E-CUBE 2005年09月

VOL.44 9月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




Career up in NZ : 専門職に就いてキャリアアップ中

<ドッググルーマー:片桐 貴子 さん | メイン | オペア斡旋業:小沢 康子 さん>

バンクオフィサー:新家 愛子 さん

新家 愛子 さん貪欲に知識を吸収し将来に向けて確実にステップアップ

Queen St.のナショナルバンク・オークランド支店に入るとすぐ目の前にあるカウンターの向こうに、いつもにこやかな笑顔で訪れる客を迎える新家愛子さんの姿がある。同銀行でのカスタマーサービスオフィサーとして勤務する傍ら、夜間はAUTの会計学修士課程に通いながら、家事や育児をもこなす彼女の超多忙な生活を上手く切り回すコツは、今日できることを決して明日には回さないことだという。

Aiko Niinomi
新家 愛子(にいのみ あいこ)
The National Bank of New Zealand
Customer Service Officer

1975年生まれ。愛知県西尾市出身。1994年語学留学のためNZへ渡航。2003年AUTのビジネス・ディプロマコース終了後はナショナルバンクへ就職。夜間はAUTの会計学修士課程に通っている。多忙な生活ではあるが、週末は極力、今年5歳になったばかりの愛息子の昇大(しょうた)君と過ごしている。

NZで語学を習得

 日本で高校卒業後は専門学校に進学し、ツーリズムと英語を中心に学んでいたのですが、1年経っても思うように英語が伸びずに悩んでいることを母に相談したところ、留学を勧められ、1994年にNZへ語学留学しました。当時の私の英語力は基本的な会話が何とかできる程度でしたが、NZ滞在中はできるだけ日本人と一緒に行動しないようにし、英語環境に身を置くようにしたことで、目に見えて伸びていったように思います。
 1年後にいったん日本に帰国しましたが、翌年1996年にワーキングホリデー制度を利用してNZに戻り、NZ国内を旅行して回りました。ワーキングホリデー期間終了の3ヶ月前に、オークランドエアポートの免税店で働きだした頃からは、日常会話で英語に困ることはなくなっていました。
 ワーキングホリデー期間終了後は日本に帰り、1年ほどは車の販売業営む実家の手伝いをしていましたが、NZ滞在中に知り合ったNZ人男性との間で将来的な話も出だしたので、1998年に再びNZに戻りました。以前も勤務していた免税店に就職し、空いた時間には彼のビジネスを手伝っていました。この間に結婚、出産も経験し、多忙な毎日を過ごしていました。
 しかし、約2年後には離婚を経験、将来に対する大きな不安を抱きはじめました。NZで生活レベルを保つためには何か資格が必要だと思い、2001年8月から2年間はAUTのビジネス・ディプロマコースに通いました。ビジネスの流れは実家のビジネスを手伝っていたため、ある程度理解していたので、英語での授業もそれほど苦にはなりませんでしたが、ロールプレイやグループディスカッションの授業では、英語を間違うことへの恐れや恥ずかしさから、発言できるようになるまでにはかなりの時間を要しました。
 また、会計学などの専門用語は難しいものが多く、覚えるのに苦労しました。中でも課題のレポートは、いくつもある同じような意味の単語を、状況ごとに使い分けなければならず、毎回必死で仕上げていました。はっきり使い方がわからない場合は英英辞典で調べたり、ネイティブの友達に聞いたりして、語彙を増やしていきました。

日本人スタッフとしての仕事

 ナショナルバンクには日本人スタッフとして雇われたわけではありませんが、やはり同じ日本人として、日本の方が慣れない外国でもきちんと口座の内容を理解して上手に使ってもらえるようにお手伝いしたかったので、場所的に日本人学生などが来客しやすいクイーンストリートのオークランド支店への異動を希望しました。異動を希望したもう一つ理由としては、カスタマーサービスの仕事だけで満足できなかったことがあります。銀行業務の中でも比較的重要な部分である、実際の口座開設業務を担当するバンキングコンサルタントのポジションにつくためには、セールスの成績がものを言い、そのセールスの成績を上げるためには、日本人である特性を活かした方が有利だと思ったのです。そして、その希望が叶い、2004年3月からオークランド支店へ転属になりました。
 早速、日本人の方に本当に納得したうえで口座を開設してもらうためには、まず安心感を与えるという意味でも日本語資料の作成は不可欠であることを上司に提案しました。上司もそれに賛成してくれ、口座開設の流れや各種サービスについてなど、15種類の日本語の添付書類を作成しました。
 また、顧客がどんな口座を求めているかを把握することは最も重要で、日常的な会話も含めて、できるだけ密に話し、その顧客に最も合った口座を勧めるようにしています。時には銀行員としての立場からではなく、友達になったような気持ちで話すことも大いに役立ちます。日本人顧客のファイルを作り、名前だけでなく容姿の特徴や通っている学校、興味のことなど、話した内容をその都度メモして、親近感を持ってもらえるような会話作りを工夫しています。そして、最後にはかならず笑顔で「遊びに来てくださいね」と、あえて「遊びに」という言葉を使うことで、いつでも気軽に来られるような雰囲気を作るように心がけています。
 今年に入ってからは語学学校や、留学情報センターへのマーケティングにも力を入れました。語学学校ではすでに効果が出始めています。現時点では開拓は一通り終ったので、これからはフォローをしっかりしていきたいです。
 最近ではセールスの成績も以前より伸び、表彰されることも度々になりましたので、次回バンキングコンサルタントのポジションに空きが出たときは、ぜひ挑戦したいと思っています。それに向けて、バンキングコンサルトとして欠かせないローンの成り立ちやクレジットチェックについての知識を目下勉強中です。
 いずれは日本人の方にナショナルバンクをもっと知ってもらうために、日本語ウェブサイトを開設したり、アジアンマーケットに向けて日本に支店を設立するための業務にも携わりたいです。

日本人顧客へ望むこと

 一つ、日本人スタッフとしての仕事をする中で改めて驚いたことは、往々にして日本人は、NZでも日本と同じようなサービスを求めがちで、日本人スタッフに頼り切りになる傾向があるということです。これは銀行だけに限らないことですが、基本的にNZでは、日本のような
「至れり尽くせり」のサービスは提供されません。日本人スタッフがいるから安心して要望や不満を口にできるということもあるのだと思いますが、日本の銀行では当たり前に行われているサービスでも、NZではセキュリティーや会社のポリシー的な問題から不可能なことも多いのです。
 もちろん、私個人の采配でできる範囲のことなら要望に応えたいのですが、私も日本人スタッフではあってもこちらの組織の一員である以上、こちらのやり方に従わなければならないのです。「郷に入れば郷に従え」という諺もありますが、NZで生活していくのですから、日本人スタッフがいる、いないに関わらず、NZでは日本とは違う考え方で、違うシステムを採用しているということを理解して欲しいと思います。そして、もっとチャレンジして欲しいと思います。一切合切を日本人スタッフに頼るのではなく、少し難しくても、自分でできそうなことは自分で解決していく過程で、身に付くことはたくさんあります。そのためのお手伝いなら、いつでも喜んでしたいと思っています。

将来に向けてステップアップ

 現在は、日々の銀行業務の中では学び得ない、もっと大きな意味での銀行のシステムを知るために、AUTの会計学修士課程を専攻しています。銀行を取り巻く世界の経済情勢や経済のノウハウ、経営についてなど様々な知識を身につけて、世界経済の動きや株の動向などが読めるようになることで、将来に向けてのステップアップに確実につなげていきたいと思っています。
 授業は夜間で週2日ですが、課題も多く課せられるので、仕事と勉強、家事、子育ての両立で毎日時間に追われ、疲れていると、つい様々な言い訳を見つけてはサボってしまいがちですが、今日できることを決して明日に回さないことを基本に、スケジュールをきっちり立てて生活するようにしています。 
 そして、これはかなり先の話になりますが、将来的には個人でファイナンシャル・アドバイザーとして、資金運用のお手伝いをしたいと思っています。そのとき、今勉強していることやナショナルバンクでの勤務経験は大いに活きてくるはずです。その他、歴史や税金、話術など、学びたいことはまだまだたくさんあって、1日24時間では足りないくらいです。特に歴史は、例えばオイルショックなどの歴史的事件が起きたときに情勢がどう動いたかを知ることで、先を予測する力を養うことにもつながるため、何とか時間を見つけて近いうちには勉強を開始するつもりです。

バンクオフィサー:新家 愛子 さんと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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