総集編 (Vol.1〜23):英語学習方法10のキーワード
ニュージーランドで暮らす上で、私達日本人にとって切り離せない課題が英語である。その英語の学習方法にスポットライトをあてたこの企画「英語達人列伝」ではこれまで23人23通りの英語習得方法を紹介してきた。
各達人はそれぞれの個性に合った方法で英語を習得しているが、いくつかの共通点も見られる。総集編の今回はこの共通点からキーワードを出し、各達人の意見や方法をピックアップしてみた。自分のタイプにあった達人を探して、もう一度バックナンバー、またはwww.ecube.co.nzにアクセスしてみよう。必ずあなたの英語習得の役に立つはずだ。
KeyWord 1:英語は嫌いだった
23人の達人うち、英語が好きだったという人は16人。一方、興味が無かった、嫌いだったと言う人は7人である。英語が嫌いだった達人は仕事や趣味などの目的達成のため、英語のスキルを上げていった。
VOL.11
「中学、高校と英語は大嫌いでした。テストはいつも赤点ギリギリ。好きな科目は数学でした。〜中略〜目的は正しいモノを作るところにありました。しかし結果的には英語の言い回しを増やすことになりました」
歯科技工士の藤掛茂美さんは仕事をする上での技術は問題は無かったが、生活する上で英語の必要性を感じたと言う。
VOL.16
「学生の頃に英語が好きだったわけではありません。英語どころか勉強そのものも得意だとは言えませんでした」
達人の中では最年少の渡辺真代さんは高校卒業後は美容師の道を歩んでいた。
KeyWord 2:ゼロからのスタート(最初の英語力)
英語の達人といえども、最初から今の英語力があったわけではない。日本である程度英語を勉強してきた人でもニュージーランドに来た当初は英語で悔しい思いをし、それがきっかけになり努力をして現在の英語力を得たという人も多い。
VOL.5
「読み書きはできても話す、聞くということが自己嫌悪に陥るくらいひどかったのです」
マーケティング会社の日本市場を担当している育子ブートさん。
育子ブートさん、新本ゆかさんは共に日本では旅行業界に携わり、仕事でも英語を使っていた。
VOL.17
「NZに着くや否や1週間ホテルに滞在しました。そのときホテルで見たニュースがまったくわかりませんでした。銀行や買い物に行っても言葉が聞き取れないのです」
オークランドの病院から集められる患者のカルテのデータ管理をしている新本ゆかさん。
VOL.20
「ホームスティを始めてすぐにその自信は吹き飛びました。ホストマザーの言葉が速すぎてまったく聞き取れなかったのです」
セラピックマッサージ、レイキ治療を行うトモコ・グリフィンさんは日本で学生時代も就職してからも英語学校やサークルに通っていた。
KeyWord 3:現場で?それとも机で?
達人はそれぞれの置かれた立場や環境を上手く利用して英語を取得している。それは学校であったり、職場であったり、生活の場であったりする。ではいったいどうやってその環境を利用してきたのであろうか?
学 校
VOL.3
「誰かに教えてもらうということは刺激になります。その刺激が私の英語の壁を破りました。今までは自分で覚えた英語しか使っていなかったのです」
日本語教師をしながら、もう一度英語を見直すために学校に通った内丸敬子さん。英語の習得には教えてもらうという外からの刺激が大切だと思い、英語で仕事をはじめた後に、再び自ら学校に通ったと言う。
VOL.18
「学校へ通っている中で先生と仲良くすることは英語上達には有効です。第一に正確な英語を教えてもらうことができるからです」
英語学校の日本人カウンセラーの高田あつ子さんは自分の語学学校での体験を今の生徒に伝えている。単に学校に通うだけでなく、先生を充分に活用することが大切だと言う。
職 場
VOL.5
「伝わればいいと妥協するのではなく、正しいビジネス文章を書こうと思いました。そのため相手から来るファックスや手紙も私にとっては教科書になりました」
育子ブートさんは相手からの書類をビジネス英語の教科書として利用。各種のフレーズを自分の英文作成に転用した。
VOL.10
「仕事で少しでも関わった人達に声をかけました。ドライバーには色々と質問をして街のことを聞き、相手が話す言葉を一言一句そのまま使いました」
健康食品開発会社勤務で元ツアーガイドであった伊藤大輔さんは机に向かって勉強するのが性に合わない自分は現場で頑張るしかないと一念発起した。
VOL.11
「指示書の確認をする時に、必ず言葉や表現を変えて確認していました。目的は正しいモノを作ることです。しかし結果的には英語の言いまわしを増やすことにつながりました」
藤掛茂美さんは仕事でさし歯などの補てつ物を作るときに納得がいくまで何度も違う言葉や言いまわしを使って指示書を確認していた。
VOL.12
「日本語で書いても微妙なニュアンスになる内容の英文はすべて上司にチェックしてもらいます。そこで今まで使った良い表現は全てファイリングしてあります」
大手保険会社で保険金請求の審査をするヒロミ・マーティンさん。保険金請求が却下された相手からの問い合わせのメールに回答する文章では、上司が使う英文の言い回しなどが勉強になると言う。
生 活
VOL.6
「練習中にチームメイトが『Suck it in』としきりに言っていました。後で聞くと息をしろと言うことでした」
大手家電販売店に勤める小俣文彦さんは渡航のきっかけとなったラグビーの練習中にチームメイトから英語を吸収していった。
VOL.9
「例えばビールの『Steinlager』はキウイ達から聞けば『スタインラガー』と聞こえます。しかし文字を見ると『ステインラガー』と読んでしまいそうになります」
キウイが電話の声をネイティブと間違えるという和食シェフの工藤達博さんは何気ない会話の中でも、注意深く相手の言葉を捕らえるようにしていた。
KeyWord 4:コレがあるから今がある(具体的習得方法)
ここでは一番気になる、具体的な英語の習得方法をピックアップした。暗記するという作業に変わりはないが、それぞれ自分の性格や環境にあった方法や、意識をするポイントを考え出している。
フレーズ編
達人はフレーズを覚えることで言葉がスムーズに出てくる、舌が上手く廻るようにしようと努力していた。
VOL.2
「ヒットチャートの曲で気に入ったフレーズがあれば家に帰って何度も繰り返し、声に出して覚えました」
大阪のラジオ局FM802の朝の声として有名なジーン長尾さん。
VOL.17
「曲を丸ごと覚え、同じスピードで口ずさむことで、英語のスピードやリズムを覚えていました」
英語のコミニケーションでまったく問題がないとキウイに言われるツアーガイドの一人である高木久子さん。
二人は興味のある英語の歌を繰り返し聞いて、口ずさみ、英語のリズムを掴んだ。
VOL.8
「一つの英語の録音テープを繰り返し聞き、真似をして発音することは、野球の素振りと同じです。体で英語の思考パターンを覚えて、どんな英語が投げられても綺麗に打ち返せるようにすることです」
日本人ビザコンサルティングの第一人者である松本圭司さんは英語が反射的に出てくることを目標に繰り返しの練習をした。
VOL.13
「英文法の本の例文はすべて暗記しました。例文は全て基本のフレーズです。それを音として頭に入れるために、何度も繰り返して読んだのです」
映画やテレビ撮影の通訳をする小澤汀さんは、文法のフレーズを基本事項と捉え、理屈で覚えるのではなく、音で覚えることを一番に考えていたと言う。
VOL.20
「鏡に向かって表情をつけながら発音の練習をしました。これによって自分が今発音している意味を視覚的にも理解することができたのです」
トモコ・グリフィンさんは耳と口だけでなく、目も利用して英語を習得していった。
ボキャブラリー編
どんなに文法が頭に入っていても単語がわからなければ正確な意味を捉えることはできない。そのためにボキャブラリーを増やすことは大切。
VOL.9
「辞書を読書していました。表紙のタイトルから裏表紙の値段まで全て読みます。これを2、3回繰り返します。全部覚えているわけではありませんが、一度は頭の中に入れた言葉なので次に出てきたときにはスムーズに覚えることができるのです」
工藤達博さんは、最初、英語イコール単語という考えでボキャブラリーを増やしていた。
VOL.15
「試験に出る英単語という本の単語は全て暗記しました。ボキャブラリーを多くして文法を頭に叩き込み、試験に備えるための勉強をしたのです」
小児心臓外科医の笠原真悟さんは受験勉強で覚えた英単語でもしっかり役に立っていると言う。
VOL.21
「辞書を破いてトイレに張っておいて、覚えたら捨てるようにしていました。また油性のペンで手の甲に5つの単語を書いて覚えるようにもしました。5つは毎日繰り返し続けるにも適量です」
5歳から18歳までの一貫教育を行う学校で日本語教師をする稲葉悦子さんはいくら文法が完璧でも日本語でも単語の意味がわからなければ話が理解できないと言う。
KeyWord 5:アンテナ
どの達人も情報を少しでも多くキャッチして、それを仕事に、そして英語習得に活用している。
VOL.2
「言葉は生き物です。いつ新しい言葉に直面してもいいように専門用語をチェックしています」
ジーン長尾さんは音楽専門誌の『ビルボード』や『キャッシュボックス』を取り寄せて読んでいた。
VOL.12
「トラベル、新聞、医療・保険など常に目的は他にありました。その目的に進む中で、何気ない言葉でもアンテナを張っているかどうかで聞き流すのか、次にその表現を自分が使えるのかが違ってきます」
ヒロミ・マーティンさんは些細な事でも英語力アップに結びつけていた。
KeyWord 6:あいまいな返事
多くの人が英語を話している中で、あいまいな返事をしてしまうことがあったという。それを克服することも英語上達の大切な方法である。
VOL.14
「日本人の『はいはい聞いてますよ』の感覚でうなづくと、同意している、理解していると解釈されます」
政府公認の資格を持つ医療通訳の亮子エミリー・マコーネルさんは、ドクターは相手がうなづいていることを理解していることと捕らえるため、自分が理解していないのなら、絶対に相づちを打たないよう注意が必要だと言う。
VOL.15
「ある時、同僚に簡単に『YES』と言うなと言われました。『NO』というのは相手の言葉を理解して、はじめて言える言葉だと言うのです」
笠原真悟さんはあいまいな返事をしないことを英語習得での最初の目標にした。
VOL.19
「理解していなくてもつい『YES』と言ったり、わかったふりをしてしまうことがあるでしょう。ですが接客でそれをしてしまうと後で大きな問題になるおそれがあります」
ビザコンサルティング会社に勤務している岡上恭子さんは責任感という点でもあいまいな返事を避けるべきだと言う。
KeyWord 7:日本語
英語を学び始めた初期の段階で日本語の環境を遠ざけたり、日本語風の英語ではなく徹底的にネイティブの発音を真似ることで成功した達人もいる。
VOL.16
「例え相手に『イヤな奴だ』と思われても英語を習得したいという気持ちが強く、日本語を絶対にしゃべらないと頑固になっていました」
渡辺真代さんは一年という限られた時間の中で英語を習得しようと、その間は日本語の環境を自ら遠ざけていた。
VOL.22
「学校でもラジオから聞こえるような英語の発音を心がけました。当然、他の生徒からは『カッコつけている』という目で見られました」
公立幼稚園教諭のユキコ・ペンフォルドさん。日本の先生が教えてくれる英語より、ネイティブが普通に話している英語が正しいに決まっているという信念でネイティブの発音になるように心がけていた。
一方、英語を習得するに従い、また英語を習得する上で、正しい日本語を身に着けることが絶対必要だと言う達人も多い。
VOL.1
「中曽根元首相へのニュージーランド財界代表のスピーチでも実感したのは、発音はもちろんのこと、きちんとした日本語を使い分けられることの重要性でした」
オークランドと福岡市が姉妹都市の調印を結んだ時に通訳をした大森栄美子さんはいい通訳者になるためにの第一歩はきれいな日本語だという。
VOL.7
「NHKの英語のニュースで出てくる表現や現代用語は仕事だけでなく通常の会話でも必須です」
高木久子さんはNHKで日本語環境をキープしているだけでなく、ニュースの英単語もチェックしている。
VOL.14
「英語を話す上では、文法的に正しい日本語を理解していないと英語でも文章が成り立たないことを私達は認識する必要があります」
亮子エミリー・マコーネルさんは法廷での通訳を行うこともある。その際に日本語でも主語や述語をはっきりさせることは英語に変換する上で大切な事だと言う。
KeyWord 8:英英辞書
達人全員が使っているのが英英辞書。英語の勉強を進めるに従い、使用する辞書を和英から英英に変えている。英英辞書を使いはじめることは頭の中で英語を捕らえる時に、日本語に訳して捕らえるのでなく、英語のまま捕らえることができるようになった、一つの指標かもしれない。
VOL.4
「英語の単語に日本語の意味を持たせるのではなく英語の意味で覚えると言うことです」
クラフトアーティストと通訳・翻訳家という二つの顔を持つ佳子ルーフィウさんは東京ディズニーランド立ち上げ時の通訳としても活躍した。
KeyWord 9:スラング
英語を習得する上で必ず出てくるスラング。使うことを容認する達人は誰もいないが、英語に興味を持ったり、慣れたりするキッカケとして有効活用した人もいる。逆に一切、頭に入れない方がいいという考えもある。
VOL.9
「映画を見ていて辞書に載っていないスラングを教えてもらうことにより英語の勉強のキッカケになりました」
工藤達博さんは英語に興味を持つキッカケとなったのはスラングの意味が理解できたことだったと言う。
VOL.7
「スラングも同じように友達の使っている言葉をそのまま頭に入れていました」
高木久子さんが、初めて触れるネイティブの英語をすべて吸収しようとしていた時の言葉。しかし、実際に会話でスラングを使ってしまい、恥ずかしい思いをした事もあると言う。
VOL.23
「英語を学んでいる人でスラングだけでコミニケーションを取ろうとする人がいますが、相手は基本の英語力があるということを忘れてはいけないと思います。それだけではとても危険だと思うのです」
テキスタイルの輸出入業を営む今井久美子さんは相手によって言葉を使い分けるのがコミニケーションだと言う。
VOL.8
「きれいな英語を話すためには、きれいな英語を覚える必要があります。正しい英語を使えないうちから、スラングを覚える必要はないと思っています。外国人である我々にとってはまず、ビジネスでも通用する表現を学んでおく必要があります」
松本圭司さんは、できることなら最初からスラングは覚えないほうが正しい英語を多く覚えられると言う。
KeyWord 10:ニュージーランド
ニュージーランドに来ている人の多くは目的の中に「英語」が入っている。しかし、ただ住んでいるだけでは英語の上達は難しいという達人もいる。
VOL.11
「一年も外国で暮らせば英語ぐらい喋れるようになると思っていました。しかし、一向に上達した感じがありませんでした」
藤掛茂美さんは日常英語のハンディの悔しさをバネに勉強を始めた。
VOL.23
「ニュージーランドに来て1年ほど経った頃だと思います。なかなか英語が上達しないことで両親が(英語の)家庭教師を雇うことにしたのです」
今井久美子さんがNZに来たのは12歳の時。よく言われている、子どもは自然に英語を覚えるという風説には一致しなかったと言う。
VOL.4
「帰国子女だからといって苦労していないわけではありません。満足ができる英語力を身につけるためにはそれだけの時間と努力が必要です。英語と日本語の語学力が同等にあるのがバイリンガルだと思っています」
佳子ルーフィウさんは帰国子女であることと英語ができることとは別だと言う。