Vol.32 時代を飾るキウイ スカイタワーからのバンジー「スカイジャンプ」


バンジー・ジャンプやホワイト・ウォーター・ラフティングで世界のアドベンチャー地図にニュージーランドが目立って印されて久しい。ニュージーランドは「クリーン、グリーン」のイメージで世界の観光マーケットに売り出されているが、次々と新しいアドベンチャー・アクティビティが発明されている今日、「クリーン、グリーンのみならず、スリルも」というイメージまで広がりを見せ、世界中からより多くの観光客を集めている。
このところ、スリルのニュージーランドと言われる最右翼が、南半球一高い建物として知られる、328メートルのスカイタワーからジャンプする「スカイ・ジャンプ」。この「スカイ・ジャンプ」の創業者がスティーブ・ウェイドマンだ。日本でなら、東京タワーからジャンプをするのに等しい、危険きわまりないアトラクションを実現できたのは、同様のアドベンチャー・ビジネスをワイトモ鍾乳洞で無事故で行っていた経験と実績、さらに、旅行客にオークランドでもう一日長く滞在してもらいたいというオークランドの観光業界の長年の願いを強力に後押しする観光マーケティングの要所を突いたビジネスセンスが功を奏したからだと言う。

スカイタワーからのバンジー「スカイジャンプ」

Steve Weidmann
スティーブ・ウェイドマン
スカイ・ジャンプ代表 / Managing Director,Sky Jump Ltd.

1959年オークランド南部のワイウク生まれ。両親はスイスからの移民。ガスパイプラインなどを敷設するエンジニアとして25年のキャリアを持つ。エンジニアの職業と並行して北島中央部にあるワイトモ鍾乳洞のアドベンチャー・ビジネスにも進出し、エンジニアの経験を生かして、アドベンチャーマシンを開発。スカイ・ジャンプで使用しているマシンもワイトモ鍾乳洞をケーブルで降りて行く「ロスト・ワールド」の試作機を改良したもの。「スカイ・ジャンプ」は195ドル、学生割引だと145ドルになる。

アドベンチャー・ビジネスとの関わり
エンジニアとしての経験がものを言った

仕事は元々エンジニアで、工場やオフィスのガスパイプラインを敷設する仕事をやっていました。仕事の合間に良くニュージーランドやオーストラリアを旅行していました。たまたま、北島中央部のワイトモ鍾乳洞にある「ロスト・ワールド」と言われる、深さ100メートルの鍾乳洞の中にカメラを持って降りて行く機会に恵まれました。今までにないワクワクする経験で、それ以来、アドベンチャー絡みの仕事をしたいとずっと思っていました。8年前にワイトモ鍾乳洞をベースにアドベンチャー・ビジネスを展開しているWAITOMO ADVENTRUES LTD.の株を半分買い、エンジニアの仕事と並行して、アドベンチャー・ビジネスにも関わる事になりました。WAITOMO ADVENTRUES LTD.は1986年から鍾乳洞の中の川に入って浮き輪を使って下って行くブラック・ウォーター・ラフティング、100メートルの鍾乳洞の中をワイヤーを使って降りて、泳ぎ、歩き、登って探険する鍾乳洞ツアーを実施しているアドベンチャー会社です。
1998年にスカイタワーがオープンすると、いくつものアドベンチャー会社がスカイタワーを舞台にしたアドベンチャーを実施したいと、オーナーであるスカイシティにアプローチしました。当時ニュージーランドはバンジージャンプ、ホワイト・ウォーター・ラフティングなどのアドベンチャーが人気を呼び、続々と新しいアドベンチャーが開発されていました。
スカイタワーはオークランドのアイコンの一つで、192メートルのジャンプは世界で最も高いところからのジャンプになりますし、話題性、アピール度でどこにも負けないアドベンチャー・アクティビティになると確信していたので、ぜひとも実現させたかったのです。私はWAITOMO ADVENTRUES LTD.代表として住んでいたタウランガからオークランドまで車で3時間かけて、3年間通い詰めてやっと2001年にスカイシティーから承諾を貰いました。我々が数ある競合の中でスカイシティから承認されたのは同社の幹部をワイトモ鍾乳洞に連れて行き、12年間やっていたアドベンチャー・ビジネスのありのままを見せる事が出来たからです。「ロスト・ワールド」でやっていた100メートルの鍾乳洞下りで得たノウハウがそのままスカイ・ジャンプで活かせました。スカイタワーでのアドベンチャー・ビジネスは自分達の経験の結晶なのです。

オーケーをもらうまでに3年間
実現にこぎ着けるまでは保険、法律、条例などの壁を乗り越えなければならなかった

「スカイ・ジャンプ」のアイデアの元となった、「ロスト・ワールド」での鍾乳洞下りは元々空軍のパラシュート部隊がヘリコプターから垂れ下がったケーブルを降りて行くトレーニングから思い付いたものです。私はエンジニアの経験を生かして試作機を考案しました。降りて行く人のハーネスに取り付けたケーブルが羽の付いたドラムに巻き付いており、人の重さでドラムが回転してケーブルが伸びます。回転するドラムに付いている羽が空気抵抗を作り出し、落ちて行く人の落下スピードを調整する仕組みです。
「ロスト・ワールド」は商業化する前に何度もテストを行いました。100メートルも深い鍾乳洞の真っ暗な中を、作ったばかりで、いつ壊れるかもしれない試作機で降りて行くのは身の毛がよだつ程、ゾッとした記憶があります。しかし、そんなトライアルを何度も行った結果、「ロスト・ワールド」が商業化でき、スカイ・ジャンプの実現にこぎ着けました。「ロスト・ワールド」は1988年の操業以来、1人のケガ人も出していないのはインストラクターが十分に教育されているということもあります。もちろん、機材のチェックを怠る事はありません。そんな安全記録をスカイ・ジャンプに導入しています。
使用許可を得るための3年間はシティカウンシルの許可、スカイシティとの調整、使用する機材の民間用の使用許可など法律、保険、家賃などの契約をし、機材の設計、ジャンプ台のデザインなどに膨大な時間とお金をかけました。

オークランドに一日長く滞在してもらう
スカイシティ、オークランド観光局などとオークランドでの滞在を延ばさせる作戦

スカイシティとオークランド観光局があと一日多くオークランドに滞在してもらうマーケティングプランを以前から考えていました。そこで、スカイタワーがオープンし、オークランドのシンボルとなって、オークランド観光のアピールポイントが増えました。しかし、スカイタワーがオープンしただけでは十分ではありませんでした。スカイ・ジャンプはニュージーランドで発明されたアドベンチャー「バンジー・ジャンプ」を彷佛とさせる事と、世界で一番高いところからのジャンプという事で抜群のアピール度を誇ります。実際にオークランドでの滞在が一日延びたという統計はまだ出ていませんが、今までに約2万人の人がジャンプをし、確実に「オークランドのスカイ・ジャンプ」として認知されて来ています。初ジャンプは2001年12月8日、ちょうど息子の誕生日でした。初めて飛んだのはこの私です。テストジャンプとして朝二時に行いました。ワイトモの「ロスト・ワールド」の約二倍の距離をやっと実現できるという満足感で降りて行きました。
「スカイ・ジャンプ」は「バンジー・ジャンプ」と混同されます。というのは、1998年にスカイタワーがオープンした時に、バンジー・ジャンプの発明者、AJハケットが「スカイ・ジャンプ」のジャンプ台となる場所からバンジー・ジャンプを行いました。世界で最も高いところからのジャンプという事で世界中に報道されたため、多くの人が「スカイ・ジャンプ」のことを足にゴムひもを付けて飛ぶ「バンジー・ジャンプ」と思ってしまうわけです。しかし、ハーネスを付けて釣り下げる方法だと身体への負担がずっと少ないため、多くの年齢の人に受け入れられます。「Hard in the mind, Gentle on the body」(心にはハードだが、身体には優しい)と言い、飛んでいるようだと形容する人もいます。最高齢は男性で86歳、女性で78歳。共にアメリカ人です。最も多く飛ぶのは英国人、次いでアメリカ人、オーストラリア人、ニュージーランド人の順番です。まだ日本人はニュージーランド人に比べても3分の1以下です。トム・クルーズも映画「ザ・ラスト・サムライ」の撮影の合間に飛んで行きました。

セキュリティに万全を尽くす
機材の確認、スタッフのセキュリティ体制など決して間違いが起こらないしくみ

毎朝30分間、機材の点検を行います。人の平均体重の砂袋を下げて、テストを行います。ワイヤーは2万7000回使えると言われていますが、3000回で換えています。また、ジャンプ台には2つのドアがあり、一つが開いている場合は一つが閉まる作りになっています。外から突然誰かが入って来ても最後の2つ目のドアが閉まっていますので、いきなり飛び下りたり、モノを投げたりする事ができない仕組みになっています。仮にジャンプ台からペンや携帯電話など、何かが落ちるだけで、幸運にも下にいる人に当たらなくても、それだけでこのビジネスは安全面が欠けていると言う事で存続が出来ません。ですから、ジャンプする人には専用のジャンプスーツを着てもらいます。
また、インストラクターはワイトモの「ロスト・ワールド」で最低でも6ヶ月の経験を積んだ者がジャンプ・マスターとして仕事が出来ます。ワイトモと合わせて15人のスタッフが交代で二人ずつ担当します。同じジャンプ・マスターがずっと同じ場所で仕事をする事はマンネリ化を引き起こす事になります。ワイトモとローテーションする事はジャンプ・マスターの精神面のリフレッシュになり、ハーネスのフックを確実に掛けたかなどの確認作業を決して忘れないようにするためのアイデアなのです。
この仕事を始めてエンジニアの時よりも収入が減りました。その上、タウランガに家族を残しての単身赴任です。家族と会えるのは日、月曜日しかありません。しかし、スカイタワーの下を通り過ぎる人が立ち止まって「スカイ・ジャンプ」を見上げて行くのを見かける度に、本当にやりがいのある仕事に関わっているという満足感を覚えます。
今までに世界中の200以上のメディアが取材に来ました。深夜にライブでジャンプ中継も行われた事があります。アピール度は本当にすごいと自信を持っています。
今はマカオとマレーシアのクアラルンプールからオファーがあり、「スカイ・ジャンプ」の技術を使って同じようなジャンプ・アトラクションが始まる予定です。また、近いうちにスカイタワーで次のアドベンチャー・アトラクションを始める予定です。そうなったら、フルタイムのマネージャーを雇い、自分は単身赴任せずに、マネージメントに専念しようと思っています。

カテゴリ:起業系
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