなかったのです。英語だけは自然に必死になっていました。
将来は世界中を飛び回りたい、そのために海外旅行の添乗員になろうと決めていました。スチュワーデスという選択肢もありましたが、点で都市を移動するのではなく、じっくり各国を見たいと思っていたので添乗員になろうと思っていたのです。そのためには英文科に進む必要がありました。

当初の英語(Speaking・Listening)

ニュージーランドに来たときには英語には自信を持っていました。自分はこれまで英語を勉強してきたし、仕事でもそれなりに英語を使ってきたわけですから。ところがフタを開けてみると全然違いました。読み書きはできても、話す、聞くということが自己嫌悪に陥るくらいひどかったのです。
例えばパーティーのとき。一対一で話をしているときは大丈夫でした。相手も言葉のつたない日本人に対してゆっくりと丁寧に話をしてくれます。だから会話が成立していました。でも大人数で話をしているときは違いました。まったくその内容についていけなかったのです。それでも一応、相槌なんかしているものですから、話が急に私に振られるときがあるんです。「あっ、まずい。全然ついていってなかったよ」と思っても後の祭り。何も応えられなくてその場をシラケさせてしまったことが何度もありました。
そこで、とにかく会話を多くする機会を作りました。身近な夫の家族や友人を質問攻めにしました。質問をする、そして答えが返ってくる。その答えを私が使う。ということを幾度となく繰り返し、苦手を克服していきました。

仕事での英語1(Writing)

オークランドの旅行会社に勤務していたときには、書類をきっちり作ることを心がけていました。いろいろなキウイと書類でやり取りをすることが多かったので、そこでの文章と書式を正確に書くようにしていました。結局、相手に伝われば同じかもしれませんが、それでは進歩がない、妥協しないで正しいビジネス文章を書きたいと思っていました。相手から来るファックスや手紙も私にとっては教科書になっていました。実践の中で多くのことを学ぶことができたと思います。

仕事での英語2(Reading)

私の英語の基本は読むことにありました。新聞、雑誌、本、自分の興味があるものはすべて目を通していました。それが今の仕事に十分生きていると思います。
今は宿泊施設やアクティビティー施設などの旅行・観光関連のマーケティングが主な業務になっています。翻訳はそれに伴う日本語パンフレットの作成ということで発生する仕事です。これは文芸の翻訳ではなく産業翻訳です。この仕事では2つの大切なことがあります。ひとつは英語、英文を正しく理解すること。わからなければ何度も読みますし、書いた人に聞きます。そしてその一文が伝えたいこと、つまり「書き手の気持ち」を正確に理解することです。
そしてもうひとつの大切なこと。それは「書き手の気持ち」を今度は読み手に伝わる言葉に直すことです。つまり直訳でなく、意訳していくということです。ある遊覧飛行会社のパンフレットでは「この飛行機の翼は機体の上についている」とありました。この一文には翼が邪魔になって外が見えないことはない、つまりこの飛行機は景色がよく見えますよ、という意味が込められています。私はこういった種の話し合いをクライアントと何度も行う翻訳をしています。
一文一文に対して、なぜこの訳をしたのか、なぜこの言葉を使ったのか理由が説明できるくらいの訳を心がけています。私の場合は目的がマーケティングにあります。そのための翻訳ですから人が読んで、そこに行きたい、そこに泊まりたい、という文になるようにしています。
最近は旅行関連の仕事だけでなく、第一次産業関連からテクノロジー、R&D(研究開発)まで対日貿易を考えているクライアントからの依頼も増えてきました。これからも日々情報収集を怠らず、新しい分野の翻訳も精力的にこなしていきたいと思っています。

カテゴリ:通訳/翻訳
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