Vol.59 時代を飾るキウイ レスミルズ・ボディジャム・ディレクター


まだ20代半ばながらプロとして10余年のダンス暦を誇るコリオグラファー(振付師)、ガンダルフ・アーチャーがステージに姿を現した瞬間、ダンススタジオの空気が一変した。音楽に合わせ、軽快にステップを踏み、体を動かし始めると、その存在感は増し、彼の全身から放たれる高揚感が波動のようにスタジオ全体に伝わっていく──。
ニュージーランド国内外にコアなファンを持ち、"G"の愛称で親しまれるガンダルフ。彼は、オークランドを発祥とする国際的スポーツクラブ「レスミルズ ワールド・オブ・フィットネス」(本誌の本年7月号に登場いただいたボディコンバット・プログラム・ディレクターのレイチェル・ニューシャムが所属している)と、ダンススクール「シティ・ダンス」でそれぞれクラスを受け持つダンス教師だ。
特に前者では、グループフィットネス・プログラムの一つであるダンス・エクササイズ「ボディジャム」(日本ではこの9月に導入された)のディレクターを務め、選曲、振り付け、構成、インストラクター教育といった同アイテムに関わる全てを任されている。
11歳でヒップホップに出合って以来、ずっとダンスを愛し、情熱を燃やし続けているというガンダルフ。ダンスに魅せられた少年の頃から揺るがない「踊ること」への強い想いを語っていただこう。

サンプル

Gandalf Archer
ガンダルフ・アーチャー

ボディジャム プログラムディレクター
BODYJAM Program Director, Les Mills Auckland World of Fitness

オークランド生まれ。11歳でヒップホップダンスを始める。エアロビクス・インストラクターの資格を取得し、1995年、15歳で「レスミルズ・オークランド」のフィットネス・ダンス・インストラクターとしてダンス教師のキャリアをスタート。2003年よりボディジャムのコリオグラフィー・チームに参加し、現在、同プログラムのディレクターを務める。「シティ・ダンス」でも約7年間ヒップホップを教えている。好きなコリオグラファーはヒップホップのマーティ・クデルカ。アーティストは、ジャスティン・ティンバーレイク。
Les Mills Auckland World of Fitness
186 Victoria St. West, Auckland City
Tel.09-379-9550 / www.lesmills.com / www.lesmills.co.nz

www.lesmills.com

ダンスとの衝撃的な出合い

僕がダンスと出合ったのは11歳の頃です。現在の勤め先であるスポーツクラブ「レスミルズ・オークランド」でヒップホップダンスのレッスンに参加したんですよ。ピーター・リアルというインストラクターがそのクラスを教えていたのですが、初めて彼のダンスを見た時、「うわーっ、スゴイ!」って、衝撃を受けました。この世の中にこんなにカッコイイ世界があるなんて、とびっくりしましたね。それですっかりヒップホップの虜になり、毎週ピーターのレッスンに出席するほか、ほかのダンススクールにも通い始めました。
幼少時に少しだけですが格闘技を習ったし、体操競技や、今でも時折遊んでいるローラーブレードなど、スポーツに親しんではいたのですが、自分にダンスができるかどうかなんて考えたこともなかった。でも、実際に試してみたら、「なかなかうまくできるんじゃないかな。僕はダンスに向いているかもしれない」と感じましたね。何より踊ることがとても楽しく、心地よかったんです。
だからそれ以降はもうダンス一色ですよ。ほかのスポーツなんて目に入らない。ダンスにはさまざまな体の動きが必要とされるし、非常に奥が深いものですからね。ヒップホップからダンスの道へ入りましたが、タンゴ、サルサ、ブラジリアン等々、いろいろなスタイルを学び、踊るようになりました。
そして、それからほどなくして、踊るだけではなく、ほかの人に教えることも好きなんだと気付いたのです。そこで1994年にエアロビクス・インストラクターの資格を取得。翌年の95年、15歳から、レスミルズで「ボディジャム」の前身の一つとなった「カーディオ・ファンク」というフィットネス・ダンスのクラスを受け持ち始めました。
15歳でキャリアをスタートさせるって、すごく早いですよね。仕事を開始するにはかなり若い年齢です。僕は、そんな人生の早い時点で心から夢中になれるものが見つかり、それを職業にできたことを、たいへんラッキーだったと思っています。

日本でも導入されたボディジャムとの関わり

ボディジャムに関わり始めたのは、インストラクターとして働き始めて1年くらい経ってからですね。当初は一般の会員さんたちと一緒にレッスンを受ける側だったのですが、97年頃から自分でもクラスを持つようになりました。
その後、しばらくして、僕の前任のボディジャム・コリオグラファーだったルース・ピラヒのアシスタントとして、一部の選曲やコリオグラフィー(振り付け)を担当。今ではディレクターなので、コリオグラフィー全般はもちろんのこと、プログラムの一切を任されています。
ボディジャムは、ほかのグループフィットネス・プログラム同様、3ヵ月に1度、ニューバージョンのリリースがあります。モダン、ヒップホップ、ラテン、ジャズ、アフリカン、インディアン等々、あらゆるスタイルを取り入れて振り付けをするので、毎回やりがいがありますよ。例えばインディアンのビートを使う場合、僕自身がインド舞踊に精通している必要があるでしょ。世界中にある多種多様なダンスを、常に勉強し、精進していかないと追いつきません。
優れたコリオグラフィーを作るには、それに合ういい音楽が不可欠なので、楽曲探しには重点を置いています。これは時間も手間もかかるハードな作業ですね。毎日、多くの音楽サイトをチェックしたり、CDショップに足を運んだりと、アンテナを張り巡らせています。音楽は大好きなので、全然、苦になりませんけどね。
選曲が済んだら、ダンススタジオでその曲を流し、照明を点け、音のボリュームを上げます。そして踊り始めると、ごく自然にコリオグラフィーが生まれてくるんです。踊ることで、ダンスのプランがどんどん湧いてくる。創作者は皆、そうなんじゃないかな。作品は自分の中に存在していて、コンディションが整った時、うわっと外にあふれ出すんですよ。
ただ、そのようにアウトプットしてばかりだと自分自身の容量が少なくなる気がするので、定期的にインプットもしています。共同作業を通してアメリカやヨーロッパのコリオグラファーたちから新鮮なアイディアをもらったり、ダンススクールに行ったりね。リリース後には大抵インストラクター教育のための海外出張が入るので、その際、現地のレッスンを取るんです。この前はロサンゼルスとニューヨークでダンスクラスに参加してきました。ジャスティン・ティンバーレイクのミュージックビデオでコリオグラファーを務めているマーティ・クデルカのレッスンも受けましたよ。
今年は出張が多くて、ほかにもベルギー、フランス、スイス、ドイツ、英国、ポルトガル、オーストラリア、日本、ブラジルなどを回りました。日本へ行くのはそれが初めてで、東京と大阪に滞在したのですが、どちらも気に入りましたよ。特に大阪は美しい街だと思いました。
旅をすると、いつも新しい発見があっていいですね。世界中のインストラクターやコリオグラファーたちと会えるのも刺激になります。日本はすごく面白かった! アメリカやヨーロッパ諸国は、ニュージーランドとライフスタイルが似ているのでさほどの違和感はないのですが、日本では生活・環境の何もかもが違うので、まるで別の星にたどり着いたかのようでした。
日本のインストラクターたちはほかの国々と比べても非常に熱心だし、スキルも高いですね。ボディジャムは、日本ではこの9月に導入されたばかりなのですが、早くも評判はいいようです。日本にはぜひまた訪れてみたいですね。

踊ることが僕の全て

レスミルズのほか、ダンススクール「シティ・ダンス」でも97年からヒップホップのレッスンを行っています。
こちらはボディジャムとは対象が異なり、ダンスに特化したい人たちのためのクラス。フォーマットも教え方も変わりますが、どちらも楽しんでいますよ。
舞台でパフォーマンスすることと、スタジオで人に教えること。経験から言うと、両者に大きな違いはないですね。レッスンの前には完璧に踊れるように練習を重ねるし、スタジオでは最高のダンスを披露できるようベストを尽くします。異なる点といえば、観客は鑑賞しているのではなく、僕と一緒に踊ってくれること。皆が一体となってダンスに熱中するんです。これってすごくステキなことじゃないですか。
いちばん気持ちよく踊れるスタイルはやはりヒップホップですが、ダンスそのものが本当に大好きなんです。朝、目が覚めたらまずダンスをしたいと思うし、仕事ではずっとダンスに浸っているし、夜、寝る前にはその日に踊った内容を反芻するし、夢の中でもダンスをしている。まさにダンス・クレイジーなんですよ(笑)。
ガールフレンドのジニー・クルッカー(女優、パフォーマー)もダンサーで、彼女が得意なのはジャズ、バレエだから、僕のバックグランドであるストリート、ヒップホップと情報を交換したり、インスピレーションを与え合ったりもしています。要するに年中ダンスに明け暮れているわけです。ダンスは僕の人生の全てといえますね。
当面の目標は、ダンスに関してできる限り多くのことを学ぶことです。さらに技術を磨き、新しいスタイルを求め、習い、自分の能力を最大限に伸ばしたい。ダンスの分野は常に進化しているので、この目標が到達されることはないでしょう。どれだけ努力しても際限がない──だからこそ飽きることなくダンスに魅せられているのかもしれません。
そして遠い未来の夢は、この先もずっとダンスを続けること。30年後も今と同じように踊っていられたら、とても幸せだと思います。

カテゴリ:他スポーツ
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