Vol.66 Career up in NZ |
現在、オークランド大学の教育学部と応用言語研究学部の博士課程で研究をしながら、同大学で教育心理学の講師としても働く水谷公美さん。1995年にNZへ渡航して以来、つねにNZの教育分野に関わってきたという彼女。そんなNZの教育現場と繋がりを持ちつづけ、今現在NZの教育界の中枢であり、権威者の揃う研究室に在籍する公美さんに、これまでの道のりとNZの新教育アセスメントシステムNCEAについて語っていただいた。
様々な英語習得環境との出会い
現在、オークランド大学の教育学部と応用言語研究学部の博士課程で研究しながら、週に一度、同大学で学生たちに教育心理学を教えています。教壇に立っていると、私は本当に教えることが好きで、もっと良い教育者になりたいって心から思うのです。 ニュージーランドで教育の道へ しばらくして会社に復帰したのですが、震災の影響で仕事内容が変わってしまうことから退職する決心をしました。またその頃、震災の恐怖から夜眠れない日々を送っていて、心身ともに疲れきっていたのです。それで、地震のニュースが届かない遠い所に行きたいと思い、NZに来ることにしたのです。渡航前に、ボランティア・ワークビザを取得し、まずNZの小学校でアシスタントとして働き、それから高校で日本語教師のアシスタントをすることになりました。数ヶ月が経った頃、私がメインで日本語を教える機会があって。授業後に先生に教え方のアドバイスを受けました。その時、「学生はあなたのことを先生だと思っているのよ」と言われ、ハッとして。もっと上手く教えられるようになりたいって思ったのです。その高校では、日本語以外の教科も教える機会を与えていただき、私の教育への関心が高まって行きました。そして、周りの先生方の「さとみなら、NZでいい先生になれるよ。先生になる勉強をしてみたら」という言葉に背中を押され、1997年にオークランド大学教育学部の前身のオークランド・カレッジ・オブ・エデュケーションで日本語教師になるための勉強を本格的に始めたのです。その時には10年後の今、ここにまた居るとは思ってもみませんでしたね。カレッジ卒業後、オークランド大学で日本語講師として働くことになりました。働いているうちに、同じ内容を同じように教えていても、学生の日本語の習得に差がでることに気付き、結果が思うように出せずにいる学生を助けてあげるにはどうすればよいのだろう?と思い、教え方を勉強することにしたのです。それで1999年から、仕事を続けながら、オークランド大学の応用言語研究学部修士課程で第二言語習得理論の勉強を始めました。2002年には、私の修士論文をアメリカの学会で発表する機会があり、世界中のいろんな学者さん達と交流したのはこの時が初めてでした。修士課程修了後、指導教授から同学部の研究助手にならないかと誘いを受け、興味があったことから日本語講師と両立することにしたのです。研究目的は、外国語学習に関わってくる二種類の知識のレベルを測定するためのテストの開発でした。中学生ぐらいになってから外国語を学んで流暢に話せるようになるには、顕在的な知識(注1)と潜在的な知識(注2)が必要になってくるんです。英語の文法を一生懸命勉強したけど、英語が流暢に話せないという方も多いかと思いますが、流暢に話すには、高いレベルの潜在的な知識も必要なんです。 その学部で働いていた頃、博士課程への進学を勧められ迷っていました。そんな時、心理学者の友人が進学を強く勧めてくれたり、またちょうど『テストのタイプによって、ティーチングとラーニングの質も変わる』という論文を読み、語学教育におけるこのテーマで勉強がしたいと思い、応用言語研究学部にも籍を置きながら、この研究が盛んな教育学部の博士課程に進学を決めました。
教育者としてNZへ恩返し
NZでは、2002年に新教育アセスメントシステムNCEAが導入されました。ここ数十年間、世界の先進国の間で、アセスメントを変えることによって教育改革を行う動きが出て来ています。狙いは「私はこれができる」と言える人材を育成すること。現在、日本とドイツは、この流れに乗っていないのですが、おそらく比較的安定した経済大国なので、現状維持に抵抗がなく、世界で通用する人材育成に危機感がないからではないかと言われています。NZも以前は日本と同じような他の学生と比較するテスト方式でしたが、NCEAは、他の学生の点数に左右されることなく、各自の成績があらかじめ設定された基準に基づいて評価されるというテスト方式です。ただ、NCEAは、導入されたばかりで研究結果が少ないことから、NCEAについて、いろんな意見が飛び交っていて。私は、実際にNCEAがどのように先生や生徒に影響しているかを調べて、今後の改善に結びつける研究を行っています。教育改革の研究では、テストがティーチングとラーニングに及ぼす影響は、先生や生徒がそのテストをどのように思っているかというフィルターを通して変わってくると考えられています。簡単に言えば、良いテストでも先生と生徒が良いと思わなければ、良い影響が与えられないというような。最近私が行った、高校日本語教師と日本語を勉強している高校生を対象にした『NCEAにおける見解』の研究の結果では、モチベーションや達成感などという外部の力では変えることが難しい心理的な要素にポジティブな影響があり、仕事量が増えたなどというシステムを少し変えると改善できる要素にネガティブな影響があるという結果がでています。ですので、NCEAはまだ改善すべき点は多いにしても、改善が可能ではないかと考えられています。
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