Vol.69 Career up in NZ ニュージーランドのトップレストランsotoシェフ |
3年前のオープン以来、NZの日本料理界に新風を吹き込み続けるsoto。今や、国内外の有名人たちが必ず足を運ぶ日本食レストランと言えばsotoというほどに。そして今年、ニュージーランドを代表する料理雑誌『Cuisine』のCuisine Restaurant of the Year 2007のエスニック部門で最優秀賞をsotoが手にしたことで、名実共に不動の地位を築き上げた。今回は、そんなsotoのGeneral Manager & Executive Chefとしてsotoの立ち上げから活躍する徳山真人さんにインタビューをお願いした。彼の素顔や生き方は、輝く自分を発見したい人にヒントを必ず与えるだろう。
包丁と共に人生の旅へ その頃、まだ落ち着く気になれず、もうちょっと海外をぶらぶらしたいなと思っていて、ワーホリでニュージーランドに来ることにしたんです。生活費が安くて、波乗りができるのが気に入って。7年前のことです。ニュージーランドに来てから、紹介して貰ったレストランのオーナーと出会った日に飲んだくれて、その翌週からそこで仕事をすることになって、ほぼ一年間お世話になりましたね。その後、ロンドンにいる従姉妹が飲食店経営をしようとしていたので、イギリスに飛んで。調査がてら日本料理店で働いていたんですが、たまたま日本食レストランUBON by Nobuでもバイトすることになって。Nobuはその当時から、世界のNobuでしたね。その後、ワークで働く話も貰ったんですが、考えた末、日本に一旦帰ることにしました。
自分が一番輝ける瞬間 長年、自分で書き溜めてきた資料を見せながら、キウイ・オーナーのマークに自分がやりたいことを話して、彼と一緒に具体的にアイデアを固めていって。それで誕生したのが、今のsotoのスタイルなんです。これまで日本料理屋で仕事をしてきてないので、俺が日本料理をうたうのは失礼だと思うんですね。ただ、俺は日本で育ってきた日本人で、日本を愛して誇りに思っている根っからの日本人なんです。だから他の国の料理を作っても結局は和風だと思うんですよ。そういう俺の母国の『和』をベースにしながら、ニュージーランドを活かして、旬、シンプル、クオリティ、美しさ、驚きや楽しさ、スピードなどを大切にして創作して実現したのがsotoの料理なんです。sotoには伝統がないのですが、その代わり自由があります。そして、常にその時代に応じて進歩していきたいという意味がコンセプトに込められているんです。
役所からレストランの認可が下りてから、レストランのオープンまで3日間。自分がイメージしているものをその間にキッチンのスタッフに伝える訳ですから、本当にハードな3日間でしたね。でも経験者が集まっていたので飲み込みが早くて、彼らには本当に助けられましたよ。そんな風にsotoは3年前にスタートしたんです。オープンしたのは年末だったので客の入りが良かったのですが、年が明けてから一年間は安定しなくて、ちょっと辛い時期でしたね。ただ、マークは常に店の経営に関わって、設備投資や販促費の枠をいつも持っていて。そして広告を打ち続けた効果が、一年が経った頃から少しずつ現われて、色んな雑誌でsotoが取り上げられるようになってきたんです。それに伴ってリピーター客も増えて、それからは波に乗って行きましたね。美味しくないと料理店をやる意味がないので、味は当然ですが、このsotoのスタイルが受けていると思うんです。テイストは、俺が美味しいと思える範囲内でキウイ客を意識して味付けしています。それと柚子や紫蘇(しそ)とか、薬味や香辛料といった『日本の香り』を意識して大事にしています。お客様が付いて来てくれているということは、ローカルの人もその良さが分かるのだと理解しています。ただ、理想を追い求めれば求めるほど、コストや調理時間との戦いが常に付きまとって。味の面では、ありとあらゆる卸業者と交渉して、『理想』に近づけたり。そうしていく中で、自己満足ではなくて、お客様に最高のサービスをするために、妥協点を見極める目が時に必要なことも学びましたね。最終的には、お客様に喜んでいただくのが、俺の喜びだから、そこに情熱を注ぎたいし、自分が動くんだから時間なんて関係ないんですよ。そしてそれが、自分が一番輝ける瞬間なんです。
必然に奇跡が起こせるレストラン 今年7月頃、『Cuisine』の審査の関係者から、『あなたのレストランが最終審査に選ばれているので、予約を取って後日伺います』って連絡が入って、 sotoが最終審査に入っていることを知りました。ただ、誰がいつ審査のために食べに来るかは、レストラン側は分からないんですね。だから、俺も審査員たちが来たのを後で知ったんです。刺身、天ぷら、タタキなどを食べて行って。サービス、料理、ワインリスト、雰囲気、知識が審査されるんですが、その日は特に店が混んでいて、彼らに満足行くサービスができてなかったことを悔やみましたよ。後日、審査の評価を電話でもらった時も酷評で。落選したと思い込んで落胆していたら、受賞していたんです。そら、本当に嬉しかったですよ。 俺が行き着きたい所は、『必然に奇跡が起こせるレストラン』。お客様がこういう物が食べたいと思う時に、そのワンランク上の料理が出せて、こういう飲み物が飲みたいと思った瞬間にウエイトレスが来て、『こういう物はいかがですか?』と言ってくれるとか。そういう要素が常にあれば、それはもう感動でしょうし、奇跡だと思うんです。でも、それをやるには確固たる知識が必要だと思うんですね。俺はまだまだ食材にしても遊んで冒険している段階で、食材がキラキラって輝く瞬間が何となく分かり始めたのも最近で。ほんとうに土俵にようやく上がった所なんです。ただ、「常に『死』を意識しろ」ってUBON by Nobuの当時のヘッドシェフに言われたこの言葉が、自分の人生の指標かな。どうせ一度の人生、やっぱりカッコ良く生きたいじゃないですか。 調理師・シェフになるための留学をしたい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクション、イースクエアまでお問い合わせ下さい。 |