E-CUBE 2005年03月

VOL.38 3月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




自由時間 : ワーキングホリデーやスチューデントで活躍中

<ボランティア:森山 稔章 さん | メイン | ストリート・ミュージシャン:George Kamikawa さん>

賛美歌隊:岡村 佳通 さん

岡村 佳通 さんハーモニーの中に自分がいると実感した時、空を飛んでいるように気持ちが良くなります。

昨年12月、Eden Terraceにある教会で賛美歌クリスマスコンサートが行われた。そこで美しい歌声を響かせる賛美歌隊オークランド・ユース・クワィヤーの中に、岡村佳通さんの姿があった。

Yoshimichi Okamura
岡村佳通(おかむら よしみち)

静岡県御前崎市出身。県内の旅行会社に5年間勤めるが、住みやすい国を求めて昨年8月にワーキングホリデーでNZへ。現在フルタイムで語学学校に通いながら、コーラス以外にもヨサコイ、和太鼓、ウクレレ、三味線など多方面で活動し、NZでの生活を満喫中。

 日本では旅行業界で5年間働いていました。添乗員としては日本各地はもちろん、アジアを中心に海外へも行きました。常に周りにせかされる日本での生活に窮屈さを感じ、気候がよくて、のんびり出来る住みやすい国はないんだろうかと考えていました。でもそんな国があるわけはないと半分諦めていたとき、雑誌でいろんな人たちがNZを絶賛していて、きっとNZに行けば自分の夢が見つかり、日本での将来の不安が解決されるんじゃないかという期待を抱くようになり、渡航を決意、同時に何かの役に立つだろうと思い沖縄の三味線と民謡を練習し始めました。
 もともと音感は悪い方で歌うのは嫌いでしたが、よく人から声がいいと言われたので、この音感の悪ささえ克服すれば上手く歌えるんじゃないかと思ったのです。
 以前青森の三味線資料館で、三味線の世界を開拓した歴代の津軽三味線の師匠の中には、目が不自由でも普通の人よりも音感が鋭い方がいたことを知りました。それをヒントに、僕は音に対して敏感になるよう目を閉じ、耳を澄ませて練習しました。並行して声の幅を広げるために裏声を出す練習もしました。そのおかげで音感は以前よりずっと良くなり、地声と裏声の切り替えが上手くできるようになるにつれて、歌うことが好きになっていきました。
 ワーキングホリデー制度を利用してNZへ旅立ったのは、練習を始めてから1年半後のことでした。

NZでコーラスと出会った

 NZでの生活は紫外線の強さを除けば快適そのものです。ここは話に聞いた通りのんびりしていて、今までせかされて生活してきた僕にとっては、無理をしなくても良い生活がちゃんとあったんだということに改めて新鮮な驚きを感じました。
 英語はほとんどできなかったので、NZに到着後はすぐに語学学校に通いました。
 ほかにも何か始めてみようと思ってE CUBEのクラシファイドを眺めていたとき、仲間募集の欄で音楽を一緒にやろうという内容の掲載記事が目に留まり、バンドかアカペラグループだと思ってコンタクトを取りました。アカペラだったらボイスパーカッションもできるので参加しようと思ったのです。でも返信されて来たメールの差出人は教会で、募集していたのは賛美歌隊員でした。予想外でしたが、未知の世界だったのでトライしようと思いました。
 入隊に際してはオーディションがあると聞いていたので最初はとまどいました。でもすぐに、この機会に自分を良く知ってもらうのもいいのではと思い直し、いつか役立つだろうと日本から持ってきた沖縄の三味線で島唄の一つで「安里屋(あさどや)ゆんた」という歌を歌いました。
 この歌は独特のこぶしを入れて歌うのが特徴ですが、聞きなれていないと変に感じることもあります。以前姉の前でこの歌を歌ったとき、そのこぶしが嫌いだと言われたことを思い出し、またキウイの人たちがこれを聞いても分からないだろうと思い、あえてこぶしはいれずに普通に歌いました。
 そこにいたほとんどの人にとっては初めて目にする楽器、耳にする音だったので、みんなの注目が僕に向き、とても緊張しました。それでも教会に響きわたる自分の音を聞きながら気持ちを落ち着かせて歌いました。歌い終わり指揮者が「great」と言ってくれたとき、ようやく肩の力が抜けました。そしてオークランド・ユース・クワィヤーのみんなが寄ってきて「よかった」といってくれたときには、自分も賛美歌隊の一員になったことを実感しました。

賛美歌隊の一員として練習に参加することになった

 オークランド・ユース・クワィヤーは27歳以下の若いメンバーで構成されています。そのため歌声には張りがあり、みんな生き生きしていてエネルギーに満ちあふれています。
 練習は毎週月曜日の夜、Rimueraにある教会で2時間ほど行われます。入隊前はみんなが歌っているのを傍らで聴いているだけでしたが、普段はひょうきんな仲間たちがいざ歌となると、みんな一体となって素晴らしい歌を作り上げていくことに感動しました。教会の中では歌声はひときわ神秘的に聞こえます。イマジネーションは幾重にも広がり、賛美歌の魅力を体感しました。
 また実際に参加してみると、いろんな国の人たちの歌声が一つのハーモニーになって美しい歌声がつくられていくことに気がつきました。歌に溶け込んでいき、言葉の壁や国籍の違いを越えて仲間と一体になるのです。その歌声は時には、透き通った薄いガラスのように繊細で、時には、生命が躍動していくように力強く天昇していきます。どの人が欠けてもこの素晴らしい歌声を聞くことはできないのです。 
 ときどき、歌の途中で不意に笑い出す人がいて練習が中断してしまうことがありますが、こんな無邪気な一面があるのも僕がこの賛美歌隊が好きな理由の一つです。
 パートには主に主旋律を歌うソプラノと、ハーモニーや和音を作るアルトやテナー、低音域を歌うバスがあります。僕のパートはバスですが、日本を発つ前にしてきた民謡の練習のおかげで、音感が良くなったことや、地声と裏声の切り替えが上手くできるようになったことが、賛美歌を歌う際とても役に立っています。バスパートは特に上手な人がそろっているので足を引っ張らないよう、みんなの歌声に溶け込むようにして歌うように気をつけています。そして上手く歌っている自分を想像しながら歌います。そうすれば不思議と目の前の不安が払拭されるのです。これは歌う時に大切なイマジネーションの一つだと思っています。
 また、賛美歌の歌詞の中にはよく「誕生」「エンジェル」「キリスト」「グローリアス」などのキリストを讃える言葉がでてきます。キリストがいかに尊敬されているかを実感するとともに、歌うときは常に感情を込めて、作者の曲を作ったときの気持ちをメロディーから感じ取って歌うようにしています。例えば、「グローリアス」と歌詞にあるときは荘厳な雰囲気を創り出すよう心がけています。
 初めて歌うものばかりなうえに歌詞はすべて英語なので細かい部分は歌えませんが、みんなの声に耳を傾けまねするよう心がけています。
 歌の練習は楽しいのですが、指揮者の指示や開催されるイベントの説明がなかなか理解できないなど、言葉の壁にはいつも悩まされます。仲間とのコミュニケーションも、animalやtravelなどのような簡単な単語でも通じないので四苦八苦しています。ただ、幸いにもメンバーの中に日本人の友人がいて、いつも傍らで僕を助けてくれるので本当に感謝しています。もし彼女がいなければ、すぐにギブアップしていたと思います。

クリスマスコンサートではのびのび歌おうと思った

 昨年12月にはEden Terraceの教会でクリスマスコンサートがありました。僕にとって初めての定期コンサートだったので不安もありましたが、いつもの練習と同じだと思って、のびのび歌おうと思いました。
 本番ではそれほど緊張することもなく賛美歌の荘厳さと美しさをうまく表現することができ、たくさんの拍手をもらったときには、実際にその場にいたお客さんだけでなく日本の友達や家族も僕に拍手してくれているように思えました。同時に、改めて賛美歌が人に与える感動の大きさをお客さんの温かい拍手を通して知ることができました。
 これらがさらなる賛美歌の練習の励ましになったことはいうまでもありません。
 ワーキングホリデーでNZに来てから半年が経ちました。NZ旅行業界への就職や将来のことなども含め、現在まだ模索中ですが、とりあえずはいろいろなことに挑戦して、仕事や趣味などあらゆる面で自分に役立てていきたいと思っています。
 また、コーラスの他にも和太鼓やヨサコイ、ウクレレを練習していますが、これらを地元で開催されるお祭りなどを通してNZの子供たちに伝えていきたいと思っています。

賛美歌隊:岡村 佳通 さんと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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