E-CUBE 2005年02月

VOL.37 2月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




Career up in NZ : 専門職に就いてキャリアアップ中

<スクーバダイビングインストラクター:小野寺 由季絵 さん | メイン | シェフ:金 浩二 さん>

NPO職員:柴田 あゆみ さん

柴田 あゆみ さんかしこい政府機関の利用法

ワーキングホリデーでこの国に来て以来、この国に魅せられ、住んでしまったあゆみさん。今までいくつかの仕事に携わっていたが、英語上達のために日本人コミュニティから離れ、現在はオークランドのテアタツにある NZ Ethnic Social Services Trustで日本人に限らず、困っている人のためのサポートをしている。

柴田 あゆみさん
Ayumi Shibata
NZ Ethnic Social Services Trust
Administrator

仙台出身。1996年ワーキングホリデーでNZに来る。1年経つ頃、石鹸工場でジョブオファーをもらい、ワークビザを取得。そして、1998年永住権を得る。小学校の図書館やセラミックハンドペインターなどの職歴を重ね、2004年7月よりNZ Ethnic Social Services Trustで政府機関と協力体制を取りながらいろいろなサポートを行う。日本人の要望が多くあれば、日本人のためのコース開催なども検討している。

NZ Ethnic Social Services Trust / Covil Community Centre, 56a Covil Avenue, Te Atatu South, Auckland 09-834-6668

NZに来るキッカケ

 私は大手企業で一般事務をしていました。数年働くと仕事の流れが理解できてしまったため、給料や待遇が安定していましたが仕事はつまらないと感じるようになりました。何かキッカケがあれば辞めたいと思い、そのキッカケを探すようになっていきました。
 あるとき、親友がワーキングホリデーでニュージーランドに行くことを知りました。1年間海外に滞在できる制度。すぐに私はこれだと思いました。それ以来、昼間は会社で仕事をこなし、夜はカラオケボックスで深夜までアルバイト。ほとんど週末も休み無く寝る間も惜しんで働き、渡航資金を貯めました。そして、1996年ニュージーランドに来ることになったのです。

ワーキングホリデーの1年

 私はニュージーランドに来るまで長期で海外生活をすることなどありませんでしたからすでにこの国に来ていた友人のアドバイスを参考にしました。英語上達のためには滞在中、日本人とはつき合ってはダメ、働くのも日本人がいない所などなど。彼女が経験してきて感じたことを教えてくれたのでした。そのため、一緒に住むフラットメイトも日本人がいないところを探し、生活をすることにしました。もちろん、それまで私は英語をしゃべる機会などありませんでした。むしろ、学生時代赤点を取った唯一の科目というくらい英語は嫌いな科目でした。当時、担当の先生が嫌な感じの人で周りからも同様に嫌われていたため、勉強する気にもなれずに、日本にいれば英語を使うことなどないだろうとまったく手につけずにいたくらいだったのです。ですが、もともと楽観的な性格から、海外に出てしまえば何とかなるだろう、滞在すればしゃべれるようになると安易に考え、この国に来ていました。
 また、働かないでも生活できる分の資金は貯めて来ていました。ですが、生活を始めると、ここでの暮らしが合う気がして長くいたいと思うようになっていったのです。そのため、仕事を探して永住権を申請できればと考えるように気持ちが変化していきました。
 思い立ったらすぐ行動です。新聞の求人欄を見て電話をかけまくりました。そして、オークランドの南にある石鹸工場で面接をすることになりました。マネージャーと会って、立ち仕事が多いけど大丈夫?とか、重いものを持てる?などの質問に答えて次の日から働くことになりました。その工場はニュージーランドのお土産として販売しているキウィフルーツの石鹸や泥石鹸を製造。また、ホテルの客室に置くための石鹸なども作っていました。私は毎日、7時半から4時までそこで石鹸作りをしました。出来上がった石鹸のバーをプレスしたり、カットやピッキング、パッキング、ラッピングする作業をローテーションしながらこなしていました。
 そして、ワーキングホリデーのビザが切れる頃です。工場に日本から大量の発注が舞い込んできたのです。工場で石鹸に貼る日本語のラベルを扱うことから日本語が理解できる経験ある人材が必要になりました。そのことからジョブオファーを出してもらえることになり、スムーズにワークビザを取得することできたのです。

Work & Income NZの利用のしかた

 それから石鹸工場で働いている間に永住権を申請して98年に取得することができました。そして、2000年、弟が結婚するということから日本に一時帰国することにしました。石鹸工場での仕事は楽しかったのですが、それを期に新しいことを始めてみようと考え、仕事を辞めることにしたのです。
 ですからニュージーランドに戻るとすぐに仕事探しをしなければなりませんでした。新聞の求人欄を見て電話をかけたり、Work and Income New Zealandを利用しました。
 Work and Income New Zealandは、仕事検索サポート、所得補助および仕事におけるサポートを必要とする人のために情報を提供してくれる政府機関です。日本でいうところの職安と税務署のような役割をしているのです。国内各所にオフィスがあり、職に関する様々な相談を受け付けてくれます。利用は登録制となっていて、就労ビザ(ワーキングホリデービザを含む)を所持していれば、申請用紙に必要事項を記入し、登録番号が貰えます。オフィス内にある掲示板の求人広告も閲覧できます。私はそこに通い、相談しながら仕事探しをしました。今まで紹介してもらった仕事は小学校の図書館でのパートタイムジョブ。バーコードでコンピューターに本のデータを入力して子ども達に本を貸し出したり、本の整理をしたり、入荷した本のデータをコンピュータに入力することが仕事。また、皿などの器に絵を描いたり、新しいデザインを作ることが主な仕事だったセラミックハンドペインターなどもしました。器を焼いたり、サンドペーパーをかけたりする工房の2階にスタジオがあって毎朝トレイに絵付けする前の皿などが準備されていて期限内に仕上げるといった具合に1日の仕事の流れがありました。
 今まで仕事を探すときは新聞を購入して求人募集欄を見て電話をかけるといった方法をとっていましたが、その中には、電話をかけるともう決まってしまったという応対も多くありました。そして、1ヶ月間それを繰り返していくうちにあることに気がつきました。電話ではもう決まってしまったという応対をしていた会社の求人募集が新聞にその後も掲載されていたのです。電話で自分がネイティブスピーカーでないから断られたのではと思いました。面接まで行くことができれば自分をアピールできるのに、面接までいけない苛立ちで悔しい気持ちでいっぱいになりました。Work and Income New Zealandの担当者に相談してあとから聞いてわかったことですが、ここの法律では人種や性別で求人募集に制約をしてはいけないのですが現実にはそういったケースはあるそうです。CVを送っても名前だけ見て判断して封すら開けてもらうことができずに捨てられてしまうこともあるそうです。中国人や韓国人に見られる英語名を持つということはそういったことを少なくする効果があるようで、担当者から英語名をつけてみたらというアドバイスをもらったくらいです。

困っている人をサポートする機関

 現在の仕事を得たのもWork and Income New Zealandに紹介してもらったのがキッカケでした。NZ Ethnic Social Services Trustとは、NPO機関で、New Zealand Immigration Serviceや、Citizens Advice Bureau、Ministry of Educationなどの政府機関と協力体制を取りながらいろいろなサポートを行っています。
 例えば、難民の方を対象にした英語コースです。現在、すでにAUTなどで同様のコースがあるのですが、実際には難民の方にとって英語を勉強するのが難しい状況にあるのです。というのも先生は英語を英語でしか教えることができない人だからです。難民の方の多くは、日本人と違って英語に対する知識が全くありません。学校ですでに何年か勉強していて、読むことはできるとか、書けるといったレベルにまでなっていない人がほとんどなのです。ですから、私たちは彼らのために彼らの言語で英語を勉強できるコースを開催しているのです。
 運転免許取得のコースでは、私たちはLTSAに申請しているので10人以上集まれば試験官を呼ぶことができ、この場でグループテストを行うことができるのです。
 ペアレンティングコースでは、この国の法律について教えています。例えば、親が子どものしつけでスーパーで子どもをたたいてしまったとしましょう。そして、それを見ていた人が警察に通報して親が捕まってしまうといったこと。また、夫婦の口げんかを聞いた近所の人が警察に通報して、問題になってしまうといった日常の生活で巻き込まれる恐れがあることを勉強するのです。その他にもタックスセミナー、移民に関する相談など困っている人のために無料で何でも相談にのっています。
 相談される方の中には、今まで私たちの存在をまったく知らないでとても悩み苦しんでいた方も多いのです。彼らは内容によっては人に知られることを恐れ、誰に相談することもできずにいたのです。夫婦間の問題や金銭的な問題など人に知られたくないことも多いからです。ですが、私たちは守秘義務がありますから、どんな人の相談も受けますし、場合によっては人と人の間に入って問題解決のために働きます。

自分の権利を理解して主張することが大事

 私はこの仕事に就くまで難民の存在を目の当たりにしたことなどありませんでした。難民とは、広い意味では、戦争、天災などのため困難に陥った人々、あるいは戦禍、政治的混乱や迫害を避けて故国や居住地外に出た人のことをいいます。警察も、周りの人も、だれも自分を助けてくれないという状況から難民は、そんな怖れを抱いて、本国に帰れないでいる人たちなのです。そんな彼らは世界各地に住む場所を探し、このニュージーランドにも来ているのです。彼らは自国に帰れないのですから必死です。この国で自分の権利を理解しながら生きようとしているのです。私はそうした人達と接しているうちに世界の多くの国に自由に行き来できるパスポートを持っている日本人はなんて幸せなのだろうと思うようになりました。難民の彼らは家族をこの国に呼ぶ場合、必要な書類も多く、手続きにかかる時間も膨大で確実に呼べる保証などないのです。
 また、Work and Income New Zealandで所得補助を受ける場合でも、「もしかしたら受けられるのでは?」というあいまいな状況では認められません。ですが、自分の権利を理解して主張できる人に対して担当者はNOということはできなく、その主張を認めざるを得ないのです。海外に住むということはそこでの自分の権利や義務についても勉強していかなければいけません。それを知らないと思いもしないトラブルに巻き込まれる危険性も持っているのです。日本人が困っているという状況があれば、それを国に知らせないことには生活がよくなっていきません。私たちは困っている人の相談に乗りながら、そういった状況を国に知らせていく役割も担っていると思います。ですから、みなさんも困っていることがあったらそれについて真剣に考え、自分の権利を主張してください。

NPO職員:柴田 あゆみ さんと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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