Vol.50 時代を飾るキウイ ニュージーランドTV3 John Campbell氏


毎夜7時からTV3のCampbell Liveのアンカーをつとめるジョン・キャンベル。毎晩様々な話題やインタビューを取り上げる報道時事番組だ。画面から伝わる、ちょっと生意気そうで自信満々なイメージとは裏腹に、彼の素顔は腰が低く、とても気を使う「好青年」という雰囲気。頭の回転の早さは的確に言葉を選びながら相手を引き込む口調に現れている。選挙の討論番組で司会をしても「どの候補者よりもしゃべる時間が長い」と批判されるほど。実際にインタビュー中もしゃべり出したら止まらない。しかし、思いやりと気遣いは人一倍だ。
現在ニュージーランドの国営放送TV ONEが様々な問題を抱え、視聴率の低迷に苦しむ中、TV3は絶好調。その「顔」とも言えるジョンにTV業界について語ってもらった。

ニュージーランドTV3 John Campbell氏

John Campbell
ジョン・キャンベル

TV3 キャンベルライブ・アンカー TV3 Campbell Live

ウェリントン出身。ヴィクトリア大学で英文学を学び、1989年に証券マンからラジオのジャーナリストに転身。91年TV3に転職。1997年にオークランドに引っ越し、98年より6時のニュースのプレゼンターとなる。ジャーナリストとしての受賞多数。2005年よりCampbell Live開始。クリスマス休暇中は、奥様と二人の子供とのんびり過ごした。
Campbell Live TV3 月~金19:00~19:30

プレゼンターへの道のり

私は大学で英文学を学んだ後、証券取引の仕事につきました。その後ラジオNZのビジネスリポーターに転職しました。当時はラジオNZに政府負担の研修制度があり、ジャーナリズムの全てを2年間で学びました。残念ながら、今はその制度はなくなってしまいました。そして、1991年にTV3より誘われて現在に至ります。TV3で始めは総合的なリポーターをし、その後政治記者になり、その後ドキュメンタリー番組「20/20」を3年半やり、1998よりキャロル・ハーシフェルドと共に6時のニュースのプレゼンターを始めました。現在、彼女はCampbell Liveのプロデューサーを務めています。
子供の頃はテレビの仕事には全く興味がありませんでした。英語は得意だったので、英文学を勉強しました。ジャーナリストになったのは、偶然の出来事ですが、なってみたら天職だという事に気付いたのです。1991年にテレビのリポーターになった時も、テレビのプレゼンターという職種は全く別の物だと思っていました。当時のプレゼンターはジャーナリストというよりも、テレビタレント的存在でした。そもそも、私がアンカーになるはずではなかったのです。キャロルが有名なプレゼンターであるジョン・ホークスビーと共にニュースを読む為にTV ONEから引き抜かれ、TV3に来たのですが、ジョンが辞めてしまったので私が急遽「代役」として起用されたのです。「ちゃんとしたプレゼンターを見つけるまで」という話だったのですが、結局7年も続きました。
今後ニュージーランドでテレビのプレゼンターになる為には、まずはジャーナリストとしての技術を磨く事です。プレゼンターという、カメラの前に顔を出すということだけを最初から望んでも、無理なことです。ジャーナリストとして、独自のスタイルを築き、何事にも屈せず、情を見せ、インタビュー上手になり、全てをこなせる実力をつけて初めて認められ、プレゼンターというポジションが可能になるのです。
私はジャーナリストとして8年以上のキャリアを積んでから6時のニュースのプレゼンターのポジションにつきました。それまで常に他人よりも優れた仕事ができるよう、人一倍努力してきました。しかし、それはプレゼンターになりたくてしたことではなく、良いジャーナリストになりたかったから努力したのです。ニュース番組のプレゼンターの仕事はカメラの前に座って他人が書いた原稿を読むことです。それ自体はあまり脳みそを使う作業ではありません。6時のニュース時代も、それだけでは物足りないので、ジャーナリストとしての報道も続けました。

変わるニュージーランド社会を反映

私がメディアの仕事を始めた頃と比べ、今はかなり競争が激しくなっていると思います。今ではどこの大学や専門学校でもジャーナリズムのコースがたくさんあり、優秀な卒業生が山ほどいます。しかし、NZはマーケットが小さいため、仕事はそうたくさんありません。例えばここTV3を見ても、多くの人々は同じ仕事を10年以上やっています。ということは、新しい人の入り込む隙間がないということです。業界に一度入り込む事ができれば、とても良く面倒を見てくれます。
ニュージーランドの人種構成は多くの移民によりだいぶ変わってきました。ヨーロピアンでないと、仕事を得ることが難しい時代もありましたが、今ではその逆だと思います。50年前にはニュージーランドはパケハ(ヨーロッパ系白人)かマオリがほとんどでした。しかし、2020年にはオークランドの人口の半分がヨーロピアン以外になると言われています。アイランダーやアジア人の増加に伴い、テレビ局の内部も国の人種の幅を反映する必要があります。ECubeの読者などアジア系の人々にとっては、テレビ業界に足を踏み入れるにはとても良い時期だと思います。特にTV3はオークランドで視聴率も高く、移民に支持されているチャンネルです。私は、将来的にそれぞれの国の言葉の放送や、字幕などをもっと取り入れるようにしても良いと考えています。それができれば、成熟した社会である証拠だと思います。
1989年にTV3が開局する以前は、NZには国営放送しかありませんでした。民営放送は、法律で禁止されていて、国営のTV ONEとTV2は市場を独占していました。そして、TV3が初めて民放として放送を開始した時、何十年も市場を独占し続けていた局に対抗したのです。人々の長年の習慣を変えることは難しく、1年以内でつぶれそうになりました。しかし、その後国営放送を見る習慣を持たない、移民がどんどん増えていきました。それまでの習慣や固定概念のない彼らはTV3を支持してくれました。現在の若者や学生では、TV3のなかった時代を覚えている人は少ないでしょう。今では、昔から同じやりかたを続けていた国営局が慌てて改革を余儀なくされているのです。TV3の開局当時は、視聴率など上がるはずがないと思われていたのに。

番組作りへのこだわり

昨年は3月にCampbell Liveがスタートし、選挙もあったので、とても忙しい年でした。この番組が始まってから、私の仕事は大幅に増えました。1週間に55~60時間働きます。朝9時頃に出社し、8時半頃に帰ります。これを週に5日続けます。小さなチームなので、全てを自分たちでやらなくてはいけません。
それに比べ、ニュース番組は余裕があります。毎晩ですが、お天気があったり、スポーツがあったり、海外の局から買う素材もあります。キャンベルライブは、全て最初から自分達で造り上げなくてはいけません。キャロル・ハーシフェルドと私を含む4人でこの番組を作っています。プロダクションミーティングでは、リポーター7~8人が常に何を追っているかを話し合います。リポーターがやりたい特集があれば、その企画を我々に売り込まなくてはいけません。ニュース番組では、リポーターに指示をするだけですが、Campbell Liveではリポーターたちが企画を出します。これはとても良いシステムです。そして、編集スタッフのレベルがとても高いので、高品質の番組を提供することができるのです。
私の一日は、まず朝ミーティングをして、その日の内容を再確認します。既に編集された部分を見直し、変更したり、次週の番組の打ち合わせをしたりします。それから、番組の原稿を書きます。オープニングの部分、リポーターのイントロなど、原稿は全て私が書きます。これは毎日3~4時間の作業です。
今の私の肩書きですか?今はプレゼンターであり、リポーターであり、プロデューサーでもあります。アシスタントがするような仕事でもすることがあります。編集もします。小さなチームなので、やらなくてはいけないことは何でもするのです。
中でも、私が一番好きなのは放送用の原稿を書く事です。印刷物の為に書く事は苦手なのですが、放送用の原稿は楽に書けるんです。印刷物と違い、放送用は文法よりもリズムや、テンポを考えながら、聞いて心地よいように言葉を選びます。また、映像で伝えられていることをわざわざ言葉にする必要はありません。違う情報を盛り込むことが大切です。例えば、首相が誰かと会ったというニュースの場合、会ったということは画像を見れば明白なことなのです。良いテレビのライターというのは、映像に言葉を絶妙にマッチできる人です。そして、どの時点で沈黙を入れて画像を尊重するかというのも、大きな技術なのです。
日頃あまりテレビは見ません。時間もないですが、一日中テレビの仕事をしていると、家に帰ってまで見たいとは思わないのです。自分の番組は絶対に見ません。自分を見るのはあまり好きではありません。テレビの世界というのは、仮装大会のような物です。うまくやる為には、本当の自分よりも大きな自分になりきらなくてはいけないのです。毎晩、カメラの前に出るときは、普段の自分とは違う自分に仮装しているのです。普段はつまらない、マジメで冴えない奴ですが、テレビではもっと自信に満ちて大きい人間です。私が自分の姿をテレビで見ると、別人を見ているような気がします。だから、見ないようにしているんです。それに、テレビは人を惑わす力を持っています。誤ってナルシストにならない為にも、自分のテレビの姿は見ない方が良いでしょう(笑)。

カテゴリ:テレビ
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