Vol.27 時代を飾るキウイ ニュージーランドTV3ニュースプレゼンター


昨年末からテレビ界に大きな変化が起こっている。
向かうところ敵無しだった国営放送のテレビジョン・ニュージーランド(TVNZ)が視聴率を落とし、TV3が視聴率を上げているのだ。TV3はニュージーランド初の民間放送局として開局して十余年、今までにない上昇ムードが社内を駆け巡っている。
TV3の視聴率獲得の牽引車になっている番組は言うまでもなく、毎日午後6時から放送されている「3ニュース」だ。「3ニュース」はニュージーランドでもっとも視聴率を取る番組、テレビジョン・ニュージーランドの「ワン・ニュース」と同じ時間帯、同じ1時間の長さで、裏番組として真っ向勝負を挑み続け、「ワン・ニュース」が視聴率を落としているのをしり目に、若い層を中心に着々と視聴率を伸ばして来ている。
「3ニュース」でプレゼンターを務めるキャロル・ハーシフェルドはキャリア、ファッション、美容など、ニュージーランド女性が強い関心を持つテーマで良くメディアに取り上げられるが、一緒にプレゼンターを務めるジョン・キャンベルと同様「自ら歩いて取材する」という辣腕ジャーナリストとしての一面も見逃すことが出来ない。

ニュージーランドのテレビ・プレゼンターCarol Hirschfeld(キャロル・ハーシフェルド)

Carol Hirschfeld
キャロル・ハーシフェルド
3ニュース プレゼンター / 3 NEWS Presenter
ドイツに祖先を持つオーストラリア人の父と南島ウエストコースト生まれのマオリの母の間にオークランドで生まれる。大学在学中に専攻したのはイギリス文学とインドネシア語。ラジオ局、新聞社で時事問題を担当し、テレビジョン・ニュージーランドで時事番組のディレクターとプレゼンターを経てTV3へ。今年で「3ニュース」のプレゼンターは8年目を迎えた。9歳の息子と、3歳の娘の母。

一歩ずつ確実にステップアップ
ラジオ、新聞、テレビと一貫してメディア界で時事問題と関わって来た。

大学で勉強したのはジャーナリズムではなくイギリス文学とインドネシア語です。最初の仕事は北島のタウポでのラジオ・ニュージーランドでした。ニュースを読み上げることと時事問題の編集を行ないました。その後、オークランドに来て、今は廃刊になってしまった夕刊紙「Auckland Star」の編集部員となり、時事問題を追い続けました。
そして、テレビジョン・ニュージーランド(TVNZ)に入り、TV ONEでニュースと時事番組に関わることになりました。 私が勤務した7年間に「Assignment」と「Holmes」のディレクターを務め、「Fair Go」と「Crimewatch」では自らカメラの前に立ってレポートをし、時事問題を追い続けました。
1997年にTV3に移り、ニュース番組「3ニュース」でプレゼンターを務めて今年で8年目になりました。TV3は1989年にニュージーランドで初めての民間放送局として開局し、現在はカナダ資本のCanWestが運営しています。カナダ資本とは言ってもニュージーランドの様々なテーマでの番組作りを忘れることはありませんし、そのうえ世界中で人気のドラマやアニメ番組を買い付け、ニュージーランドと世界の情報をまんべんなくミックスして放送しています。
TV3は18-49歳をターゲットにしています。このところのTV3の視聴率の伸びは10台後半から20台前半の若い層が大きく関係しています。

自分で観たい番組を選ぶ
ニュージーランドのメディアリサーチ会社が昨年末の視聴率調査を発表している。

チャンネルの視聴率では25歳から54歳をターゲットにしているTVNZのチャンネルの一つTV Oneは30歳以上では相変わらず根強い人気を誇るが、18歳から39歳まではTV3と抜きつ抜かれつの激しい視聴率競争を繰り広げている。
また、番組の視聴率で比べてみると、25歳から54歳をターゲットにしているTV Oneの「ワン・ニュース」は一昨年3月からの1年間で18.3パーセントから17.3パーセントに落ちているが、18歳から49歳をターゲットにしたTV3の「3ニュース」は同時期に9.1パーセントから9.4パーセントに上昇している。

ニュース番組は生活習慣と同じようなもので、機会がないと他に代えるようなことはしません。ニュース番組は毎日、同じ時間に放送され、生活リズムの中にしっかりと入り込んでいます。人間は生活に特に不満がない限り、それを守ろうと保守的になります。
私達は「ワン・ニュース」の視聴者にチャンネルを「3ニュース」に代えさせる番組作りをして来ましたが、最もエネルギーを費やして来たのは、若い頃から「3ニュース」のファンを作っていくことです。それは、子供達が親の視聴習慣に関係なく、自分達でニュース番組を選べる時代になって来たからです。子供達の部屋にはテレビが備え付けられるようになって来ましたし、たとえ家を出てフラッティングをするにしても、自分で判断してニュース番組を選べるようになって来たからなのです。ですから「3ニュース」は、知ってもらうこと、長く続けること、政治から芸術や社会風俗など、できるだけ広範囲なニュースを取り上げることを地道に重ねて来ました。また、プレゼンターのジョンはジャーナリストとしてのバックグラウンドを活かして、ニュージーランドのニュース番組では今までなかった、コメントやレポーターとの質疑応答にアドリブを加えるスタイルを確立しました。
また、移民もターゲットとして忘れることはできません。広く受け入れられる様、より暖かみと愛嬌のある、はっきりとした喋り口調を心がけています。移民の人たちは私達がターゲットとしている若い層と同じ状況、つまり、自分達でチャンネルを選ぶことができるからです。
TV3はTVNZと違ってあまり保守的であることは求められません。私もジョンも元来ジャーナリストです。プレゼンター二人がスタジオを飛び出して、地方から放送を行なったことも何度もあります。今はオークランドだけではなく、地方も熱いと思います。

裏キャロル
番組の放送直前まで日課になっていることがある。それはヘアスタイル。

現在は9歳の息子と、3歳の娘の母親として、家事を終えた後、午前11時に出社します。さっそく当日放送用の打ち合わせと情報収集を行ないます。午後2~3時頃になるとヘアメイクに取りかかります。実は私の地毛は強いカールがかかっていて、毎日ストレートに伸ばしているので、時間がかかるのです。1995年に初めてテレビのプレゼンターとしてカメラの前に立つようになって以来、地毛を活かした、長くてボリュームのあるカーリーヘアがトレードマークでした。TV3で仕事を始めた時も、少しボリューム感を減らしましたが、カーリーヘアのままでした。
しかし、「3ニュース」でプレゼンターを始めて1年後、1999年にTV3のヘアメイクの担当者と話し合った結果、私のボリュームのある長いカーリーヘアは扱いにくい、プロデューサーは強制はしませんでしたが、ニュース番組には合わないのではないかということで、ストレートヘアの私が誕生しました。
プロの意見には耳を傾けるものだと実感しました。新しい自分を見つけるのに、時として、自分が本来持っている生まれつきのものも、切り捨てる必要があることが分かりました。自分が好きだからと言って、若い頃の好みを齢を重ねる自分に合わせてみても、おかしなことになるだけですし、自らを苦しめることになります。結果的に私の周りではストレートヘアは賛否両論でしたが、いまでは定着して来ていると思います。
5時になると当日の放送用のニュース原稿を読みます。5時になるまで原稿は読めないと言った方がいいかもしれません。放送直前まで原稿の変更がありますし、読み上げる順序も変わるからです。本番10秒前に変更することもありえます。できるだけ最新のニュースを伝えるためにはそうすることが必要なのです。
そして本番15分前にスタジオ入りし、6時に放送を開始します。7時に放送が終わると、30分後には家路につくようにしています。

TV3への強いクレーム
ジョン・キャンベルとは98年からのコンビ。その間にはいろんなことがあった。

「3ニュース」を担当するようになって今年で8年目になりました。その間には2001年のアメリカの同時多発テロがありました。ニュージーランド時間では2001年9月12日の早朝に起こったのですが、ニュージーランドの地上波ではTV OneがBBC WORLDでライブ中継しただけで、TV3は健康器具や化粧品の通信販売のインフォマーシャルとドラマを朝7時まで流し続けました。ジョンが7時から特別番組を組み、アメリカの提携局の映像を流して対応しました。私自身も朝になるまでこの事件は知りませんでした。
局には当然、強い批判が嵐のように寄せられました。速報を流すべきだった、アメリカのサテライトにすぐ切り替えるべきだった、なかにはもうTV3は絶対観ないという厳しい意見もありました。放送局として社会的に大きな事件は最新情報を報道するべきです。視聴者の意見はもっともです。今ではスタッフ全員がその意味を理解し、対応できるような体制になっています。
もうひとつ。朝と昼はインフォマーシャルばかりだと言う批判もあります。日本と比べたら、考えられないでしょう。しかし、現在のTV3の規模を考えると、仕方ないと言うしかありません。もし、朝の番組を放送するとしたら、担当スタッフは朝3~4時頃に出社しなければいけません。昼の番組を作るなら、7~8時に出社することが必要になります。つまり、ほぼ24時間体制を作らなければなりません。それがまだTV3には体力的に難しいのです。
この先もずっと時事問題を追いかけていくと思います。私はマオリですから、深くニュージーランドに関わったテーマ、例えば、この人こそニュージーランド人という人に、その人の人生を映し出すようなストーリーをじっくりとインタビューで聞き出していくような番組を作っていきたいと思っています。そして、その番組が視聴率に左右されずに続けられれば、これに勝るものはありません。

カテゴリ:テレビ
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