E-CUBE 2005年04月

VOL.39 4月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




自由時間 : ワーキングホリデーやスチューデントで活躍中

<賛美歌隊:岡村 佳通 さん | メイン | 乗馬:豊村 鮎美さん>

ストリート・ミュージシャン:George Kamikawa さん

George Kamikawa さん人を幸せな気分にさせるようなブルースを演奏したい

オークランドで最も人通りの多いQueen St。その路上でさまざまな楽器を演奏しては歌うストリート・ミュージシャンとその回りに集まる人々の姿は、この街では見慣れた光景だ。その中でも一際大きくできた人垣の向こうに、ギターとハーモニカを軽快に操ってブルースを奏でるGeorge Kamikawaさんがいた。

George Kamikawa

74年生まれ。三重県桑名市出身。97~98年ワーキングホリデーでNZに滞在中にストリート・ミュージシャンに。2004年のAustralian Country Music Busking Championshipsでチャンピオンに輝く。プライベートでは昨年7月にオーストラリア人女性と結婚したばかり。今回NZへは新婚旅行も兼ねて半年ほどの滞在予定で、今年初めに到着。パーティーなどでの演奏依頼も随時受け付けている。

 

ギターを初めて弾いたのは15才のときです。大好きなマディー・ウォーターズやロバート・ジョンソンの歌うカントリーブルースが耳から離れず、自分でもブルースを演奏してみたいと思ったのです。
ちょうど兄がよくギターを演奏していたので、兄からギターを借りて教えてもらったり、CDを聞いたりして習得しました。
  高校、大学ではバンドを組み、ビートルズやローリング・ストーンズの歌やブルースを中心に歌っていました。大学卒業後も商社で1年ほど働きながらバンド活動は続けていましたが、毎日忙しく、時間が思うように取れない中、型にはまった生き方をしている自分に疑問を持つようになりました。何か人と違った経験をしてみたかったのです。そこで、まずは海外に出て、今まで知らなかったさまざまな世界を体験してみようと思い、ワーキングホリデー制度を利用してNZへ渡航することを決めました。渡航の主な目的は海外経験と語学力を身につけることでしたが、機会があれば音楽活動もしたいと思っていたので、ギターも持っていくことにしました。私にとって初めての海外でした。

NZでストリート・ミュージシャンの楽しさを知った

 当時の私の英語力は何とか挨拶ができる程度で、最初の3ヶ月は語学学校へ通いました。一度、授業の中でギターを演奏したことがあるのですが、その帰り道のQueen Stでハーモニカを演奏する日本人男性に出会ったのです。彼の演奏する曲がブルースだったので、一緒に演奏することを提案、即席チームができました。結果、反響は想像以上で、彼とも意気投合、正式にチームとして活動することになりました。
 5ヶ月ほどして彼が日本へ戻ってからも一人で活動を続けました。週5日、午後4時間ほどの演奏で、ギターケースに投げ入れられるコインの合計金額は、日本で会社員をしていたときと同じくらいにもなりました。好きなことをして生活していくという、理想の人生を見つけたのです。
  また、路上で演奏しているとさまざまな人たちが声をかけてきてくれます。年齢も国籍も異なる人たちと会話するのが楽しくて、そして何より、私の演奏を聞いている人たちの楽しそうな表情を見るのがうれしくて、路上での演奏に魅了されていきました。彼らと片言の英語で会話を交わしているうちに、英語は自然と上達していきました。
  演奏中には、よくバーやレストランの経営者から依頼を受け、多い週で2~4回は店内のステージでも演奏するようになりました。そして、人々から評判を聞いたHeraldの記者から取材を依頼され、紙面にも取り上げられました。

オーストラリアで本格的な音楽活動を始めた

 NZでのワーキングホリデー期間終了後は日本へ帰国し、翌年オーストラリアへ渡りました。今度は本格的な音楽活動をすることが目的でした。
 NZで一緒に演奏していた日本人男性も現地で合流、メルボルンで活動を開始し、共同でCDも製作しました。生演奏とは違い、完璧な演奏が収録できるまで何度もやり直すため、CDの作製には膨大な時間を費やしました。完成したときの感想は「うれしい」というよりは「疲れた」といった感じでした。
 その後、次第に二人の間の音楽に対する考え方など、さまざまな面で違いが目立ってきたので、解散して再び一人で活動することになりました。同時に、彼の担当していたパートもカバーすべくハーモニカの練習を始めました。現在の演奏スタイルを確立したのもちょうどこの頃です。
  演奏にはアコースティックギターまたはラップスティールギター、ハーモニカ、スタンプボックスを使用します。足で叩いて音を出すスタンプボックスは、バスドラムの役割を果たします。ギターはスライドバーを使ったり、ボトルネックと呼ばれる筒状の金属を指にはめて演奏します。柔らかで伸びのある音を出せるのが特徴で、私の抱くブルースのイメージに合うため好んで使用しています。ラップスティールギターはひざの上に寝かせて演奏しますが、形や演奏スタイルが珍しく、多くの人が興味を示します。
  演奏する曲の約半分はオリジナルで、古い建物や田舎の街並みをイメージして作曲したものです。作詞は、のちに妻となる交際中のオーストラリア人女性が担当しました。作詞だけでなく精神面でも、彼女は私の生き方を良く理解し、サポートしてくれています。
 ソロ活動を始めて約1年後、全国放送のトーク番組で演奏者を募集していたので応募、無事オーディションに受かり、ショーとショーの間に演奏しました。ほとんどの人が見ているといってよいほどの人気番組で、しかも生放送、観客もゆうに300人はいたこともあってとても緊張しましたが、演奏し始めると次第に落ち着いてきて、いつも通りの演奏ができました。観客はもちろん視聴者からの評判も良く、いたるところで声をかけられるようになりました。
 他にも地元のラジオ番組にも出演し、ソロアルバムも出しました。CDの売り上げは好調で、年間平均で2000枚以上は売れています。路上演奏の際人々が投げ入れるコイン収入やバー、レストランでの出演料以外に、CD販売による収入が加わったことで、余裕のある生活が送れるようにもなりました。
 2004年にはタンムワースで開催されたAustralian Country Music Busking Championshipsに参加しました。3週間に渡るコンテストで、プロ、アマチュアを含め430組のミュージシャンが事前に登録しておいた路上で演奏し、審査員はその場所を回り項目ごとに採点していきます。そして、上位10組がステージで演奏し、最終審査が行なわれます。
  開催直後、私は参加者の一人でオーストラリアの民族楽器ディジリドゥやパーカッションを演奏するカナダ人男性と知合いました。彼とは音楽に対する考え方も一致したし、二人の演奏を合せればおもしろいのではと思い、彼とチームを組んでコンテストに挑みました。とはいえ私と彼は知合ったばかりで、お互いにそれぞれの音が調和するポイントを探りながらの演奏でした。そして、どの点が評価されたのかは未だによくわからないのですが、私たちは優勝したのです。優勝などかけらほども考えていなかったので、しばらくは夢か現実かわからないほどびっくりしました。
 その後は8ヶ月ほど日本で活動しましたが、日本ではストリート・ミュージシャンの活動がそれほど盛んではないことに加え、日本人はNZやオーストラリアの人ほどブルースに興味を持っていないことを実感するなど、ある種のやりにくさを感じました。また、コンテスト以来一緒に活動していたカナダ人男性とも、1年弱で解散することにしました。
  そして日本滞在中、先にも話したオーストラリア人女性と結婚し、新婚旅行も兼ねてNZに行くことにしました。

2度目のNZでもさまざまな機会に恵まれた

 今回の滞在でも、基本的に週5日、午後はQueen Stで演奏しています。NZ到着1ヶ月後には、Down Town Shopping Centre前で演奏中に大手保険会社の方から、ロトルアで行われる会社主催のパーティーでの演奏を依頼されました。
  また、アオテアスクエアのフリーマーケット開催時に中央のステージで演奏したときには、かなりの反響が得られ、そこでの定期的な演奏依頼を受けたほか、そこに居合わせたバーの経営者からタウポ、コロマンデルの店舗での演奏を依頼されるなど、演奏と旅行をうまく両立できそうです。
 路上での演奏はコンサートやバーなどでの演奏とは違い、小さな子供からお年寄りまで誰でも聞くことができます。ブルースをよく知らなかった人にも、ブルースについて知る機会を持ってもらうことができます。それが私が路上演奏を中心に活動している、最も大きな理由です。
また、NZには世界各国から多くの旅行客が訪れますが、彼らと出会い、気軽に会話を交わせることも魅力の一つです。そして、彼らが私の音楽を聴くことで幸せな気分になれるような、そんなブルースを演奏し続けたいと思っています。
  将来は妻の祖国でもあるオーストラリアを拠点に活動し、同じように音楽を志す仲間と一緒に、ミュージック・フェスティバルなども定期的に主催できるようになりたいです。
  数ヶ月後にはNZを立ちますが、午後はQueen Stのどこかで演奏していますので、私を見かけたときは気軽に声をかけてください。

 

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