VOL.68 9月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




時代を飾るキウィ :イーキューブのブレーンやアドバイザーとなるNZのセレブやキーパーソン

<バレリーナ Katie Hurst-Saxton | メイン | TV/ラジオ プレゼンター Mary Lambie>

バレリーナ Katie Hurst-Saxton

感性豊かにのびのびと踊る。
それがロイヤルNZバレエ団の スタイルです。

「自然の宝庫」「羊」「オールブラックス」-ニュージーランドと聞いて一般の日本人が思い浮かべるイメージは、だいたいこのようなものだろう。 確かに自然美や盛んなスポーツ活動はこの国の大きな魅力だが、ニュージーランドに滞在すると、文化や芸術面も優れているということがわかるはず。特に首都ウェリントンは映画と演劇産業の中心地であり、オペラ、バレエ、交響楽団など、質の高いパフォーミングアーツを楽しむことができる。ニュージーランドが誇る舞台芸術のひとつが、ウェリントンに本拠地を置くロイヤル・ニュージーランド・バレエ団。キウィのみならず、オーストラリア、アメリカ、南アフリカ、日本など世界各国から選りすぐった30人のバレエ・ダンサーを抱え、国際的にも評価の高い国立バレエ・カンパニーだ。『ドン・キホーテ』『眠れる森の美女』といった古典作品から20世紀以降に発達した現代バレエまで、演目の範囲は幅広く、年に3回行われるニュージーランド各地を回る全国公演ツアーでも、毎回数多くの観客を魅了している。そんなバレエ団で活躍する若きプリンシパル︵主役級のバレエ・ダンサー︶がケイティ・ハースト=サックストン。今年5月~7月に上演された『白鳥の湖』で主役のオデット/オディール役に抜擢された注目株だ。NZバレエ界の明日を担うケイティに、お話を伺った。

 

Katie Hurst-Saxton
ケイティ・ハースト=サックストン
バレリーナ / Ballerina


1985 年クライストチャーチ生まれ。5 歳からバレエを始め、12 歳でインターナショナル・バレエ・アカデ ミーに入学。シャーリーン・ケネディとラッセル・ケ ルーに師事する。2002 年にロイヤル・ニュージーラン ド・バレエ団に入団。その翌年には早くも公演でソロ・ パートを任され、『マダム・バタフライ』でケイト役、『ド ラキュラ』でルーシー・ウェステンラ役など、重要な役 柄を多数務めている。ショッピングが大好きで、オーク ランドではハイストリートがお気に入り。

■ロイヤル・ニュージーランド・バレエ団の次回公演

『シンデレラ』

8月31日~9月8日 ウェリントン
9月11日・12日 インバカーギル
9月15日・16日 ダニーデン
9月19日~22日 クライストチャーチ
9月25日・26日 パーマストン・ノース
9月29日・30日 ヘイスティングス
10月4日・5日 ハミルトン
10月10日~14日 オークランド

公式サイト

 

 

幼い頃からバレエに夢中
私は物心がついた頃から踊ることが大 好きでした。両親にレコードショップに連れ て行かれると、店内に流れている音楽に合わ せてその場で踊り出してしまったくらい、生 まれながらにダンスに夢中だったんです。そ れに母も趣味でバレエを習っていたので、自 宅にバレエの写真集が何冊かあったんです ね。それを見て、幼いながらに「バレエをやり たい!」と強く思ったことを覚えています。 それで母にお願いして、5歳から地元のバレ エスクールでレッスンを受けるようになり ました。 全日制のバレエ専門学校インターナショ ナル・バレエ・アカデミーに入学したのは 12 歳の時です。通っていたバレエスクールにア カデミーの講師が来て、レッスン中の私を見 て声をかけてくれたんです。NZバレエ界の トップダンサーであるシャーリーン・ケネ ディとラッセル・ケルーが主宰するバレエ 学校でしたから、もう大感激でしたね。それ 以降、日中はひたすらバレエの稽古に打ち込 み、夜に通信教育で通常の学校の勉強をする というハードスケジュールが始まりました。 でもその頃の私は、すでに将来の目標をプロ のバレリーナと定めていましたので、厳しい 練習も苦になりませんでした。 今思い返しても、シャーリーンとラッセ ルという、タイプの違う2人の師匠を持てた ことは幸せでしたね。シャーリーンからは技 術的なことを、ラッセルからはアーティスト としての感性や表現方法などを教えてもら いましたが、この両面はバレエ・ダンサーに とって不可欠な要素で、今も私の踊りの核に なっています。 アカデミーに入って5年後の2002年、 現在所属しているロイヤル・ニュージーラン ド・バレエ団のアーティスティック・ディレ クター、ゲイリー・ハリスが来校しました。私 たち生徒は知らされていなかったのですが、 当時、ゲイリーは新人のダンサーを探してい て、アカデミーに視察に来たそうなのです。 そして私ともう1人、アカデミーの生徒が選 ばれ、バレエ団への入団が決まりました。子 供の頃からの念願が叶ってとても嬉しかっ たし、こんな幸運があるなんて、と信じられ ない気持ちでしたね。アカデミーの最終年度 11 は終えていませんでしたが、必要な単位は取 得していたので、すぐに卒業し、団員に選出 された 10 日後にはウェリントンへ引っ越し ていました。急に環境がガラリと変わったの で、しばらくの間はまだ夢を見ているような 心持ちでした。


のびのび踊るのが NZのバレエ・スタイル
入団してすぐ、ウェリントンで初舞台を踏 みました。それまでもアカデミーの公演や地 元クライストチャーチの劇場などで舞台経 験がありましたが、ニュージーランドを代表 する国立バレエ団のステージですから、規模 が比較になりません。幕が開く前は緊張のあ まり舞台袖で震えるほどでしたが、精一杯、 踊った後は何ともいえない達成感に包まれ ました。 私にとってバレエの魅力は、まさにこの 「舞台」にあると感じています。観客の前で自 分の持っている力を最大限に披露し、その反 応をダイレクトに受けることができる。そこ がバレエの醍醐味なんです。セットや衣装、 照明など、ステージを彩る要素は多々あり ますが、バレエの公演ではやはりダンサーの 技量が最もものをいいます。特にソロのパー トでは観客の目が一点に自分に注がれるで しょう。そこで人々を唸らせるパフォーマン スを見せなくてはいけません。そのためには 日々の積み重ねが大事。非常にやりがいがあ りますよね。 また、歌詞や台詞を一切伴わないバレエに は言葉の制約がなく、国際的であることもお もしろい点だと思います。私たちのバレエ団 にもさまざまな国籍のダンサーが在籍して いますし、海外からのゲストダンサーを迎え ることもあります。それぞれのバレエ・スタ イルに特徴があるので、興味深いですよ。バ レエ団には日本人ダンサーもいますが、彼ら からよく聞くのは、「ニュージーランドのバ レエは日本のものと比べてのびのびしてい る」ということ。大らかな国柄がバレエにも 表れているのでしょうか。 バレエ団では海外公演もしばしばあり、 これまでに英国やアメリカのサンフランシ スコ、オーストラリア各地などに出かけまし 12 た。今年の 11 月には中国で3週間の舞台を控 えています。私は、中国はもとより、アジア諸 国に行ったことがないので、わくわくしてい ます。 でも海外で踊ることは、国内での公演と感 覚的にそう変わりがないですね。どこに行っ てもダンサーはベストを尽くしますし、観客 の方々も国内同様、盛大な拍手で応えてくれ ます。先にも述べましたが、バレエには言語 の壁がないことが大きいのかもしれません。 バレエ団には年間3つのシーズンがあり、 公演で旅が多いので、体調の管理には注意 を払っています。この国は南北に長いため、 各都市で気候が異なりますし、ステージの状 態も違います。例えばオークランドのアオテ ア・センターにあるザ・エッジは、サイズも 大きく、雰囲気もよく、ダンサーのモチベー ションが上がる劇場なのですが、床がとって も固いんです。ですから怪我をしやすいこと が難点。私たちはオークランド公演の際は、 足を痛めないよう、あまり激しすぎるダンス は避けるようにしています。 そのほか、ツアー中は無理をしすぎない こと、マッサージを入念にして疲れを取るこ と、ストレッチをしっかりすること、肉を食 べて力をつけることなどを心がけています。

目標はフレディ・マーキュリー
今年の第2シーズンでは、「白鳥の湖」の 主役オデット/オディール役を演じました。 バレエ団では配役はアーティスティック・ ディレクターであるゲイリーの担当で、特に オーディションのようなものはないんです。 ゲイリーはダンサー一人ひとりの特質を把 握していますし、演目についても熟知してい ますから、どのダンサーがどの役に適してい るかを正確に判断できます。そのゲイリーに 主役に選んでもらい、光栄でしたが、同時に 恐怖でもありました。それ以前にもプリンシ パルを務めたことがありますが、「白鳥の湖」 は誰もが知っている古典中の古典ですから その主役ともなれば大役です。公演の前はい つも6週間のリハーサル期間を設けますが、 「白鳥の湖」前の練習はいつもに増して厳し く、皆、毎日朝の9時半から夕方5時半まで、 くたくたになるまで稽古を重ねました。私は 毎晩、寝る前にベッドの中で泣きそうになる くらいプレッシャーを感じましたが、無事に 踊りきることができ、反響もよかったので安 心しましたね。いい経験となったので、これ からもドンドン大役に挑んでいきたいです。 次のシーズンは「シンデレラ」を予定して います。この作品はクラシックをベースにし ていますが、モダンな振り付けがされている ので、「白鳥の湖」とは全くタイプが違います ね。私はどちらかというとクラシックのほう が好きなのですが、フリースタイルの現代バ レエもおもしろいので、楽しんで踊りたいと 考えています。 今後は自分のスタイルを確立して、もっと もっと上達し、最高レベルのバレリーナにな りたいですね。私は父の影響からクイーンと デヴィッド・ボウイのファンなのですが、特 にクイーンのフレディ・マーキュリーからは かなりインスピレーションを得ています。ク ラシックなバレエとロックは一見、相容れな いように見えますが、どちらもパフォーミン グアーツという共通点があるんですよ。余暇 にしばしばクイーンのDVDを鑑賞してい るのですが、彼が観客を自分の世界に引き込 み、会場全体を魅了する様は、バレリーナの私 にとっても参考になります。彼のような魅惑 的なパフォーマンスができるバレリーナにな りたい--それを当面の目標に、踊り続けた いと思います。

バレリーナ Katie Hurst-Saxtonと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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