オークランドの自宅でいろとりどりのビーズに囲まれてアクセサリー作りをしているマッギー千恵子さん。家事、育児の合間に趣味を持ち、ニュージーランド生活を楽しんでいた。

この国との関わりは10年前にさかのぼります。私は短大を卒業後、就職し、精神薄弱者のための指導員として施設で2年間働いていました。そして、その間に知り合ったキウィ男性との結婚を期にニュージーランドに住むことになったのです。
この国には、それまで旅行でも訪れたことなどありませんでした。来た当初は、英語をしゃべることが出来ず、知り合いもそれほどいなかったため、はじめての国での生活に少し戸惑いを感じることもありました。ですが、ソーイング、ビーズアクセサリー作り、ガーデニングなどを趣味として続けることができたため、充実した毎日を送ることが出来ました。そして、知り合いを増やしていきながら、ビーズアクセサリー作りにのめり込むようになったのです。
 今思うと、あるとき友人にこんなデザインのアクセサリーを作って欲しい、と頼まれたことがはじまりだったのだと思います。それまでにも友人とお互いの家でお茶を飲みながら話す機会に私が作っているビーズアクセサリーのことを話したり、作品を見せたことはありました。ですが、ビーズアクセサリーは、普段自分が身につけるためのものでした。
 友人から頼まれて作ったものはとても喜ばれました。それから、日本の雑誌に載っているものを見せられ、こんな風に作って、とかこの服に合うネックレスを作って、などと友人から少しずつ注文を受けて作るようになったのです。

魅力は色を楽しむことから

幼い頃から母が絵を描いているのを見て育った影響もあるのかも知れません。また、私はクレヨンに似たクーピーと呼ばれるペンシルの削りかすを混ぜて色遊びをすることが好きでした。
 色の組み合わせに大変興味があり、ビーズアクセサリー作り以外のことをしていても、この色とこの色を組み合わせてとか、この色は使ったことがないから試してみようとかを考えていました。子どもがぬり絵をしているかのように、ビーズであったり、刺繍であったりと対象が異なっても、作品を完成させていく過程で色遊びをしていくことが好きなのです。
 色だけでなく、ビーズアクセサリー作りの材料となるビーズは様々です。どんなパーツを選ぶかで同じデザインのものでも違った印象を与えます。パーツには例えば、素材によらず丸い形のラウンドビーズ、カットの入った丸いビーズであるラウンドカット、楕円球体のオーバル、長細い楕円形のライスなど、いろいろな形があります。また、光がまったく透き通らない加工がされたものや、つや消しされたものなどもあります。ガラス、天然石、骨などの素材も様々で材料を選ぶことから楽しむことが出来ます。一度は耳にしたことがあるかも知れませんがスワロフスキーという種類は、オーストラリアのスワロフスキー社で作られるクリスタルビーズで、世界でトップクラスの品質と言われているビーズです。精巧なカットと鉛の配合により、キラキラと光り輝くビーズで人気があります。色、形、質感などの組み合わせは無限でビーズアクセサリー作りは十人十色だと思います。

誰でも簡単に手軽にはじめることが出来る。

以前は、ビーズを扱うお店も種類もそれほど多くありませんでした。ですが、今ではオークランドには、ビーズ専門店がいくつかありますし、刺繍屋さんで扱っているところもあります。種類も子どもが遊ぶようなものから、質のいいものまで幅も広がってきたように思います。
 最近では、インターネットから購入することも出来るので欲しい形や色のビーズを簡単に手に入れることが出来るようになりました。例えば、日本で運営されているサイトで購入すれば、海外発送され、3、4日後には配達されてしまうのです。
 また、数年前には、ビーズアクセサリー作りが日本の雑誌で特集を組まれるほどブームになっていたので興味を持った方も多いと思います。それに私のようにニュージーランドで生活している主婦でも空いている時間を利用して楽しめる趣味のひとつだと思います。それは基本的に難しい知識や材料、道具などが一切必要でなく、気軽に誰でもはじめることが出来るからです。
 目的のアクセサリーに応じて、自分で形、色などをデザインすることから始まります。そして、英語ではround nose plier(ラウンドノーズプライヤー)と呼ばれるピンやワイヤーを丸めるときに必要なやっとこやflat nose plier(フラットノーズプライヤー)と呼ばれるワイヤーを曲げたり、ジャンプリングを閉じたり、ボールチップを閉じたり、と幅広く活用するペンチ。その他にニッパーやビーズ細工用のトレイなどを使用しながら作品を作り上げていくのです。
 作品の完成までには何工程もあり一概にこうすれば出来るということではありませんが本などの作り方を参考にしてアレンジしています。
 例えば、基本のモチーフに花やトンボなどがあります。それらの作り方を覚えれば、指輪にしたり、イヤリングにしたりと応用できますし、色や材料によってカジュアルな感じに仕上がったり、ゴージャスになったりするのです。

家事、育児との両立。

毎朝、頭の中でその日の予定を整理することからはじまります。子どもがいますからビーズアクセサリー作りばかりしているわけにはいきません。ですから、うまくバランスを取りながら趣味を楽しむためにも、考えるのです。考えることでちょっとしたアイデアが浮かぶこともあります。
 実際は、ほとんど予定通りに進むことはありません。というのも、子どもはジュースをこぼしたり、目を離しているとちょっとしたことで兄弟げんかしたりと常に私の予想を超えることをしますから。ですが、その考えるという時間自体も楽しんでいるのです。
 別にビジネスでしているわけではありませんから、スローペースでコツコツと進めています。今まで友人から頼まれたものも時間が取れずに1ヶ月近くかかってしまったときもありました。ですがみんな気長に待ってくれ、喜んでくれました。いろいろなアドバイスも与えてくれました。

アクセサリー作りから広がる機会

あるとき、子どもを預かってもらっている先生たちが私の身につけていたアクセサリーについて聞いてきたことがありました。自分で作ったものだったので、そのことを話すと、お母さん達の集まりに持ってきたら売れるんじゃないの、と持ってくることを勧められました。
 コルクボードを買ってきて、今まで作ったアクセサリーを飾り、持っていきました。残念ながら、そのときはひとつも売れませんでした。しかし、その後しばらくして先生達が自分のアクセサリーを作りたいから教えて欲しいと言ってくれました。また、そこでは土曜日を利用してパッチワークなどの習い事をするための教室を開いたりしていました。ですからビーズアクセサリーもやってみたい人がいるはずだと、一般の人も参加できるように募集してみようということになったのです。
 それまで友人相手に教えたことはありましたが、こんなことになるとは思っていなかったのでちょっとびっくりしました。ですが先生達や夫の協力もあってやってみることにしたのです。

自分らしい作品作りを目指して

毎週土曜日の午前中に2時間程度で出来るものを選んで毎回テーマを決め、教えています。だいたい8人ぐらいの人達が集まってくれます。
 ある週はネックレスかブレスレットを選んでもらい作りました。
 まずは、材料選びからです。あらかじめ自分たちで用意してきた材料を持参してきた人もいましたし、私が用意したものから選んだ人もいました。人が選ぶ色や組み合わせはとても新鮮です。誰も手にしていないものが似合うなど、こういった組み合わせも面白いなあと毎回、関心してしまいます。
 そして、準備が出来たら、みんなで一緒に作り始めます。作り方を説明したものをプリントして渡し、順番に進めていきます。
 ビーズを3つ通します。そして、その次にさらに3つずつ通します。といった具合にお手本を見せながら、みんなで作っていくのです。途中、ビーズをこぼしてしまったり、なかなか穴に糸が通らなかったりと個人差が出てきます。そうすると個人の状況に合わせて個別に教えていくのです。
 みなさん、作っているときはお互い励まし合いながら、作り終えたら、その色いいわね、とか今度その組み合わせ試してみようかしら、などほめることも忘れてはいません。みんなで行うビーズアクセサリー作りの楽しいところは、そういったこともあるのだと思います。
 アクセサリー作りは、人の好みもあるのですが自分の想像していたものと違うものになることも多いので新しい発見があります。
 私の作品を見た人がその作品の中から私だけのオリジナルの様なものを感じてくれたら嬉しいと思います。今後も多くの人と出会いながらビーズアクセサリーの中に私らしさを入れていきたいと思います。

   
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