Vol.62 時代を飾るキウイ 女性起業家・hello DOLLYディレクター


TV ONEの人気番組『Dragons' Den New Zealand』は、ビジネスのアイディアはあるが充分な資金を持たない起業家志望と、出資をするにふさわしい将来有望な事業を求めている投資家とをマッチングさせるニュージーランド版『マネーの虎』(日本テレビ系列で02〜04年に放送)だ。昨年8月31日、同番組の記念すべき第1回オンエアで、見事25万ドルの投資金を獲得したのが、オークランド在住の女性マーケッター、アンジェラ・ビアー。「フェミニンで独立心旺盛な女性のためのあらゆるツール」をコンセプトとしたギフトウェア・ブランド「hello DOLLY」の創設者だ。このブランドからは大工道具シリーズの「DIY DOLLY」(本誌の06年12月号『Eセレクション』で紹介)を皮切りに、ガーデニング道具「Digger DOLLY」が発売され、近日中には自家用車のクリーニング&メンテナンスキットとベッドルーム・アイテムもリリースされる予定。どれもピンクを基調色とし、女性が扱いやすいよう、軽量でやや小ぶりなサイズにデザインされていることが特徴だ。これまでにはないユニークな商品展開に、すでにニュージーランド国内でも話題を呼び、海外からの販売オファーもきているという。一躍、新進ベンチャー起業家の仲間入りを果たしたアンジェラ。大きな夢に向かって走り出した彼女に話を伺った。

女性起業家・hello DOLLYディレクター Angela Beer
アンジェラ・ビアー

hello DOLLY director 「ハロードリー」ディレクター

ロトルア生まれ。32歳。オークランドでマーケティングの学位を取得後、ジャーナリズムと広告業界でのキャリアを経て、2006年「hello DOLLY」を設立。女性向けの大工ツール「DIY DOLLY」を発売して話題に。また、TV ONEの投資番組『Dragons' Den New Zealand』に出演し、見事ドラゴンの1人バリー・コーマンより25万ドルを獲得。その投資金をもとに、ガーデニング道具「Digger DOLLY」を発表。今後もカー用品、旅行アイテムなど、さまざまなシリーズをリリースする予定だ。

www.hellodolly.info
Phone 09-623-2514
Toll-Free dial 0800 4 DOLLY (0800 436 559)

現代女性に向けたツールを作りたい

私は、自分が女性であるということに、喜びと誇りを感じています。メイクアップをしたり、キレイなドレスを着てお洒落をしたりという、フェミニンなことが大好きなんですよ。そして、現代の女性は非常に独立していて自由で、何事も自らの意志で選択できるでしょう。それも素晴らしいことだと思っています。かつては女性の地位が低く、男性の添え物のように扱われていた時代も存在していたわけですからね。
「hello DOLLY」は、そんな"今の女性"に向けて、あらゆるツールを提供するために立ち上げたブランドです。ビジネスを興したのは、何かクリエイティブなことを手懸けたくなったから。学位を取得した後、広告業界でマーケティングの業務に携わってきましたが、キャリアを重ねるうちに、もっと自分を表現できるような仕事がしたいと思うようになったんですよ。そして実際に行動を起こそうと決心したのが、2005年の12月。毎年12月に仲のいい女友達12人と開催している恒例のランチパーティ「ドリー・ランチ」の席でのことでした。
ドリーというのは私の昔のニックネームで、ブランド名もここからつけたのですが、そのパーティは1年を無事に過ごせたことを祝い、また、その年、各自に起きたことを報告したり、翌年の抱負を話したりする会なんです。05年のドリー・ランチで、私は皆の前でこう宣言しました。「もう32歳になるし、そろそろ自分の力を試してみたい。来年は女性にアピールするようなものづくりを目指すわ」って。
ただ、その時はまだ具体的に何をするのか決めていなかったんです。絵が得意だから、グリーティングカードやラッピングペーパーを作るのがいいかしら、なんておぼろげながらに計画していましたけどね。そこで早速、市場調査をしてみたところ、カードや包装用品はすでに産業として熟成しているので、自分が参入する余地がないとわかりました。では、何ができるのか──そう思案していた時、以前、大工道具キットを探しに行ったことを思い出したんです。
私が求めていたのはベーシックなキットだったのですが、何軒か店を回っても、希望の商品は見つからなかった。家でも建てるのかと思うような本格的なものか、携帯サイズのごく小さなものという両極端なタイプしかなくて、がっかりした覚えがありました。そこで、「女性のための大工道具を作ろう」と思いつき、発案したのが「DIY DOLLY」です。
経済的な後ろ盾がなかったので、それまでコツコツと貯めてきた貯金10万ドルを起業のために投資しました。子供を産んだ時のために貯蓄してきたお金なのですが、「hello DOLLY」も我が子のようなものですからね。それに、本当に子供を産んだら、しばらくビジネスに専念することは難しくなるでしょう。ですから「やるなら今しかない」という気持ちもありましたね。婚約者のクレイグや友人たちも「アンジェラならできる」と応援してくれました。

ビジネスの扉を開いたテレビ出演

コンセプトを決め、商品案が出来上がったら、次は製作してくれるところを見つけなくてはなりません。中国へ飛んで何百という現地の工場を検討するなど、大変な作業が続きました。
それと同時期にTV ONEの『Dragons' Den New Zealand』へ応募し、出演することにもなりました。その時点ですでに商品ラインのプランをいくつも持っていたのですが、私のポケットマネーだけでは全てを実現することはできませんし、どうしても時間がかかってしまいます。投資を受けられれば、ビジネスをより早く進めることができますからね。
出演が決まってから収録までに6週間ありましたが、当時はフルタイムでマーケティング・コンサルタントの仕事をしていましたし、オークランドのホームショーに「DIY DOLLY」を出展することにもなっていたので、それぞれの準備に追われてマラソンをしているような気分でした。でも多くの人々がサポートしてくれましたよ。ヘレン・クラーク首相のメディアトレーナーであるマギーに頼んで質疑応答やスピーチの練習をしたり、クレイグに手伝ってもらってサンプルを作ったり。経理のアドバイスをくれた友人もいますし、まさにいろいろな人たちの助力を得て、乗り越えたという想いです。
本番では緊張しましたが、やるだけのことはやったので意外と落ち着いてもいました。それに、私は自分のやっていること、やりたいことが正しい方向に向いていると信じていましたから、迷いはありませんでしたね。目の前に巨大な山が立ちはだかっているようにも感じましたが、とにかくこの山を登ってみようと肝を据えていました。登らなければ、山の真実の姿を見ることはできませんものね。
結果、5人のドラゴン(投資家)のうち、バリー・コーマンとアネット・プレスリーが出資を申し出てくれ、バリーから投資を受けることになりました。それによって、ビジネスの扉が大きく開きましたよ。今年4月までの間に、全部で40もの商品をリリースできることになりましたから。半年前までは想像もしていなかったことです。自己資金のみだったら、せいぜい年に5アイテム程度しか発売できなかったでしょう。またとないチャンスを得ることができたと感謝しています。

理想の女性は、強く明るい母親

私が「独立した女性」をターゲットにしているのは、母の影響が強いのだと思います。私の母は最高の女性です。あれほど強く明るくポジティブでハッピーな人を、ほかに知りません。
母はマオリで、マオリ人男性と結婚して3人の男の子をもうけました。でも、その男性が事故死をして、30歳前にして未亡人になってしまったんです。
しかし母はくじけることなく、ワーキングマザーとして子供たちを育てました。その後、ヨーロピアンの男性、つまり私の父と出会って再婚。ところが私が生まれて6年後、今度はその2番目の夫も、交通事故で亡くしてしまったのです。
この話だけ聞くと、とんでもなく不幸ですが、不思議と我が家には悲壮感はありませんでした。母は女手ひとつで兄たちと私を立派に成長させ、教育も受けさせてくれました。もちろん、経済的には豊かではなかったけれど、私たち兄妹は誰一人として歪むこともなく、また人生が理不尽なものだと悲観することもありませんでした。それは、いつも母が陽気で、私たちに元気をくれたからだと思うんです。
母は私に、自分で生きていけるだけの力を持ち、経済の基盤も整えておけば、何が起こっても大丈夫だと教えてくれました。社会に出てから私がずっと貯蓄に励んだのも、母の助言があったからです。いざという時にまとまった資金があることがどんなに大切かとよく話してくれていたんですよ。ですから、「hello DOLLY」が生まれたのは、母のお陰でもあるんです。
近日中に、カー関連商品とベッドルーム・アイテムを発表しますが、その後もメイクアップ・キットをメインとした「Dress up DOLLY」や、旅をテーマに、ネックピロー、パスポートホルダーといった旅行関連小物やスーツケースを揃えた「Destination DOLLY」、ペット用品、エクササイズ・アイテム等々を考案中です。また、すでにオーストラリア市場にはパイプを持ちつつあるのですが、英国、米国をはじめ、海外にも積極的に展開していきたいですね。「hello DOLLY」を世界的に認知されるブランドへ育て上げることが、私の夢なんです。
プライベートでは、今年、クレイグとの結婚を控えているので、仕事と私生活のバランスを上手に取りたいですね。そしていつかは子供を持ち、母が私に与えてくれたような安らげる家庭を築けたら幸せだと思います。

カテゴリ:起業系
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